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危険な仲間

「なぁ、何処まで歩くんだ?」


 俺たちは何かが進んだ方向をただひたすらに歩いていた。


『俺たちが予想している奴ならそろそろ追いついてもおかしくないんだが……』

「ねぇ、グレンたちが予想している仲間ってそんなに危険なの?」


 俺たちがただひたすらに進んでいると、神崎がグレンたちの予想している仲間について尋ねた。

 今から会うかもしれない奴の事だ。

 どんな奴なのか知りたいのも分かる。

 けれど、これだけグレンたちが警戒しているという事は相当、危険な奴なのは間違いない。


『そうだな……あいつは昔から暴れん坊ですぐに周りが見えなくなってしまう奴だった。戦闘中に他の仲間を傷つけていた時があった』

「……そんな奴なのに仲間なのか?」

『あぁ、仲間だ』


 俺の質問に対してグレンは躊躇もなくそう断言した。

 こうゆう風に躊躇もなく断言して言える所もグレンの凄い所だと思う。

 普通ならそんな危険な奴を仲間だと断言して言える奴はまず居ない。

 しかし、なぜそこまで断言出来るのか気になる所だな……。


 

「なぜ、躊躇もなく言えるんだ? そいつは他の仲間を傷つける奴なんだろ?」

『……確かに他の仲間を傷つける奴ではあったが俺たちはあいつの力が必要だった』

「何でだ?」

『それは——』


 グレンが俺の質問に答えようとしたその時だった。


『————!』


 何かの叫び声と爆発音が周りに響いた。

 それと同時に物凄い風が吹く。


「な、なんだ?」


 俺は手で風を遮りながら叫び声が聞こえた方を見る。

 けれど、ここからじゃ何が起きたのか分からなかった。


『ここからじゃ分からない! ヨウタ、風が止んだら空を飛ぶぞ!』

『美鈴、私たちも飛びますよ』

「「分かった(わ)」」


 俺と神崎は風が止んだ後、翼を広げて飛ぶ。

 そして、叫び声が聞こえた方を見ると広い荒野で半分機械のドラゴンが暴れていた。


「あれは……」

『間違いない! ブラストカノン・ドラゴン!』

「ブラスト……何?」

『ブラストカノン・ドラゴン。元々は普通のドラゴンだったがある戦闘で右手両足両翼が無くなり、喉もその時にやられて炎を吐けなくなってしまった。そのドラゴンを改造し両足はキャタピラ。右腕は巨大なカノン砲をつけられたんだ。ただ改造されたせいで気性が荒くなり暴れだしたら収まるまで止める事が出来ないんだ』

「グレンたちが警戒するのも納得ね……」


 俺とグレンの話を聞いていた神崎がそう言いながら、ドラゴンを見ていた。


「しかし、何で実体化(リアライズ)しているんだ? それだけのエネルギーを何処から……?」

『エネルギー……? まさか!?』

「グレン、どうしたんだ?」


 エネルギーという言葉に反応したグレンに俺はそう尋ねる。

 いきなり叫んで、どうしたんだ……?

 

『俺たちは勘違いしていたんだ! 昨日の噂はあのラットたちの仕業だと思っていた! けど、実際には違っていたんだ! あのラットたちの影に隠れてブラストカノンも居たんだ!』

「何だって!? どういう事だ!?」


 俺はグレンの言葉に驚きを隠せなかった。

 そして、グレンの話は続く。


『あの時、廃棄されていた電子機器類が爆発させたのはラットたちだと思っていた。けど、そこから違っていたんだ。廃棄されていた電子機器類を爆発させたのはブラストカノンだったんだ』

「証拠は!? 証拠はあるのか!?」

『証拠はあのラットたちの尻尾だ。あいつらの尻尾は爆発した後、数週間で長くなるんだ。けれど、俺たちと出会った時には三匹とも長いままだった。つまりあの三匹は最近、爆発していなかったんだ』


 俺が証拠について尋ねるとグレンがラットたちの尻尾が証拠だと言い出す。

 確かにグレンの言う通り、あの時尻尾は長いままだった。

 けれど、それだけじゃ決定的な証拠にはならない。


「だけど、それだけじゃ証拠には——」

『他にも証拠がある。ヨウタ、昨日のラットたちが爆発した後の事を覚えている?』

「えっ?」


 俺はグレンの話を聞いた後、昨日の出来事を思い出していた。

 確かあのラットたちが爆発した後は……。


「光の塊になっていた?」

『そう。それだ』

「えっ?」

『ヨウタが言う通り、あいつらは光の塊になっていた。つまり爆発はそれだけのエネルギーを使うんだ。それなのに爆発した場所は数十か所。対してあいつらの数はたったの三匹だけ。それでどうやったら数十か所を爆発し実体化のエネルギーを貯めていられるんだ?』

「あっ……」


 確かにラットたちは一回、爆発しただけで光の塊になっていた。

 それなのに爆発した場所は数十か所。

 ラットたちの生態系も考えれば囮に二匹使ったとしても、一か所か二か所ぐらいでしか爆発しない筈だ。

 しかも、実体化はエネルギーを貯めないと出来ない。

 爆発なんかしたらエネルギーを貯める処か逆にエネルギーを使い果たしてしまう。

 どう考えても爆発と実体化の二つは両立不可能だ。


『もしラットたちが何十匹居たとしても俺がそれを感じる事が出来ない筈がない』

「じゃあ、噂の原因は……?」

『恐らくブラストカノンが電子機器類を破壊して爆発した。そして、それを仲間の爆発だと勘違いしたラットたちが違う場所で電子機器類のデータを食べて壊したって所か』

「そんな……」

『さらに付け加えると電子機器類を壊す前にあいつはデータを食べてから爆発させたんだと思う。それを繰り返して実体化できるまでのエネルギーを集めたんだな。しかし、何でこんな所に……?』

『グレン、あれ! ブラストカノンの奥に何か居ます!』

『何!?』


 エメラがそう叫ぶと俺と神崎は半分機械のドラゴンの奥を見る。

 すると、甲羅の表面が泡で出来ているウミガメが傷だらけで居た。


『あの子はバブル・トータス!』

「あのウミガメもグレンたちの仲間なのか?」

『そうです。あの子は甲羅の表面が泡で出来ている亀です。一見、あの泡の部分は割れそうに見えますがどんな攻撃も跳ね返す事が出来るんです。しかもあの子はリクガメ型とウミガメ型に分かれているのです』

「リクガメ型とウミガメ型?」

『リクガメ型は手足に爪が生えていて甲羅の泡が青いんです。そして、ウミガメ型は手足がヒレになっていって甲羅の泡の色が薄い水色なんです』


 エメラが俺の質問に答えながら亀の生態系を話してくれた。

 その後、俺は改めてドラゴンの奥を見る。

 手足がヒレだからあの姿はウミガメ型だな……。

 まぁ、噂でもウミガメって言われたし当然か……。


『そうか! 分かった!』


 グレンが何か分かったのかいきなり大声で叫んだ。


「グレン、いきなりどうしたんだ?」

『ブラストカノンはあのトータスを食べようとしてここまで来たんだ!』

「何だって!? どういう事だ!?」


 グレンが言った事に俺は驚きを隠せなかった。

 そして、グレンの話は続く。


『スネークの時と同じだ。あいつはエメラを食べて自分のエネルギーにしようとしていた。ブラストカノンもトータスを食べて自分のエネルギーにしようとしているんだ』

「ちょっと待って! 何であいつはあのウミガメの場所が分かったんだ?」

『あいつは俺たちより索敵能力が高い。だから、あのトータスの位置も分かったんだ! それより早く助けに行くぞ! あのままだと危ない!』


 俺はグレンの話を聞きながらウミガメの方をじっと見ていた。

 見ていても分かるがウミガメの体は傷だらけになっていて瀕死の状態だった。

 もしグレンの言う事が本当なら、このままだとあのドラゴンに食べられてしまう。


『俺とヨウタで助けに行く! ミスズたちは空中からブラストカノンの気を引いてくれ! ユウセイたちもあいつの所にたどり着いたらミスズたちと共に気を引いてくれ!』

「分かったわ」「分かりました」

『ヨウタ、行くぞ!』

「あぁ!」


 グレンから大まかな作戦を聞いた後、俺と神崎は空から小西は地上からドラゴンの所へ移動し始めた。

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