昼休みの出来事
「あぁ、あつい……」
そう言いながら俺は学校の机の上に顔をくっつけていた。
あの後、俺はそのまま家へと帰った。
家に帰った後、いつも通りに過ごして最後はベットに横になって寝た。
そして、朝になっていつもの制服を着て学校に登校した。
しかし、その時点で俺は失敗した。
今日からは衣替えで周りを見ると夏服だらけだった。ちなみに男子の制服は半袖のワイシャツ。下は同じく灰色のスラックスだが少し生地が薄い。女子は赤のリボンに半袖のセーラー服。下は黒のスカートである。
その事を忘れていた俺はブレザーを脱ぎ長袖のワイシャツをひじの所まで捲りながら授業に出ていた。
周りが涼しそうな恰好なので今の自分の恰好が余計に暑く思えてしょうがなかった。
更に周りも周りで俺の方を見て笑ったり、あらぬ噂をしていたからイライラゲージが頂点になりそうだった。
そんな中でも時間は一刻一刻進んでいき、やっと午前の授業が終わり昼休みになったので俺は机でだらけていた。
『ヨウタ、どうする?』
「さて、今日はどうするか?」
机に置いてあるスマホを見ながら俺は今日の昼休みをどうするか考える。
昼休みの俺は基本的、誰とも過ごさない。
最近は神崎や小西が学食とかに誘ってくるが今日の神崎はどことなく俺の事を避けてるし小西も小西で教室の戸から現れる気配がない。
しかも今日はやけに俺の噂が多いから人が居ない所で過ごしたい。
「よし、あそこに行くか」
俺はそう言いながらスマホと財布を持って目的地まで移動し始める。
※※※
「よし、誰も居ないな……」
購買部で昼飯を買ってきた俺はドアの隙間から人が居ない事を確認しながら屋上に出る。
「やっぱり屋上はいいな!」
俺が背筋を伸ばしながら空を見ていると……。
「天道寺 陽太か……」
「えっ?」
後ろから俺の名前を呼ぶ声がした。
俺はすぐに後ろを見ると、そこには霧崎が座りながらノートパソコンを操作していた。
「霧崎か……また授業をサボったのか?」
「別に君には関係ないだろ」
霧崎は俺に興味を持たずにパソコンを操作していく。
相変わらずパソコンの事以外興味を示さないな。
だけど、何故だかこいつの事は嫌いになれないんだよな……。
「隣で飯食っていいか?」
「ご自由に」
俺は霧崎に許可を取った後、隣に座り込む。
そして、俺はレジ袋からさっき買ってきた昼飯であるコロッケパンを食べ始める。
「うん、美味いな」
俺がコロッケパンを頬張っていると霧崎がパソコンを操作するのをやめて、こちらを見ていた。
「霧崎、なんだ?」
「いや何でもない」
霧崎は再びパソコンのキーボードで何かを打ち込んでいく。
霧崎の行動が気になったが俺はまた食べる事を再開する。
すると、隣からお腹の音が聞こえる。
「霧崎……お前腹減っているのか?」
「……」
霧崎はお腹の音を気にせずにキーボードを淡々と打っていく。
「昼飯は?」
「無い」
「買わないのか?」
「金が無い」
俺の質問に簡単に答えていく霧崎。
その質問の答えを聞いた俺は昨日の事を思い出す。
「金が無いって……もしかして昨日あそこの電気屋で何か買ったのか?」
俺がそう尋ねるとキーボードを打つ音が止まる。
「天道寺 陽太、君もあの場所に居たのか?」
霧崎はそう言いながら俺を睨みつける。
睨みつけてきた霧崎を見た俺は少したじろぐ。
「どうなんだ?」
「あっ、あぁ、用事が済んで家に帰ろうとしたらあの電気屋にお前が入っていく所を見たんだ」
俺は偽りなく霧崎の質問に答えていく。
ラットたちを保護した後、家に帰ろうとした時に見かけたので一応、嘘は言ってない。
「そうか……さっきの質問の答えだが君の言う通り、あの店でお金を使い果たした。だから、今はお金が無い」
霧崎はそう言うとまたパソコンのキーボードを打ち始める。
けれど、霧崎の腹の虫は収まらなかった。
それを気に毒に思った俺はコロッケパンを食べた後、レジ袋から焼きそばパンを取り出す。
「霧崎、これやるよ」
俺はそう言いながら焼きそばパンを霧崎に差し出す。
「何故だ? それは君のだろう?」
「腹を空かしている奴をほっとけないだけだ。だから、受け取れ」
「……ありがとう」
霧崎は俺の焼きそばパンを受け取り、お礼を言う。
(へぇ、こいつもお礼を言えるんだ……)
俺はそう思いながらレジ袋から紙パックのコーヒー牛乳を取り出す。
そして、ストローを指して紙パックの中身のコーヒー牛乳を飲む。
コーヒー牛乳を飲みながら俺はある事を思いつく。
「なぁ、霧崎」
「なんだ?」
「お前、最近ネットで流れている変な噂知らないか?」
俺は霧崎に最近ネットで流れている変な噂を尋ねる。
毎日、パソコンを操作している霧崎なら変な噂も一つや二つ知っている筈だ。
その噂がもしかしてグレンの仲間の仕業かもしれないしな。
「……何故だ?」
「いや、その気になってな……」
「まぁ、いい。答えよう。最近、隣町の森でウミガメを見たっていう噂が流れている」
「森でウミガメ?」
「実際に見たっていう人が何人も居るらしい」
森にウミガメを見た噂か……。
これはもしかしたら本当にグレンの仲間かもしれないな……。
「確かめに行くなら気をつけろ」
「えっ?」
「ネットの噂は危ないからな」
霧崎はそう言った後、俺があげた焼きそばパンの袋を開けて食べ始める。
それと同時に昼休みのチャイムが鳴る。
「やばっ! チャイムが鳴り始めた!」
俺は急いでコーヒー牛乳を飲み干してゴミをレジ袋に入れる。
そして、屋上のドアノブに手を掛けて去ろうとする。
「霧崎、情報ありがとうな! 後、たまには授業をちゃんと受けろよ!」
「……気が向いたらな」
「んじゃな」
俺はそう言いながらドアを開けて屋上を去っていった。
「不味いな……」
『嘘をついてもらった物なのに随分な言い草だな……』
「うるさい。最初からそんな事頼んでない……」




