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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第三章 仲間を追い求める者
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友からの誘い

 博物館。

 それは歴史などに関する資料を展示しており人類の歴史などを学ぶ施設。

 俺にとっては学校の行事以外行かない場所だと思っていたがまさかこんな形で行く事になるとは思わなかった。


「凄い……これが中世の騎士の武器なんだ……」


 小西は中世時代に騎士が使っていた武器を見て感激していた。


「なぁ、グレン。本当にここに居るのか?」


 俺は鞄の中からスマホを取り出してグレンに尋ねる。


『分からないが調べてみる価値はあると思う……ん?』

「グレン、どうした? 何か気づいたのか?」

『いや何でもない……』

「へぇ、なるほどね。こんな事があったんだ……」

『人類史というのは面白いですね……』


 俺とグレンが話していると近くに居た神崎とエメラが騎士の事が纏められているパンフレットを見て感激していた。

 というかエメラ、いつの間に神崎の所に戻ったんだ……。


「神崎、今はパンフレットを見てるよりグレンたちの仲間を探すべきだろ」

「陽太君、こうゆう所に来たんだが楽しまないと損だよ」

『陽太様、そうですよ。人物の歴史を学ぶ事も大切な事です』

「だがな……」

『ヨウタ、ミスズたちの言う通りだ。折角ここまで来たんだから楽しもう。何より彼は君たちと楽しみたいから誘ってくれたんだ。彼と一緒に楽しまないと損だ』

「……!」


 グレンの言葉を聞いた俺は小西の方を見る。

 小西は武器を見ながらこちらをちらちらと見ていた。

 恐らく不安なんだろう。

 自分だけが楽しんじゃって俺たちは楽しめてないんじゃないかと。

 だけど、どうしたらいいのか分からないんだ。

 ……全く折角誘ってくれたのに楽しまないのは小西に悪いよな。

 俺はスマホを鞄にしまい小西の方へと行く。


「小西、何見てるんだ?」

「えっあっ天道寺君」

「へぇ、騎士って剣以外にも色んな武器があるんだな」

「そうですね。一般的に騎士のイメージはロング・ソードで戦っている姿が思い浮かびますよね」

「だな」


 俺と小西は飾られている武器を見ながら騎士の事を話す。

 意外に小西と武器の事を話していると結構楽しいと感じる。

 しかもこうして小西と自然に話せるのは嬉しい。

 まだちょっとだけ小西の方に緊張があるみたいだけどこれから徐々に慣れていけばいいか……。


「なぁ、小西。あっちの部屋は何なんだ?」

「えっと、あちらの部屋はこのパンフレットを見る限り様々な鎧を飾っているそうです」


 俺が指差しながら隣の部屋の事を尋ねると小西は手に持っていたパンフレットを見ながら答える。


「鎧の部屋か……面白そうだな。行ってみようぜ」

「はい、そうですね」

「あっ、待ってよ」


 俺と小西は鎧が飾られている部屋へと行く。

 後から神崎も後ろからついて行く。


「えっ……」

「これは……」

「何なの……」


 俺たちが騎士の鎧が飾られている部屋に行くと鎧は一つも無かった。

 その光景に俺たちは唖然としていた。


『美鈴——美鈴——』


 エメラが小さな声で神崎を呼んでいた。

 エメラの声が俺にも聞こえたが唖然としていた小西には聞こえなかったみたいだ。


「どうしたの?」

『美鈴、私をあの奥の鎧まで連れていってください』

「えっ?」


 俺と神崎は奥の方を見る。

 すると、銀色の巨大な鎧が飾ってあった。

 奥を確認した後、俺と神崎は鎧の方へと歩いていく。


「デカいな……」


 俺たちが鎧の目の前に立つと遠くから見た時より大きく感じられた。


『この子はアイアン・ゴーレム!』

「えっ? エメラの仲間なの?」

『えぇ、そうです。しかし何故この子がここに……』

「暴走してないのか?」

『分かりません。この子は強すぎる力ゆえに活動限界があり休んでいる間はこのようにしている時があるんです』


 エメラが巨大な鎧の説明した後、俺たちはただ単に見つめていた。

 この鎧が動き出し暴れてたら大変な事になる。

 しかし、「愚痴るんです」の記事にはただ彷徨っていた事しか書いてなかったという事は人に被害は無かったという事だ。

 ニュースでもそんな情報は入ってなかったしそこは心配ないと思う。


「この鎧は……」

「あっ小西」


 いつの間にか小西が俺たちの近くに居た。


「この鎧は本当に人間が作られた物なんですか? とても人間が作れるような物じゃない……」

「確かにこの鎧は人間が作れる物じゃないと私も思うよ」

「えっ?」


 小西が巨大な鎧を見て考えていると後ろからご老人がやってくる。


「あの失礼ですが貴方はどちら様ですか?」


 神崎はご老人が何者かと尋ねる。


「私はここの館長です」

「館長さん?」

「はい、そうです。さてこの鎧の事を話しましょうか」


 館長さんは俺たちに自己紹介した後、巨大な鎧について語りだす。


「この鎧はいつの間にか私の博物館にあったんです。しかし、どの時代の鎧とも一致しない。そこで考えていたのは君の考えと同じくこの鎧は人間が作った物ではないという説を……」

「館長さんまでもが僕と同じ考えを……」

「君たちはこの鎧の噂をご存知かな?」

「えっ? 噂?」


 館長さんが言う噂というのは夜中に彷徨う巨大な鎧の事だった。

 どうやら小西はその噂を知らなかったみたいで館長さんから噂を聞くと驚きを隠せなかった。


「まさかこの鎧が……」

「実は私も見た事があるんです」

「「「えっ!?」」」


 館長さんの言葉に小西だけじゃなくて俺と神崎も驚きを隠せなかった。


「実際に見た訳ではないんですがね。噂が広まった時に監視カメラの映像で見たんです」

「監視カメラの映像で?」

「私も長生きしてきましたがまだまだ知らない事だらけですな」


 館長さんはそう言いながら静かに笑っていた。


「しかし、私も映像で見ていて分かった事にあったんです。この鎧は仲間を探しているという事に」

「仲間を探している?」

「えぇ。最初はこの展覧会にも様々な鎧を飾っていました。けれど、映像を見てから他の鎧を飾るのを辞めたんです」

「それはどうしてなんですか? 様々な鎧を置いた方がお客さんは来るのに……」


 小西は正論を館長さんに言った。

 確かに様々な鎧が置いてあればそれだけ多くのお客様が来るはずだ。


「動く度にこの鎧も様々な鎧を見ていたんです。その度に悲しそうにしながら自分が飾られている所に戻っていきます」

「自分が飾られている所に? どうしてまた戻っていくんですか?」

「それは私にも分かりません。けれど、私はそれを見るたびに心が苦しくなりました。その結果、鎧を飾るのを辞めたんです」

「そうだったんですか……」

「……」


 小西と館長さんが淡々と話しているのを俺と神崎は黙って聞いていた。


「出来ればこの鎧を仲間の所に行かせてあげたいのですが私にはどうする事もできません」

「館長さん……」

「おっと長話が過ぎました。では私はこれで。君たちもゆっくりとしていくといい」


 館長さんはそう言った後去っていく。

 俺たちには館長さんの去っていく姿が何処か悲しそうに見えてしょうがなかった。

 そして、俺たちはまだ見ていない所を見ていく。


「なぁ、グレン……」


 俺は小西に聞こえない声で今まで黙っていたグレンに話しかける。


『なんだ?』

「館長さんの願い、叶えてあげようぜ……!」

『あぁ……そうだな……!』


 俺たちはそう心に誓いながら博物館を後にした。


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