告白 前編
「俺は何してるんだ……」
放課後、俺は神崎の後をつけていた。
周りの人たちには相当怪しまれていたが俺にはそんな事を気にしてる余裕も無かった。
神崎が屋上のドアを開けて閉めるのを見た後俺は屋上のドアを少しだけ開けて隙間を作る。
そして、その隙間を見ようとした瞬間俺は正気に戻り今に至る。
『ヨウタ、やはり気になるんだな』
鞄の中からグレンの声が聞こえてきた。
グレンの言葉を聞いた俺は反論できずに居た。
何せここに居るという事は少なからず気になるという事だからいくら反論しても説得力が無い。
『それよりここまで来たら見せてくれ。どうなっているのかを……』
俺は鞄の中から渋々スマホを取り出しドアの隙間の所へ持っていく。
『あっ、あの男子生徒もう来てるな』
「何ぃ!?」
俺はグレンの言葉を聞いて思わずドアの隙間から屋上を見る。
すると神崎とあの男子生徒が居た。
『ここからじゃ何を話しているんだが分からないな』
「だな」
『お二人とも、何をやられているんですか?』
「えっ? エメラ?」
俺がスマホ画面を見るとエメラがグレンと一緒に居た。
「なんでエメラが俺のスマホに居るんだ?」
『私は美鈴に気を利かせて陽太様のスマホに来たんです。恐らくあの子は美鈴に好意があって告白するんじゃないかと思ったので』
「そうなんだ」
流石風の名を持つ不死鳥だけに空気が読めるな。
隣に居る野次馬ドラゴンは爆発の名を持つだけに早く見たくてしょうがないと気持ちが押さえられないようだが……。
『陽太様、ここは空気を読んで教室で待っていましょう』
『エメラ、ここまで来て見ないのはどうかと思うぞ。それにヨウタがここまで来たって事は気になるんだろ』
『先ほどの陽太様の行動を見ていましたが正気ではなかったです。グレン、また貴方が言われたんじゃないでしょうか?』
流石にグレンの仲間だけあって良く分かっていらっしゃる。
というかさっきまでの俺の行動を見られていたのか……。
恥ずかしすぎる……。
見ていたなら止めてほしかった……。
俺の顔はトマトのように段々と真っ赤になっていった。
『またってなんだよ。俺はただ思っている事を言ったまでだ』
『それがいけないんです。それで傷ついた仲間がどれだけ居るのか貴方は分かっているのですか』
『それだったら君だって仲間内で色々と大変だった』
『私がですが?』
『たまに冗談が通じないから仲間内でどうしたらいいって言われたぞ。俺の本音より大変だったんじゃないのか?』
『何ですって!』
俺の顔が真っ赤になっている間グレンとエメラの言い争いが段々と激しくなっていった。
するとその時だった。
「あの神崎さん!」
屋上であの男子生徒が神崎の名前を叫んだ。
その事に気が付いた俺はすぐにドアの隙間を見る。
「神崎さんに話があるんです!」
『あっ、そろそろ告白かな? ヨウタ見せてくれ!』
『陽太様こんな事は止して教室に戻りましょう!』
手に持っているスマホからグレンたちが何か叫んでいたが俺には何も聞こえなかった。
俺はただあの二人から目が離せずにいた。
「あの……僕……僕……!」
『ヨウタ!』
『陽太様!』
「僕に情報をください! お願いします!」
『えっ?』『はい?』
男子生徒は神崎に土下座をしながらそう叫んだ。
その言葉を聞いた俺たちは状況を把握できなかった。
「って告白じゃないのかよぉ——!」
俺は段々と状況を理解していくと体をぷるぷるさせながらドアを思いっきり開けてそう叫んだ。
「えっ、陽太君……?」
俺に気が付いた神崎たちはこちらを見ていた。
神崎たちが見ている事に気が付いた俺は自分のやった行動を段々と理解していき冷汗が流れる。
そして、俺は後悔し始めながら神崎たちを見ていた。
「……」
「……」
「……」
沈黙が辛い!
辛すぎる!
この状況を作った張本人だけど何とかしてほしい!
もう誰でもいいからこの状況を打破できる状況を教えてくれ!
『ヨウタ……』『陽太様……』
スマホからグレンたちが俺に話しかけてきた。
何かこの状況を打破できる提案があるなら教えてくれ!
『これはない(です)』
グレンたちは提案どころか俺の行動に呆れていた。
それに対しては俺も反論ができなかった。
というかお前ら、さっきまで言い争いしていたのにこうゆう時には息ぴったりだな。
あぁ、勢いって怖いな……。




