戦い後の帰り道
「ごめんなさい!」
俺は正座をしながら神崎たちに謝っていた。
あの後、ラットたちの大爆発に巻き込まれた俺たちは相当なダメージが負いながらもなんとか助かった。
普通の人間の状態であの大爆発に巻き込まれたら死んでいても可笑しくないのは言うまでもない。
その爆発音は周りに響いてしまい複数の足音がこちらへと向かってくる。
足音を聞いた俺たちはすぐにダウンロードを開始した。
幸いラットたちもさっきの大爆発でエネルギーを使い果たしたのか光の塊になっていてダウンロードはスムーズに出来た。
ダウンロード終了後、俺たちは融合を解除してからその場を離れた。
そして、誰も居ない所まで移動した後、俺は神崎の方を見るとまださっきの事を気にしているようだったのでこうして謝っている。
『陽太様! 美鈴になんて破廉恥な事をするなんて紳士としての自覚はないんですか!?』
神崎の代わりにエメラが俺の事を叱る。
一方、神崎はちらりと見るが俺と目が合うとまた顔が真っ赤になりそっぽを向く。
その様子を見ていた俺は言い訳せずに謝った方がいいと思った。
『陽太殿! もっと誠意を示せ! でなければ死をもって償え!』
「アルジャ、それは重すぎです!」
アルジャの言葉に対して突っ込む小西。
しかし、これ以上誠意を見せるというのはどうしたらいいんだ?
俺がそう考えていると神崎が何かを決心したのかこちらに向かってくる。
「陽太君! 顔をあげて!」
「は、はい!」
俺は神崎の言う通りに顔を上げる。
すると、まだ神崎の顔は赤みを帯びていた。
「じゃあ、踏ん張って!」
「えっ? へっぶぅ!?」
神崎がそう言うと俺の頬を平手で叩いた。
スナップが地味に効いていて痛みが段々と広がっていく。
「痛い……」
「私の気持ちはまだ収まらないよ! だから、陽太君!」
「は、はい!」
「明日から一週間、放課後の集まりの時は私に何か奢る事! いいね?」
神崎はやけくそ気味に俺にそう叫ぶ。
その提案を聞いた俺は神崎なりの配慮だと思った。
「返事は?」
「あっ、はい! 謹んでお受けいたしますです!」
神崎の気迫に押され俺は変な言葉遣いで答える。
「じゃあ、明日からお願いね! それじゃ私は先に帰るよ!」
神崎はそう言った後、エメラと融合して電線を使って帰っていった。
その様子を見ていた俺は神崎の中で整理が出来ていないという事は分かった。
「あっ、僕もそろそろ帰りますね。それじゃ天道寺君また明日学校で」
小西もそう言った後、神崎と同じようにアルジャに融合して電線を使って帰っていた。
そして、俺以外誰も居なくなった。
『ヨウタ、今日はもう帰ろう』
「……あぁ、そうだな」
俺はそう言った後、とぼとぼ歩き出す。
『ヨウタ。君は融合しないのか?』
「隣町だったら歩ける距離だからな。たまにはここら辺の街並みを見たいし気分転換もしたい」
『そうか。なら気分転換したいならナビするか?』
「いや、いい。そうだな……たまにはグレンと話しながら帰るか」
俺は一旦、止まり鞄の中からイヤホンを取り出しスマホに差し込む。
そして、片方のイヤホンだけ耳に入れる。
「よしこれでいいか」
『ヨウタ、じゃあ行くか』
「あぁ、そうだな」
耳に入れてない片方のイヤホンをマイクとして使いながら俺はまた歩き出す。
『しかし、隣町って言われてもそこまで街並みは変わらないな』
「確かにな。けど、端の方に行くと森とか広がっているんだ」
『そうなのか』
「ってグレン。お前も端の森に居たんだろ」
『正確には森の小屋だ。あそこが森だと気づかなかった』
様々な場所を見ながら俺はグレンと話していた。
こうゆう風に街の風景を見ながら、グレンと話すのも悪くないな。
俺の気分も段々と晴れていく。
『そういえばヨウタ』
「ん?」
『STRIKE BURSTの事、今回の戦闘でも分からなかったな』
「……あぁ、そうだな」
アプリに追加された機能は大まかに三つだ。
一つ目は融合した姿になっても周りの人たちにグレンたちの声が聞こえるようにする機能だ。
この機能は他のモンスターと融合した姿になってもグレンたちの声はちゃんと自分にも周りにも聞こえるのが特徴だ。
二つ目はさっき神崎が使ったUNITE CHANGEだ。
この機能は先ほど説明したから省略する。
そして、三つ目はグレンが言ったSTRIKE BURSTだ。
この機能は正直、分からない。
説明文にも何も書いておらず俺たちで何とか調べようとしていた。
しかし、結果は見ての通りだ。
どういう意味だが調べるために日本語に直したりしたが攻撃爆発っていう言葉になり、ますます分からなくなったのは苦い思い出だ。
今回の戦闘で何か分かるかもしれないと思ったが流石にそんなに甘くなかった。
『結局どんな機能何だろうね?』
「今は分からないけどいつかは分かるだろ。その時までは想像しながら待ってるよ」
『そうか。ん?』
「グレン、どうした?」
『あれってヨウタと同じ学校の奴じゃないか?』
「えっ?」
俺はスマホを見るのをやめて周りを見る。
けれど、そんな奴は何処にも居なかった。
「何処だよ?」
『ほら、あそこの電気屋だよ』
「ん? あれって……」
俺がグレンの言う通りに電気屋を見ると霧崎が居た。
霧崎は俺に気付かないまま、電気屋に入っていく。
「あいつ、電気屋で何か買うのか?」
『ん?』
「グレン、どうした?」
『いや、気のせいか? ヨウタ、帰ろう』
「?」
霧崎が入っていた電気屋をグレンが少し見ていたが気にならなくなったのか俺に帰る事を勧める。
『ヨウタ、どうした?』
「あっいや何でもない」
俺は霧崎が入っていた電気屋を少し見た後、そのまま家へと帰っていた。




