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2章 - 02

城内に入ってしまえば、あとは簡単であった。

壁や柱があれば警備の死角はいくらでもある。音を聞けばどこに何人いるか把握できる。移動範囲は限定されるので動きも予測しやすい。

複数人いようと私に勝てる人間はここにはいない。さらに不意打ちなのだ、逃げるどことか気づくこともできまい。


私はなんなくシロエの寝室の前まで辿り着いた。

心臓を握った状態での尋問とは言え、こうも素直にしゃべるとは。ここの警備兵の不甲斐なさに軽くため息が出た。もし、奴らが魔王軍の兵なら一ヶ月持たないだろう。


私は扉に手を当て、中の様子を探る。物音ひとつしない。

眠っているのだろうと考えてすぐに違和感を感じる。寝息もしない?

私は音を立てぬように魔法で扉をはずし、中に入った。


心臓の鼓動が聞こえない。生物の熱も感じない。

どういうことだ?まさか、逃げられたのか?

私の中で焦りが増幅されていく。特別な魔力を持っているとはいえ、ただの人間と甘く見ていたのか?


落ち着け、探すのだ。

優秀な部下達が騒ぎにならぬように動いてくれている。時間にはまだ余裕があるはずだ。

私は思考を巡らせた。いつの間にか、クセで親指の付け根を噛んでいる。


普通に部屋を出たならすれ違うはず。もしくは警備兵に部屋へ戻されるはずだ。

ならばと、大きなカーテンを開けてベランダ出る。

ぐるりと見渡すと、てすりの端にロープが結んである。

下を覗くと、それは渡り廊下の屋根上へと垂れ下がっていた。


「小癪な…」


苛立ちのあまり、二の腕に爪を立ててしまう。

だが、失敗はできないと自分に言い聞かせ、ゆっくりと息を吐いて落ち着ける。


渡り廊下の屋根に下りると、そのまま真っ直ぐに進んだ。

ただの人間には屋根上は危険な所だ。通る道は限られているはず。

そして、二度目の消灯までは寝室にいたと仮定すれば、まだ遠くに行っていない…はずだ。

はやる気持ちを抑えつつ、私はシロエを追跡した。


程なくして、花園を見下ろせる所に辿り着く。

ここで行き止まりか。ということはここで下りたのか?

花園周辺を全力で観察する。


そこに、白い寝巻を翻しながら走る女の姿があった。

嬉しさと怒りが入り混じった感情が沸き立つ。

獲物を前にして牙が伸び、爪が尖っていくのを感じる。


「見つけだぞ」


私は、シロエの目の前へ一直線に飛んだ。

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