表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/52

7章 - 01

あの決戦から11か月。


私の作戦成功に気が付いたファーストリアは、しばらくして全軍を撤退させた。

その後すぐに人間たちは法律の樹の対処に全力を尽くしているようだが、延命処置で精いっぱいのようだ。

戦力も消耗し切っている上に、あれから勇者達の行方がわからないらしい。

人間達にとっては、暗黒の時代に入ったと言える。


一方、魔界は活気に満ち溢れた。

今までと違い、侵略戦争に本来の力が出せるようになった。逆に人間達は意気消沈しており、あっさりと撤退することも少なくない。

魔界の領土は瞬く間に広がっていった。


入軍希望者もあとを絶たず、戦闘に向いていない種族はもちろん、どの種族にも女が混ざるようになっていた。

今のところ、そのすべてを受け入れている状態である。

戦闘があれば、物資の補給や治療が必要になる。

侵略できれば、拠点の設置などの整備が必要になる。

拠点ができて魔族が増えれば、その土地ならではのルールが必要になる。

その土地から戦闘がなくなれば、街を作るための知恵と技術が必要になる。

そして、次の侵略へと進む。

たとえ戦うことができなくても、誰にでも活躍の場が存在した。


四天王を中心に上位魔族はその指揮に追われた。

私が任されたのは主に後方支援であった。

サードナーやセカンドムのような一点特化型に対して、私は比較的オールラウンダーである。

さらに、後方支援にはやはり力の弱い者が集まるので、その者達の心情を汲んでやれるだろうとのことであった。

その者達と一緒にされたようで面白くない部分もあるが、予想はできていたので特に思うところもなく、私の状態を考えても打倒だと言える。


ハイネとの戦闘の傷が深く、癒えるのに時間がかかり、戦闘に出れない状態が続いた。

左腕の治療は間に合わず、義手になってしまった。

セカンドムの作った腕は、まるで本物のようで一切の違和感がないが、定期メンテナンスが必須であった。


私はその治療にあたりながら、部下への指示や、新人の受け入れをこなした。

それ自体は慣れたものだが、部下や新人の反応がこれまでと大きく変わっていた。


四天王になってさえ、私への接し方に戸惑っていた者は多かった。

私よりキャリアのある者や、血の気の多い者ならまだわかるが、私が隊長格の時に入軍した者でさえ、女の私を他の男と同じ扱いでよいのか困惑しているようであった。


しかし、今は何かを期待をされているように感じてならない。

新人達の前に立つ度に、四天王を目の前にする緊張感よりも変な高揚感があった。

法律の樹のことが、軍内だけでなく魔界中に知れ渡ったからだろう。

戦いと縁の無い種族が多く、軍の怖さをわかっていない者だらけだからだろう。

私はどうやら、英雄かなにかに思われているようであった。


それは女だけでなく男も同じであった。

隙を見ては、恐れ多くも私に話しかけてくる者までいる始末。


四天王になる前からいる部下や他の兵も、今までされたこともない報告をわざわざしに来ては、何か一言置いていく。


言ってしまえば、私という存在がようやく認められてきたのだろう。

一握りの力のある者だけが成功できる時代は終わり、法律の樹がなくなった今、誰にでもその権利が与えられるようになった。

そんな中、非力な種族の女が先陣を切って戦い、さらには決戦の一番の功労者ときたものだ。

もしかしたら、自分もあんな風になれるかもしれない。

たとえ妄想に近い夢であっても、今まで自分を諦めていた者が、自分の中に希望を見たかもしれない。

その希望が現実にあることを、私で確認しようとしているのであろう。


迷惑な話だ。私はいつだって私のために生きている。

種族とか性別とか、そんなものは関係無いし、これからも変わらない。


他の男達のように恐れられないのも面白くない。

強さを求めてきた私にとって、これは受け入れ難い。


だが、この時代の変化は多くの者にとって良いことなのだろう。

水は差さないでいてやる。


私には関係の無いことだがな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ