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MONSTER UNITED 〜モンスター・ユナイテッド〜  作者: 土竜児
第三章 仲間を追い求める者
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成果と動揺

「今のところ収穫は無しか……」


 休み時間、俺はそう言いながら机でだらけていた。

 神崎がグレンの仲間を一緒に探してくれる事になってから二週間。

 神崎のおすすめ情報サイト『愚痴るんです』の情報を元にグレンの仲間を探した。

 けれど、結果は見ての通り収穫無し。

 俺たちはデマ情報に踊らされ続けて落ち込んでいた。


「陽太君仕方ないよ。こういう事は結構あるんだから」


 俺の目の前に居る神崎がそう言って宥める。


「神崎はよく情報を自分の足で調べに行くけどやっぱりそういうもんなのか?」

「そうだよ。デマ情報の度に気持ちが沈むけどそれでも私は頑張るの」

「神崎は凄いな」

「だけど、デマ情報を流す人も人でやめてほしいけどね。こっちだってお金は有限じゃないっつうの……」

「えっ? 最後何だって?」

「いや、何でもないよ」


 神崎は何かを誤魔化すように笑う。

 俺は神崎の作り笑顔を気にせず鞄の中からスマホを取って見る。


「グレン、お前の方ではどうだ?」

『いや、ネットを探しても駄目だ』


 グレンは残念そうにそう言う。

 この二週間確かにグレンの仲間探しに進展は無かった。

 だが、グレン達の事やあのアプリについては分かった事あった。

 まずグレン達の事で分かった事は二つだ。

 一つ目はネットの中を自由に行き来出来て情報を集められるという事だ。

 ネットを行き来出来るのが判明したのは俺がスマホでネットサーフィンをしていた時だ。

 その時にグレンもついてきてネットの行き来出来て情報を解読できる事が判明した。

 今では俺のスマホを使っていない時にネットの中で仲間の情報を集めている。

 ちなみに俺の使えるデータ量には加算されていないので何かの情報を調べる時はたまにグレンを使っている。

 二つ目はグレン達の覚えの速さだ。

 グレン達の覚えの速さは尋常ではなかった。

 この前まで地球の事は何も分からなかったがネットの中に入って情報を手に入るようになった途端、俺や神崎より地球の情報が詳しくなってしまった。

 エメラ曰くグレンはそこまで覚えがいい方でなかったらしい。

 データの体になってから手に入れた情報を解読する力。

 それが関係しているものだと俺は考えている。

 その力は膨大な情報を手に入れられる。だがしかし、そんな情報量をエメラならともかく昔のグレンの頭じゃこの短期間で覚えられないはずだ。

 これも俺の予想だが解読する力を手に入れたと同時に記憶容量が増え覚える速さもデータを読み取るために速くなったじゃないかと思う。

 そうじゃないと昔のグレンの頭ではデータを解読した瞬間に壊れて一生動けない体になってしまうのは眼に見えている。

 次にあのアプリで分かった事だ。

 あのアプリで分かった事は三つ。

 一つ目は俺とグレンが受けたダメージについてだ。

 あのアプリで融合した後の俺の体は疲れが溜まっていた。

 グレンの方も疲れている様子だった。

 恐らくこれは受けたダメージが疲れとして出ているんだと思う。

 その証拠にこの前の大蛇の戦闘で俺とグレンは物凄いダメージを受けたせいでお互いに二日間ぐらいは疲れが抜けなかったのだ。

 比較対象で神崎とエメラはあの戦闘でダメージを受けたものの少しだけだったお陰か一晩で疲れが無くなっていた。

 二つ目はダウンロードしたモンスターがあのアプリの中から出られない事だ。

 グレンとエメラは自由に行き来できるが他のモンスターはあのアプリの中から出られないらしい。

 グレン曰くあいつらが出ようとすると見えない壁みたいなものが出来て出られないらしい。

 何故グレンとエメラが自由に行き来出来るのかはまだ分からないが俺はこう考えている。

 グレンとエメラはあのアプリでダウンロードされずに直接スマホの中に入ってきたから自由に行き来が出来るんじゃないかと。

 そうじゃないと俺の頭ではもう説明が出来ない。

 最後の三つ目は他のモンスターと融合できる事だ。

 それに関してはこの前の戦闘で実証済みなので説明は省く。

 これからどんなモンスターと融合できるかは分からないがその点については楽しみな所だ。


「エメラは何か分かった事はあった?」

『いえこちらもありませんでした』


 神崎もどうやらエメラに情報を探してもらっていたようだ。


『本当に俺の仲間たちは居るんだろうか?』

「さぁな……」


 俺たちが暗くなっていると……。


「ねぇ、まだ体育館の裏側は封鎖中なの?」

「まだらしいな。しっかし本当にデカい怪物が校庭に現れて裏側に行ったのか?」

「俺は見たぞ! 確かにデカい怪物がいきなり現れたんだ! そして、体育館の裏側に行ったんだ!」

「けど、学校の監視カメラにも映っていなかったんだろ? お前の見違いじゃねぇの?」

「嘘じゃないって! 俺は見たんだって!」

「そんな事どうでもいいから封鎖を解いてくればいいのに。私、あそこお気に入りの場所だったのにな……」


 クラスメイトたちがこの前の大蛇の件について騒いでいた。


「まだ騒いでるね……」

「そうだな……」


 俺と神崎はクラスメイトたちを横目で見ていた。

 大蛇が現れてから一晩経つと学校中がその噂で持ち切りになった。

 あの件は「愚痴るんです」でも書かれていて警察沙汰にもなった。

 警察が事情徴収と忠告をした後、先生たちと事務員の人たちはしばらく体育館の裏側を封鎖する事にした。

 だがあの件で不可解な事がある。

 それはさっきクラスメイトの誰かが言っていた監視カメラの事だ。

 俺たちの学校には監視カメラが付いていて事務員の人がその映像を見て管理している。

 監視カメラが映している場所は主に人があまり近づかない場所だ。ちなみに屋上には設置が困難という事で監視カメラは無い。

 その監視カメラは体育館の裏側にもあったらしく先生たちは映像を見た。

 だが、その映像の中に映っていたのはいつも通りの風景だった。

 あの大蛇だけではなく俺たちの姿も映っていなかったらしい。

 先生たちが何度も見直すがやはり映っているのはいつも通りの体育館の裏側だった。

 先生たちはこれ以上の混乱を避けるために生徒たちには内緒にしていたがこっそり先生たちの話を聞いていた生徒が監視カメラの映像の事を他の生徒たちに広めてしまった。

 そのせいで今はさっきのクラスメイトたちのように大蛇を見た人達はあまり信用されない状態になっている。


『しかし、誰が監視カメラの映像に細工したんでしょう? そのお陰で私たちは助かりましたけど……』

『そんなの決まっている。ヨウタやミスズにあのアプリを渡した人物だ。このぐらい事だったらあの凄腕ハッカーなら出来るはずだ』

「確かにそうだな」

「美鈴、お客さんだよ!」


 あのアプリを渡した奴の事が話していると教室の戸付近に居た女子生徒が神崎に呼んでいた。


「お客さん?」


 神崎は不思議そうに教室の戸へと行く。

 すると小柄な男子生徒がそこに居た。


『ん? ヨウタ、あの男子生徒何処かで見たような……?』

「えっ?」


 俺は今神崎と話している男子生徒を見る。

 確かに何処かで見たような気がするが何処だっけ……?


『あの男子生徒、まさかミスズに告白する気なのか?』

「はぁ!?」


 グレンの予想外の言葉に俺は驚きを隠せなかった。

 いきなり何を言い出すんだこのドラゴンは……。


『あの男子生徒、ミスズと話す度に顔を赤らめたり下を向いたりしているから少なくてもミスズに好意はあるんじゃないか』


 俺は神崎と男子生徒の方をまじまじと見る。

 確かに神崎と話す度に顔を赤らめたり下を向いたりしている。


『ヨウタ、このままだとミスズが取られてしまうぞ』

「はぁ!? おまっなに言ってんの!?」


 またグレンの予想外の言葉に俺はさらに動揺してしまう。


『ミスズが取られてもいいのか?』

「いやいやまだ付き合ってないし!?」

「ねぇ、何の話しているの?」

「えっ? わぁ!? 神崎!?」


 神崎はいつの間にか俺の所に帰ってきた。


「どうしたの? そんなに動揺して?」


 神崎は俺の動揺している姿を不思議そうに見ていた。


『実はヨウタとミスズの関係について——』

「何でもない! 何でもないから!」

「?」


 グレンはさっきまで話していた事を言おうとしたが俺はそれを必死に遮る。


「所であの男子生徒と何を話していたんだ?」

「えっ? えっとね……」

「うんうん」

「放課後、屋上で話したい事があるから一人で来てくださいって言われたの」


 神崎の言葉で聞いた俺は一瞬、固まる。

 そして……。


「えええええぇぇぇ——!?」


 今日一番の驚きの叫び声が教室中に響いた。


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