混じり合う夢 前編
ここは何処だ?
暗くてよく見えない。
もしかして俺、死んじゃったのかな……。
「ヨウタ……!?」
そう考えていると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
俺はすぐに後ろを向くと赤き中型のドラゴンはそこに居た。
「グレン……?」
「ヨウタ!」
グレンは俺の事を呼びながら近づいてくる。
そして、グレンは俺の目の前へと来た。
「えっ、グレン!? 何で実体があるんだ!?」
俺はグレンの体をよく見ながら驚きを隠せずに居た。
何故ならグレンの体が実体化しているのだ。
実体化しているという事は地球のデータを食べたのか?
しかし、それなら暴走しているはずだが……。
「ヨウタ、落ち着け。多分、これは夢だ」
「夢?」
「あれを見てみろ」
グレンが指差しながらそう言った。
俺はグレンが指差した方向を見る。
すると、そこには地球に似た星があった。
「あの星は……?」
「あの星の名前はメディア。俺たちが住んでいた星だ」
「あれがグレンたちの星……綺麗だな……」
俺はそう呟きながらグレンたちの星を眺めていた。
「だけど、何で俺の夢なのにグレンの意識がちゃんとあるんだ?」
俺はグレンの方を向きながらそう尋ねる。
「分からない。俺も寝ていたはずなんだが……」
「じゃあ、これはグレンの夢なのか?」
「それも分からない。これも融合の影響なのかそれとも……」
俺の質問を聞いた後、グレンは自分の考察を語りだす。
グレンの言う通り、融合の影響なのか……?
その影響で俺たちの夢が混じり合ったとか……?
それともどちらかの夢なのか……?
にしては俺もグレンも意識がちゃんとしている。
謎が深まるばかりだ……。
「ん……? ヨウタ、星が……!?」
「えっ?」
グレンの驚いた声を聞き、俺はすぐに星の方を見る。
すると、グレンたちの星が段々と俺たちの方に近づいてきていた。
「何だ!? うわぁあああぁ!?」
俺は叫び声を上げながらグレンたちの星に呑み込まれていく。
グレンたちの星に呑み込まれた瞬間、いきなり光が強くなったので俺は光を遮るために手で目元を覆う。
段々と光が眩しくなくなっていくと俺は手をどけて辺りを見回す。
すると、そこには大自然の景色が辺り一帯に広がっていた。
「凄い……」
俺は空の上から大自然の景色を見ながらそう口にしていた。
山は地球上の山より高く、マグマも流れているがそこに住んでいるモンスターたちはそんな事を気にせずに暮らしている。
海は果てしなく続いており、その上を飛ぶモンスターが居る。
森や林は豊かな実りをつけており、それを食べに来るモンスターたちが居る。
川や湖には澄んでいて、泳いでいるモンスターも気持ちよさそうにしている。
草原には様々なモンスターが居て、あるモンスターは違う種族のモンスターと戦っている。けれど、それは縄張り争いみたいなものだと思う。
凄いのは自然だけでは無かった。
ファンタジー世界に出てくるような大きな都市があり、そこではまるで俺たち人間のように働いているモンスターたちがいっぱい居た。
商売をしているモンスターや機械を組み立てて発明をしているモンスター。
様々なモンスターたちのお陰で都市全体が活気に溢れていた。
「懐かしい……」
俺が景色を見ていると後ろに居るグレンがそう呟いた。
そう呟いた後、グレンは俺の隣へと来る。
「俺たちはこうして様々な事をしながら暮らしていた。あの日が来るまでは……」
「あの日?」
俺がグレンと話していると急に辺りが暗くなる。
俺は何事かと思い、すぐに空を見る。
すると、空には星全体を覆うような大きさの宇宙船があった。
「あれは……?」
「侵略者の大型母艦だ……」
グレンは大型母艦の方を見ずに俺の質問に答える。
その声はさっきまで自分の故郷を懐かしむような声ではなく怒りに満ちた声になっていたのは言うまでもない。
「あれがあいつらの……」
「あいつらが来たせいで俺たちの日常は壊された……!」
グレンがそう言った瞬間、大型母艦から侵略者ロボットが飛び出す。
侵略者ロボットが数百……いや、数千体がグレンたちの星に降り立った。
そして、グレンたちの星のモンスターを躊躇なく殺していく。
その光景を俺は見てられなかった。
「あいつらは俺の仲間たちを次々と殺していった……。だが、それだけじゃない……。あいつらは殺した俺の仲間たちを改造して自分の配下にした……!」
グレンがそう語っていく毎に侵略ロボットがモンスターたちを次々と殺していく。
そして、殺したモンスターたちを次々と大型母艦へと運んでいく。
グレンの言う事が本当ならあのモンスターたちは改造されて、この星で過ごしてきた仲間を殺していく。
そう考えただけでも嫌な気持ちになっていった。
「俺たちは自分たちの星を守るために戦った。その戦いで何百……何千体という仲間が死んでいった……」
語っていく毎にグレンの仲間たちが星を守るために侵略者と戦い続ける。
けれど、あんなに綺麗だった大自然も破壊され、大きな都市も壊滅していった。
そして、グレンたちの星は戦場と化した。
「ここから立ち去れぇぇぇ!」
すると、聞き覚えがある声が聞こえてくる。
俺はすぐに聞き覚えのある声の方を見る。
そして、そこに居たのは……。
「グレン……!」
そう。隣に居るはずのグレンが戦場で戦っていた。
その光景に俺は驚いていたが隣に居たグレンは黙って自分の姿を見ていた。
「……まだ……こんなに居るのか……この侵略者共……」
もう一人のグレンが息を荒れながら愚痴を吐く。
すでにもう一人のグレンは体力の限界を迎えているのは見ていて分かった。
(あれ……この光景……何処かで見たような……)
俺がそう考えながらもう一人のグレンの姿を見ていた。
すると……。
「だが倒れるわけにはいかない! この星と仲間たちを守るために!」
翼を広げ、傷ついた体を無理矢理動かし飛ぶもう一人のグレン。
そして、口から炎を吐き、敵を一掃していく。
敵は見る見るうちに壊れていった。
俺と融合している時より炎の威力が桁違いなのは見ていて分かった。
敵を全部、殲滅した後、もう一人のグレンは少し体を休めるために地面へと降りた。
もう一人のグレンが体を休めようとしたその時、空から奇妙な音が聞こえてきた。
すぐさまもう一人のグレンは奇妙な音がした空を見る。
それと同時に俺も奇妙な音がした空の方を見る。
すると、空から敵の壊れた大型母艦がこの星に突っ込もうとしていた。
「母艦が……!?」
「まずいッ!」
俺がそう言った後、もう一人のグレンが翼を広げて無理矢理、敵の大型母艦へと飛んでいく。
もう一人のグレンは敵の大型母艦を破壊するつもりのようだ。
だが、遅かった。
敵の大型母艦はすでにこの星に衝突してしまった。
衝突した地点から大爆発が起こり、爆風が吹き荒れた。
それと同時に敵の大型母艦から特殊な電磁波が発せられる。
爆風が敵味方関係なしにのみこんでいき、のみこまれた者は見る見るうちに体が粒子になっていき消えていった。
「あれは……!?」
「あの特殊な電磁波のせいで俺たちはデータの体になったんだ……」
俺が驚いていると横に居るグレンがそう語っていく。
それと同時に爆風で吹き飛ばれていたもう一人のグレンも特殊な電波を浴び、体が粒子へとなっていく。
「……みんな、ごめん……」
体が粒子になっていく中でもう一人のグレンは静かな声でそう言って消えていった。
「これが俺たちの星の最後だ……」
ずっと隣で黙り込んでいたグレンが俺にそう言った。
次第に星の崩壊は進み、その日、宇宙からグレンたちの星が消えていった。
星が消える直前、無数の光が星から飛び出していった。
「あの光が俺たちだ。そして、俺たちはバラバラになり……」
「グレンと仲間たちは俺たちの星に落ちてきた……」
グレンを言おうとしていた事を俺が先に言った。
その無数の光が地球の空から見て流星群のように見えたんだ。
「これが俺たちの出来事だ……」




