表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/52

8章 - 04

溶岩が冷えて固まるまで耐えた私は、障壁魔法を解除するとすぐに岩石魔法を詠唱して、私を閉じ込めている岩を砕き跳ね飛ばした。

外と繋がったことを確認できると、私は喉が鳴るほど大きく息を吸った。

岩に密閉された上、高温に熱せられた空気は吸うことができず、危うく酸欠で意識を失うところであった。


「げほっ…げほっ」


肺に酸素が入ると、今度は咳き込んだ。

足に踏ん張りがきかずに少しよろめく。それほど消耗してしまったようだ。

だが休んでいる暇は無い、すぐに動かないと次の攻撃が来る。


私はシロエがいる方を注意しながら、固まった溶岩の上へ跳んだ。

着地と同時に身構えるが、攻撃は無かった。


シロエはただ立っていた。肩で息をしていて、向こうもつらそうである。

しかも、リング状の赤い魔方陣は消えていた。

後から出てきた方なので、もう私の魔法は使えないとみた。


だいぶやられたが、まだ勝機はある。

シフォン二つを維持できなくなったとあれば、もう一つが消えるのもすぐに違いない。

ならばシロエの時間切れに狙いを絞る。

魔力を大量に消費しているとはいえ、シロエはまだ無傷。さらに、私はだいぶダメージを負わされてしまった。無理に攻める必要はない。


「やっぱり、死なないどころか、これではまだ倒せないか」


シロエはつらそうな顔で笑ってみせる。


「あたりまえだ。お前のような小娘にやられるようでは四天王になどなれん」


私はできるだけ気丈に振る舞い、ダメージが軽かったていを装う。

シロエにはこれからできる限り警戒してもらう。


「そうですよね。私なんかが簡単に勝てるわけないですよね…」

「それに、見たところ限界が近いんじゃないか?赤いシフォンはどうした?」

「時間切れみたいです。人間が魔族にシフォンを使うのは、思っていた以上に消費が激しかったみたいです」

「なるほど。では、今度はこっちが本気を出させてもらおうかな」


私は大きく詠唱の態勢をとった。

それに合わせて、シロエも戦闘態勢に戻る。


「私もまだやれますよ。あなたを倒して一言いってやってから、絶対に仲間のところへ行きます」

「ほざけ…」


悔しいが、下位四天王を含めても強者揃いだ。私よりも先に一人始末している奴がいるかもしれないぞ。


そう思ってシロエを嘲笑った時、私はセブンのことを考えた。

あいつも強い。たしかに特出した武器は無いが、その分手数を持たせたつもりだ。勇者にだってそう易々と負けはしないはず。

しかし、勇者一行が来る前のやり取りが頭を過る。


いや、あいつは魔王軍下位四天王だ。私が気にかけることなど、なにも…。


いつの間にか、戦闘の音が増えている。

シロエは話がしたいとか言っていたが、結局はどこも戦い始めているようだ。

当然だ。今更人間の話なぞ聞く意味も無い。だから…。


そうこう考えている内に、シロエは氷の矢と電撃を放ってきた。

我に返った私はそれを躱すと、火球を作って応戦する。


目の前の敵以外のことに気を取られている場合では無い。

私は精神統一して三重詠唱をする。

シロエが唱えていた魔法をすべて相殺して、一気に畳み掛けた。


そうだ。私だって上位四天王の一人。

小娘に勝ててあたりまえだ。なのに手こずった挙句、相手の自滅での勝利では威厳にかかわる。

だから…。

ここでケリを着けてやる。私はそう結論を出した。

そうしたら、セブンの様子でも見に行ってやるか。


私は詠唱のピッチを早まる。

シロエもそれについてきているが、いつ崩れてもおかしくない感じだ。

このままいけば押し切れる。


シロエの詠唱が遅れたことに気が付いた私は、シロエの詠唱中の魔法をすべて相殺すると、超上級魔法の魔方陣を描いた。


「これで最後だ!シロエ」


シロエの表情に絶望が見え始めた。

勝った。

私はそう思った。


しかし、魔方陣完成目前で突然ものすごい脱力感に襲われる。


「…なっ?」


詠唱が止まってしまった魔方陣は、形を維持できなくなり崩れるように消えていった。

その様子を混乱したまま見届けてしまった私は、ようやく魔力切れを起こしていることに気が付いた。


「なぜだ!?まだ魔力は残っていたはず、何が起こった?」


私はシロエを睨み付けた。


「はぁ…はぁ…、なんとか間に合ったみたいですね。時間稼ぎをされていたら、危なかった…」


シロエはそう言うと、地面に向かって手をかざした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ