告白 後編
「ごめんなさい!」
俺は神崎と男子生徒に土下座しながら謝っていた。
「陽太君、気になったとはいえ流石にこれはないよ」
神崎の言葉に心がぐさりと突き刺さったが俺もその通りだと思う。
気になって神崎の後をつけて男子生徒と喋っている所をのぞき見して挙句の果てには告白じゃない事に突っ込むとか自分でも無いと思う。
「あ……あの……」
神崎の後ろに隠れていた男子生徒が俺に声を掛けてきた。
「ぼ……僕は……気にしてないから……大丈夫……です」
男子生徒は俺にそう言うとまた神崎の後ろに隠れる。
一体何なんだ?
「勇正君がそう言うなら私も許すよ」
「神崎……」
「だけど、こんな事はもう駄目だからね。分かった?」
「分かりました!」
神崎の忠告を心に噛みしめながら俺は二度とやらないと誓った。
「じゃあ、そろそろ紹介しないとね。ほら、後ろに隠れてないで」
「えっ? うわぁ!?」
神崎は勇正と呼ばれる男子生徒の後ろに回り肩を押す。
そして、俺の前に立つ。
今まで遠くで見たり神崎の後ろで隠れていてあまり容姿が分からなかったが髪は俺より薄め茶髪のアシンメトリー。顔は中性的。身長は神崎より低いか同じくらいの男子生徒だった。
「あ、あの……その……」
男子生徒はおどおどしながら俺に何かを伝えようとしている。
「は、はじめまして……小西 勇正です……よ、よろしくお願いしまっしゅ!」
「しゅ?」
「……」
小西は自己紹介を噛んだ事に恥ずかしくなったのか顔が段々と赤くなっていく。
こいつ、相当緊張しているな……。
ここは俺が上手くやらないとな。
「えっと、初めまして天道寺 陽太です。これからよろしくお願いします」
俺は立ち上がり握手をしようと手を出す。
「ひっ!?」
引かれた……。
小西は俺が握手を求めた手を見て引かれた。
その様子を見ていた俺は引かれた事に凹み始める。
俺……こいつになんかやったか?
「勇正君、どうしたの? 何でそんなに怯えているの?」
俺が引かれた事に凹んでいると神崎が小西に理由を尋ねる。
「……あの……その……天道寺君って……よく学校一の不良とか噂されているから……いきなり殴ってくると思って……」
どうやら小西は俺の悪い噂を聞いて怖がっていたようだ。
なるほど……確かに俺の悪い噂を聞けば誰だって近づきたくないし怖がる。
だからと言って握手を求めて引かれるのは誰だって凹むぞ……。
「勇正君。陽太君は悪い人じゃないよ。確かに目つきが悪くて不愛想だけど人が言ってるほど悪い人じゃないよ」
神崎は勇介に俺の事に対してフォローを入れる。
若干俺の悪口を言っていたがまださっきの事怒っているのか……?
「そ、そうなんですか……」
神崎の言葉を信じたのか小西の緊張は和らぐ。
「さ、さっきはすみません……こ、今度こそよ、よろしくお願いしますね。て、天道寺君……」
小西はまだ震えていたが俺の握手しようした手をしっかりと掴んだ。
人によっては簡単な事かもしれないが小西にとってはこの行動をするのに勇気が必要だったという事は見ていて分かる。
「……あぁ、これからよろしくな。小西」
俺も小西の手をしっかり掴んで握手をした。
「所で勇正君聞きたいことって何なの?」
俺と小西が握手をしていると神崎が何を聞きたいのか尋ねてきた。
「じ、実は……あの怪物についての噂……いえ違いますね。あの時怪物と戦っていた赤い鎧の噂を知りませんか?」
「「『『!?』』」」
小西が俺との握手を辞めると聞きたい事を俺たちに話してきた。
小西の話してきた事に俺たちは驚きを隠せなかった。
大蛇の事じゃなくて俺とグレンが融合した姿について聞きたいと言ってきたのだ。
驚かないのがおかしい。
「赤い鎧?」
神崎が冷静に対処していく。
「ぼ、僕は怪物に襲われていたんです。あの時死にそうになった僕ですが赤い鎧が僕の事を助けてくれたんです……」
小西は淡々と語っていく。
あの時、俺が助けた奴は小西だったのか。
そして、小西の話は続く。
「僕はあの時助けてくれた赤い鎧の事を知りたくて色んな人に聞きまわっていたんです。けれど、皆さんが知っている事はあの怪物の事だけだった。だから、学校一の噂好きの神崎さんなら何か知っているかと思って聞きに来たんです」
いつの間にか小西の言葉から俺に対する恐怖が無くなり普通に話していた。
しかし、こいつは俺の事を調べてどうするんだ?
「ごめんね。私もその噂は初めて知ったから知らないの。それより何で勇介君はその噂を調べているの?」
「そ、それは……」
神崎が俺の事について何故調べているのか聞くと小西は言いにくそうにしていた。
何か隠したい事でもあるだろうか……。
「じ、実は僕の小説の主人公にしたいんです!」
「えっ?」
小西は叫びながら俺たちに言う。
俺たちは小西が言った事を理解できずにいた。
えっ? 何? 小説?
「僕、小説を書いているんです。だけど、今度の新作はどうするか体育館の裏側で悩んでいたんです。その時、あの怪物が来て僕を襲ってきてもう僕は駄目だと思った時にあの赤い鎧が僕を助けてくれたんです。あの時は何が起きているんだが分からなかくて必死に逃げましたけど、冷静に考えてみてあの赤い鎧は今度の新作の主人公にふさわしいって思ったんです。その為に赤い鎧の噂を調べていたんです」
小西は目を輝かせて俺たちに語った。
その様子は気になった事を調べる神崎に似ていた。
「しかし、噂好きの神崎さんでも知らないんですか……これからどうしよう……」
「そんなに気を落とさないで……」
落ち込んでいる小西に神崎はフォローを入れる。
「それもそうですね!」
「立ち直りはやっ!」
小西の立ち直りの速さに俺は突っ込む。
「あっ、そ、そうだ。これから僕、これに行くんですけど天道寺君と神崎さんも行きます?」
小西がそう言いながら鞄の中に手を入れてポスターを取り出す。
「展覧会 騎士の祭典?」
俺たちがそのポスターの内容を見ると騎士の祭典と書いてあった。
どうやら騎士の武器などが飾ってある展覧会らしい。
「一週間前からやっていてそこで騎士の武器とかを見てインスピレーションを高めたいんです。もしお暇ならお二人もどうでしょうか?」
「場所は……あの博物館ね」
小西は俺と神崎を誘ってきた。
小西は自分のインスピレーションを高めるともに俺たちとの親睦も深めたいという気持ちがあるようだ。
しかし、俺たちにはグレンの仲間を探すという目的もある。
小西の誘いとグレンの仲間探し……。
果たしてどちらに行けばいいんだ……。
俺がどちらに行くかとどうか悩んでいると……。
『あぁ、行く』
「えっ?」
突然、俺の鞄から俺の声が聞こえてきた。
「そうですか! 嬉しいです! それじゃ僕は先に玄関まで行ってますね!」
「あぁ、おい……」
小西は嬉しそうに屋上を出ていった。
「グレン、お前の仕業だろ?」
鞄の中からスマホに取り出しグレンに尋ねた。
さっきの出来事を客観的に作った張本人とは話したくないが今はそんな事も言ってられない。
『あぁ、そうだよ。録音していたヨウタの声を流したんだ』
いつの間に録音していたんだよ。
たまにだけどこのドラゴン怖いよ……。
『ヨウタ、それよりこれを見てくれ』
グレンはそう言うと情報サイト「愚痴るんです」の記事が表示される。
そこに書かれていた記事は夜中に彷徨う巨大な鎧の事だった。
「この記事がどうしたんだ?」
『この記事が書いてある場所を見てくれ』
「ん……? これは……」
この記事に書かれていた場所はこれから小西と行く博物館だった。




