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7章 - 02

四天王の会合の数十分前。

私は魔法演習場を独占していた。


もう戦うことなど無いと錯覚させるほど、この11か月は平和そのものであった。

しかし、勇者は行方不明になっただけで、死んでいるとは限らない。

いや、死んでいないだろう。

近い内に、かならず本当に最後の戦いがある。


傷は癒えた。今度はこのなまった体をほぐさなければならない。

そう考え、いつも鍛錬をしていた場所に足を運んだ。


そうすると、ひよっこ共がうじゃうじゃしていた。

私の場所など、いつの間にかなくなってしまっていたのだ。

私に気が付いて、すぐに場所を明け渡したのはよかったが、まるで見世物のように視線が集まってきた。

すぐに鬱陶しくなった私は全員追い出して、ようやく一人集中できるようになった。

四天王権限をこんな風に使ったのは初めてだ。


あのやかましかった一帯が、今は耳鳴りが聞こえそうなほど静かになっている。


私は習得している魔法を一から確認していった。

ゆっくりと詠唱し、丁寧に魔方陣を描く。

その過程で流れる魔力を感じ取り、雑になっている部分がないか探る。

完成したら、発動前に取り消す。

そして次の魔法に取り掛かる。


最初は誰でも使える簡単な魔法から始まり、次第に難易度を上げていく。

上位魔法にもなると、詠唱の段階から辺りに影響を与え始める。

ここまでくると魔力だけでなく体力にも負担がかかる。

一つ終える度に一息つくようになっていた。やはり少しなまっている。

弱小種族だからこそ、今まで他の魔族の何倍も鍛錬してきた私が数か月何もしなかったのだ。

歯がゆいが、当然の結果なのだろう。


最後に三重詠唱を確認して、できなくなっているものがないことがわかり、胸をなでおろした。


11か月前のハイネとの死闘。

とても人間とは思えない強敵であった。

義手になってしまったが、こうしていられるのは運がよかったのだと今は思う。


思えば、あいつは年老いた女だったな。

そんな者があんな重要な場面を単独で任されるとは、実力は最高位だろうが、それだけであのような采配になるのだろうか?

私も重要な立ち位置ではあったが、私がダメでも本陣がまだある。

向こうもそうだったのか?


それがシロエか?

伝説の三大魔法の一つ『バーム』。あれもたしかに脅威であった。

今思えば、私がこの種族であったことが奇跡であったとさえ思える。

でも、だからと言って、あの女二人で十分という結論になるだろうか?


人間の女は、魔族とは違うのか?


そんなことを考えてしまい、すぐに拭い去った。

どこの誰がどうだとかが気になるとは、ハイネにやられすぎて気が弱くなってしまったのか。


ふと時間を確認すると、会合の時間が迫っていた。

私は一度自分の部屋に戻るため、会合場所とは逆へ歩いていく。


歩きながら、会合について考えていたはずが、気付くとシロエのことを考えていた。

あいつは、すべてを持って生まれ、すべてに愛されて育ち、すべてが思いのまま。

そんな憎たらしい奴だと思っていた。いや、今でもそれは変わらないが。

奴には奴の戦いがあったのかもしれない。

あいつの最後の頭突きには、そう思う何かがあった気がしなくもない。

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