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掴んだもの

「小西、そっち行ったぞ」

「任してください! あっ、いったぁ!」

「勇正君、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。天道寺君、そこの路地に逃げましたよ」

「分かった!」


 俺たちは学校が終わった後『愚痴るんです』の情報を元に隣町に来ていた。

 なんでも今回の噂はこの町で爆発音が聞こえきた後、電子機器類が壊れているという情報だった。

 その噂を見たグレンが怪しいと言ったので俺たちはその調査をしに来た。

 ちなみに移動はこの前みたいに人目のつかない場所で融合した姿になり電線を通って隣町まで行った。

 その後は人目のつかない場所で融合した姿を解いて俺たちは調査を開始した。

 まず俺たちは壊れた電子機器が置いてあった場所で聞き込みをしていた。

 けれど、有力な情報は得られなかったので次に爆発音が聞こえた場所を探す事にした。

 『愚痴るんです』の情報によると電子機器類が壊れた場所が一か所に対し、爆発音が聞こえてきたのは数十か所だったそうだ。

 しかも爆発した場所は全て廃棄されたゴミが捨てられていた場所で起きたらしい。

 俺たちは効率を上げるために集合場所を決めて別々に行動した。

 その後、廃棄されたゴミが捨てられた場所を全て回った俺たちは集合場所に集まって情報交換をした。

 お互いの情報交換後、俺たちはある事が分かった。

 それは廃棄されたゴミの中に黒焦げになった電子機器類の部品があった事だ。

 爆発音の正体は電子機器類が爆発した音だと考えていた俺たちの前に何か小さな黒い物体が横切った。

 それを見た俺たちはこの噂の犯人じゃないかと思い、捕まえようと追いかけた。

 しかし、小さな黒い物体は意外にすばしっこく俺たち三人がかりで捕まらなかった。

 そして、小さな黒い物体がビルの隙間の路地に逃げて俺がそれを追いかけて路地を走っている所で今に至る。


『ヨウタ! 融合した方がいいんじゃないのか?』

「大丈夫だ! あんな小さい奴なら俺のままでも大丈夫だ!」


 鞄の中に入っているスマホからグレンがそう忠告してくるが俺は無視して走っていた。

 そして、路地を抜けるとそこはビルの隙間で出来た空き地だった。


「くそっ! 何処に行った?」


 俺は周りを見るが小さな黒い物体は何処にも居なかった。


「陽太君!」


 俺が小さな黒い物体を探していると神崎たちが追いついてきた。


「天道寺君、あの黒い物体は何処に?」

「分からない。けど、まだ近くに居るはずだ!」


 俺が小西にそう言った後、何かが掛ける音が聞こえてきた。

 俺たちは警戒しながら周りを見る。


「一体何処にいっ!?」

「陽太君!?」「天道寺君!?」


 俺がそう言おうとしたその時、後ろから何かが俺の頭にぶつかってきた。

 ぶつかった衝撃で俺は地面に倒れるとそれを見ていた神崎と小西が驚く。


「いってぇ……何なんだよぉ!?」


 俺が頭を押さえながら立ち上がろうとするとまた何かが俺の頭にぶつかってくる。

 そして、俺が倒れた後も何かが俺の体を走っていく。


「陽太君、大丈夫?」

「全く何なんだよ……?」


 俺は神崎の手を借りながら立ち上がる。

 すると、目の前には小さな黒い物体が三匹居た。


「仲間が居たんだね」


 神崎がそう言った後、三匹の小さな黒い物体は姿や色彩がはっきりしてくる。

 毛並みは赤でお腹の所は白。耳の部分は小さい炎がついていて尻尾は長い導火線になっているラットだった。


「か……」

「ん?」

「かかかかか……」

「神崎?」

「可愛いぃぃぃ!」

「えっ?」

「可愛すぎるぅぅぅ!」


 姿や色彩がはっきりした敵を見て神崎はそう叫んだ。

 どうやら神崎のストライクゾーン直球だったらしく悶絶していた。


「というか同じ種族の奴って複数居るんだ……」

『そりゃあそうだ。だから、俺たちにもお前たち人間みたいに名前があるんだ』


 グレンが俺の疑問に素直に答えてくれた。

 なるほど。

 じゃあ、グレンの種族の奴も複数居るんだ……。


『それよりヨウタ。俺にも姿を見せてくれ』

「あぁ、分かった」


 俺は鞄の中からスマホを取り出す。

 そして、今神崎が悶絶しているラットをグレンに見せる。


『あいつらはニトロ・ラットだな。三匹とも暴走状態になっているな』

「ニトロ・ラット?」

『集団で行動していて敵から餌を取る時一匹が囮になって遠くで爆発し、その爆発音で敵が興味を引いている内に他の連中が餌を奪うんだ』

「えっ? あのラット、爆発するの?」

『うん、そうだよ。普段は爆発担当と耳の炎を尻尾につける担当で分かれているらしいが敵から餌を取る時だけ長い尻尾を自分の耳の炎につけて爆発するんだ。相当なダメージを受けた時にも爆発するらしい』

「へぇ、そうなんだ」


 グレンがラットの生態系について俺に語った。

 

「じゃあ、今回の噂はあのラットの生態が元に起きた事なんですか?」


 俺とグレンの話を聞いていたのか小西がそう尋ねる。


『恐らくな。囮の一匹が違う所で爆発を起こしてその間に他の奴が目的の電子機器類のデータを食べたんだな。しかし、妙だな……』

「妙?」

『爆発したはずなのにあいつらの尻尾は長いままだ。どういう事だ……まぁいいか。それより相手は三匹だ。一体一体は爆発をしなければそんなに強くないが三匹となるとちょっとだけ厄介だ』


 グレンがそう言った後、俺は改めて三匹のラットを見る。

 確かに一体一体はそんなに強そうではないのは見れば分かる。

 しかし、三匹で襲ってきたら大変かもしれない。

 さて、どうするか……。


『ヨウタ! あいつらが警戒している内に融合だ』

「あぁ、そうだな。ほら、神崎行くぞ!」

「はぁいぃ!」


 俺たちは鞄を地面に置き、アプリを開く。

 そして、UNITE ONの文字を押して融合した姿に変わる。

 アプリがアップデートされたお陰で融合するまでの時間が短くなっている。


「よし、行くぞ!」


 俺はそう言った後、三匹のラットに突っ込む。

 だが、ラットたちはそれぞれ違う方へ逃げていく。


「速い!」

「私に任してぇ!」


 神崎がそう言いながら翼を広げ飛ぶ。

 そして、追いかけるが神崎の姿を見たラットたちは危険を察知したのかスピードを上げる。


「まってぇ! 大人しく私に触らせてぇ!」


 神崎もそう言いながら飛ぶスピードを速める。

 だけど、この絵面は……。


「なぁ、グレン……」

『ヨウタ、何だ?』

「あれが野生なんだな……」

『ちょっと違うような気がするが絵面的には合ってる』


 そう。エメラと融合した神崎がラットたちを追いかけている。

 それは鳥が獲物であるネズミを狩る姿そのものだった。

 俺たちはその光景をただ見つめているしかなかった。

 そして、遂に神崎がラットたちを端の方に追い詰めた。


「さぁ、追い詰めたよ。大人しく私に触れて頂戴……」

『美鈴、顔! 顔が怖いです!』


 エメラが言うように神崎の顔は違った意味で獲物を狙っている顔だった。

 その顔を見た俺たちもぞっとした。


「おや、ラットたちが何か話していますよ」


 小西がそう言うと俺はラットたちの方を見る。

 確かに何かを話しているように見える。


「神崎、気をつけろ! 何か企んで——」

「さわらせてぇぇぇ!」


 俺が忠告する前に神崎はラットたちに突っ込んだ。

 だがその瞬間、ラットたちも神崎に飛び掛かる。


「えっ? ちょっ……んぎゃ!?」


 ラットたちは神崎の体を土台にして飛び越える。

 そして、予想出来なかった神崎はそのまま壁にぶつかり地面に落ちる。


「あれは痛そうだな……」

「天道寺君、呑気な事を言ってる場合ではありませんよ!」

「えっ? ぐっ!」


 三匹のラットが高速で俺と小西に連続攻撃をしてくる。

 あまり痛くなかったが連続でやられるのはちょっとまずい。


『ヨウタ、どうする!?』

「って言われても高速で動かれたら何も出来ない!」


 俺と小西が身動きできない状態になっていると……。


「あああああぁぁぁ!」

「えっ?」

「ラットさん、もう怒ったよ!」


 ラットたちにむきになった神崎の体が段々と光に覆われていく。


「おい、まさか!?」

『UNITE CHANGE! ELECTRIC SNAKE!』


 スマホの電子音声が周りに聞こえると光に覆われていた神崎の体が露になる。

 頭にはベールが覆われており口元にも薄い布が覆われている。手首と二の腕には青いブレスレット。胸元は隠れているがへそは見えてる。一見、アラビア風な踊り子に見えるが下半身は蛇のような長い胴体になっていた。


「いくよぉ!」


 アプリの追加機能であるUNITE CHANGEを使った神崎はそう言いながらラットたちを追いかける。

 UNITE CHANGEはモンスターと融合していても自分が望む事で違うモンスターと融合できるシステムだ。

 それが使えるようになった事で今まで融合を解いてからまた別の奴と融合する動作を省略できるようになった。

 神崎の姿を見たラットたちは危険を察知し逃げ惑う。


「待ってぇ!」


 逃げ惑うラットたちを追う神崎。

 今度は壁に気をつけながらラットたちを追い詰めていく。

 けれど、この絵面も……。


「野生だな……」

『ヨウタ、今度は間違っていないかもしれない』


 そう。さっきは鳥が獲物のネズミを狩る姿だったが今度はむきになった蛇が獲物であるネズミを狩る姿だった。

 すると、今度はラットたちも考えたようで俺たちの方へ突っ込んでくる。


「おい、こっちに来るな!」


 俺の言葉は虚しくラットたちは俺たちの体を土台にして飛び越える。

 そして……。


「陽太君、勇正君! どいて!」

「ん? おわっ!?」


 神崎が俺に突っ込んできて倒れる。

 小西は神崎が来ていた事を予知していたのか神崎の突進を避けた。


「いっつつ……神崎、大丈夫——」


 むにゅう。


「ん? 何だ?」


 俺の右手に掴んでいるこの柔らかい物は?

 丸くて柔らかいのは分かるが……。


「ひゃっ!?」


 神崎が小さく悲鳴を上げる。

 その小さな悲鳴を聞いた俺は今、自分の右手が掴んでいる場所に察しがついてしまった。

 丸くて柔らかいもの……そう。それは母親が赤ちゃんに食事を与える時に使う場所であり男のロマンが詰まっている神聖な場所。最近では双丘が大きいのがいいとか小さいのがいいと口論する人もいる。だがしかし、結局人が求めるのは同じ場所であるのは変わりない。その神聖な場所を人はみなこう呼ぶ。おっぱい……もしくは紳士的に呼ぶなら胸と。


「か、かんざき……」

「い……」


 神崎が段々と顔が赤くなり電気が体に帯びていく。

 それに対して俺は神崎と反対に段々と顔が青ざめていく。


「ご、ごめ……」

「いっやあああああぁぁぁっ!」

「「『『ぎゃあああああぁぁぁ!』』」」


 顔がリンゴみたいに真っ赤になった瞬間、神崎は体から電気を放ちながら叫び始める。

 それと同時に俺も小西も神崎が放っている電気を浴びてしまう。

 そして、ラットたちも電気を浴びてしまい導火線みたいな尻尾が段々と短くなっていく。


『ま、まずい!?』

「えっ!?」

「————」


 ラットたちが何かを叫んだ後、導火線みたいな尻尾は無くなり大爆発が起きる。

 その第二次災害に俺たちは巻き込まれていった。

 これが神崎の胸を揉んだ報いだと思いながら俺は大爆発に巻き込まれていく。

 けれど、最後にこれだけは言おう。

 とても柔らかったです!


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