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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第五章 それぞれの思い
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謎の人物

「何が起きたの……?」

「分かりません……」


 ミスズとユウセイは今の状況を理解できずに居た。

 自分たちが謎の人物に助けられた事ですら理解出来なかった。


『セイバー・ライガーってもしかして……』

『ヴァイス殿……』


 エメラとアルジャの方は冷静に先ほどのスマホの電子音声の言葉で連想していた。

 どうやらエメラたちも俺と同じ答えに行きついたらしい。


『ヴァイス……お前なのか……?』

『……』


 俺が恐る恐る尋ねてみるが謎の人物は何も答えなかった。

 これは何を聞いても答えそうにないな……。

 俺がそう考えているとヨウタが息を吸い込みながら炎を吐く準備をしていた。


『ヨウタ……! やめ——』

「遅い」


 謎の人物は掴んでいたヨウタの手を自分の方へ引っ張る。

 そして、掴んでいない手を平手にしてヨウタの顎を掌底打ちする。


「——ッ!」


 ヨウタが痛みで叫びながら炎を吐くのをやめてしまう。

 ヨウタが怯んだ直後、謎の人物は背を向ける。

 それと同時に掴んでいたヨウタの手を両手で持つ。

 そして、そのまま一本背負いで投げる。


「——ッ!」


 またしてもヨウタは痛みで声を上げる。

 その間に謎の人物はヨウタの手を離す。

 そして、すぐにその場を離れる。


「凄い……」

「動きに無駄が無いです……」


 ミスズたちはいつの間にか合流していて俺たちの戦いを見ていた。

 どうやらミスズたちは謎の人物の動きに感心しているようだ。

 ミスズたちが謎の人物に感心しているとヨウタが立ち上がる。

 そして、ヨウタは謎の人物の方を向く。

 殺意の方向がミスズたちから謎の人物に変わったらしい。


「面倒くさい……」


 一方、謎の人物はそう言いながら身構える。

 そして、一瞬の内に俺たちの視界から消える。


「えっ!?」

「消えた!?」


 視界から消えた事に驚くミスズたち。

 対してヨウタは視界に消えた事で静かに周りを探し始める。

 その時だった。


「ッ!」


 ヨウタの肩に何かが当たる。

 その後も体の至る所を何かが当たり続ける。

 よく見ると謎の人物が物凄いスピードで何度も殴っては逃げている。

 威力はそれほど痛くないがそれでもさっきの戦闘のダメージが残っているヨウタの体に堪えるようだ。

 そして、ヨウタの右膝が地面に着く。

 それを見ていた謎の人物は攻撃をやめて、ヨウタの真正面に立つ。


「……」


 何も言わないまま謎の人物はヨウタの事をじっと見つめていた。

 すると、ヨウタは……。


『UNITE CHANGE!』

『えっ!?』


 スマホの電子音声が聞こえてきて、いつもと違い体が闇に覆われる。

 そして……。


『ROCK TYRAANNO!』


 闇に覆われたヨウタの体が露になり、ティラノと融合した姿になる。

 けれど、いつもの姿が違い黒い紋様が体を埋め尽くしている。


「なるほど。姿を変えてきたか……」


 ヨウタの姿が変わった後、謎の人物は冷静にこちらを見ていた。


「しかもその姿ならさっきのようなちまちました攻撃は聞かない。いい判断だ。だが……」


 そう言った後、今度は謎の人物が光に包まれる。

 そして……。


『UNITE CHANGE! PARASITO MANTIS!』


 スマホの電子音声が聞こえてきて、謎の人物の体は段々と露になっていく。

 全体的に黄緑を強調としており頭はカマキリのような兜。体は金属の鎧で覆われていて、腕には少し棘のような部分がある。腰の部分には小さな双剣のような武器がついている。そして、お尻の辺りには今にも動き出しそうな金属の尻尾がついている。


「こうしてこちらも姿を変えれば意味はない」


 謎の人物はそう言った後、ヨウタは両肩の岩石のような鱗が光り始める。


「まずいです!」

「逃げて!」


 ミスズたちが謎の人物にそう叫ぶ。

 だが、謎の人物は何もせずにヨウタを見ていた。

 そして、両肩の岩石のような鱗から勢いよく岩石が発射される。

 それと同時にヨウタの体は後ろに下がる。


「危ない!」


 ミスズたちがそう叫ぶが謎の人物は一向に動こうとしなかった。

 そして、もう誰もが岩石が当たると思った瞬間……。


「邪魔だ」


 謎の人物はそう言った後に腰の部分の小さな双剣を両手に持つ。

 その後、剣を逆手に持ち直して腰を右に動かしながら右足を少し後ろにやる。

 それと同時に手も後ろにやる。

 そして、体ごとを右に回しながら右手の剣を岩石の方へと思いっきり振る。

 すると剣から大きい衝撃波が出て両方の岩石に当たる。

 岩石は真っ二つになるが発射された勢いはまだ残っていた。

 そのままさっきの攻撃でヨウタに背を向けた状態になった謎の人物に向かってくる。

 だが突然、何かを切り裂く音が周りに聞こえてきて岩石は粉々になる。

 何が起きたのか分からないがとりあえず謎の人物に岩石は当たらずに済んだ。

 一方、衝撃波は威力が弱りつつもヨウタに当たった。


「——ッ!」


 ヨウタは痛みで声を上げる。

 だが、それでもヨウタは立っていた。

 そして、ヨウタはまだ謎の人物に殺意を向けていた。


「まだ駄目か……」


 謎の人物は未だにヨウタに背を向けていた。

 だが、ヨウタの殺意のお陰か分からないが大体の様子は分かっているようだ。

 それを見たヨウタはすぐに謎の人物に走っていく。


「無駄だ」


 ヨウタが謎の人物に攻撃しようとした直後、体が何か巻かれる。

 よく見ると謎の人物の尻尾がヨウタの体に巻かれていた。

 そして、ヨウタは巻かれたまま宙に上げられる。

 ヨウタは何とか抜け出そうとするが尻尾はまるで生きているかのように動いて抜け出せずにいた。


「その尻尾は寄生虫だ。いくら解こうとしてもそいつからは逃れられない」


 謎の人物はそう言いながらヨウタの方へと体を向ける。


「本来、カマキリは寄生虫とは共存できない。寄生虫はカマキリを水辺に誘導した後に水を感知すると産卵するために胎内から脱出する。そして、寄生虫が胎内から脱出した後、カマキリは死に至る時もあると言う」


 謎の人物は地球上に住むカマキリと寄生虫の生態を淡々と述べていく。

 それはまるで研究者が論文を発表している時のようだ。


「だが、このパラサイト・マンティスは違う。寄生虫はカマキリの胎内に入った悪い部分しか食べない。胎内を守っている寄生虫を守るためにカマキリは外側から守っている。お互いにそうやって共存している生物だ。そして、場合によっては寄生虫がこうやって戦う事もある」


 なるほど……。

 さっきの岩石はこの尻尾で対処したって事か……。

 恐らくこの金属の尻尾で細かく切り裂いたんだ。

 俺がそう考えていると謎の人物の尻尾の力が強める。


「——ッ!」


 ヨウタはまたしても痛みで叫ぶ。

 それを見た謎の人物はヨウタを勢いよく投げる。

 投げられたヨウタは地面へと叩きつけられる。

 それと同時に土埃が多く上がる。


「陽太君!」


 ミスズが名前を呼ぶとヨウタはゆっくりと立ち上がる。

 そして、またヨウタの体は闇に覆われる。


『UNITE CHANGE! NITRO RAT!』


 スマホの電子音声とともにヨウタの体はラットと融合した姿になる。

 ただやはり黒い紋様が体中を埋め尽くしている。

 後、さっきの爆発の影響か尻尾が短くなっている。

 ラットと融合した後、ヨウタは土埃を払いのけながら物凄いスピードで謎の人物をかく乱しようとする。

 だが、謎の人物を動じずに光に包まれていく。

 そして、ヨウタがその隙に反撃しようとしたその時だった。


『UNITE CHANGE! SORCIER DEER!』


 スマホの電子音声が聞こえてきて、謎の人物の体が露になる。

 全体的に茶色い毛に覆われていて、頭は鹿の頭蓋骨で隠れている。その頭蓋骨には鹿らしく二本の立派な角がついている。手足の部分は毛で隠れてよく見えないがうっすらと黒くなっているだけで人間と同じだった。

 その姿はまるでファンタジーの世界に出てくるローブを着た魔術師にも見える。


「融合している最中は襲われる可能性が高くなる。その隙に攻撃するのはいい判断だ。だが……」


 謎の人物がそう言った後、角が光りだす。

 ヨウタはそんな事を構わずに殴る。

 すると、謎の人物がまるで煙のように消えてしまう。

 すぐにヨウタは謎の人物の姿を探し始めるが何処にも見当たらなかった。


「こうゆう相手の時はあまりいい判断ではない」


 謎の人物が何処から聞こえてくるがやはり姿は見えなかった。


「ソーサラー・ディアは角を光らせる事で見た相手に数秒だけ幻覚を見せる事が出来る生物だ。本来、この能力は危険を察知した時にしか使わない。それでも相手から逃げられなかった場合は……」


 生態系を説明しながら謎の人物がヨウタの真上から現れて……。


「この跳躍力で戦う!」


 そのままヨウタにのしかかる。


「ッ!」


 ヨウタは痛みで声を上げる。

 抜け出そうとするがもう体力の限界が近いようで上手く体を動かせないようだ。


「後、もう一つ。こいつは他にも戦う方法がある」


 謎の人物はそう言いながら右手を出す。

 そして、角をまた光らせると右手から炎の塊が段々と出来上がってくる。


「こいつの角には魔力が宿っている。その魔力は自然の力を取り入れる事で使う事が出来る。それはまるでファンタジーの世界に出てくる魔術師に似ている事からこの名前になったと言う」


 謎の人物は名前の由来を話しながら右手に持っている炎をヨウタの尻尾に近付けていく。


「ちなみに今回は炎の力を取り入れてこの塊を作った。もう少し時間があればもうちょっと大きいのが出来るが今の君にはちょうどいいだろ」


 謎の人物はそう言った後、右手の炎でヨウタの尻尾に火を付ける。

 尻尾に点火すると謎の人物は角を光らせるのをやめる。

 それと同時に右手の炎も消え、謎の人物はすぐにジャンプしてヨウタから離れる。

 そして、謎の人物が離れた後にヨウタはすぐに爆発する。

 ヨウタが爆発した瞬間、周りに爆風が吹き荒れた。


「終わったか……」


 爆風が収まると謎の人物が安心していた。

 だが、その時だった。


『UNITE ON!』


 スマホの電子音声が聞こえてヨウタの方から何かが謎の人物に飛んでくる。

 謎の人物はすぐに避けようとしたが、


「くっ!」


 左腕に少し掠れて痛みで声を上げる。

 そして、謎の人物に当たった何かは弧を描きながらヨウタの方へと戻ってくる。


『BUBBLE TORTOISE!』


 スマホの電子音声が聞こえてきてヨウタの姿が露になる。

 顔は亀のような兜で覆われて、体も俺と融合した時と同じく金属の鎧。肘の所にはヒレがついている。そして、背中の甲羅は泡で出来てる盾になっているが場合によっては今のようにブーメランとして使える。

 しかし、黒い紋様はこの姿になっても体中に刻まれていた。

 泡の盾の泡部分も少し濁っているように見える。

 そして、投げていた泡の盾をヨウタが取ろうとしたその時だった。


『UNITE OFF』


 スマホの電子音声が聞こえてきて、ヨウタが人間の姿に戻る。

 ヨウタが人間に戻ると投げていた泡の盾が段々と消えていく。

 それと同時にヨウタはうつぶせに倒れる。

 俺が入ったスマホもヨウタの近くに落ちる。


「陽太君!」「天道寺君!」


 ミスズたちは融合を解いてから倒れたヨウタに駆け寄っていく。


「終わったか……」


 謎の人物もそう言った後にヨウタの方へと歩いていった。


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