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前世からの使命  作者: ろっく
第3章「記憶」
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002

どんな日も夜はやってくる。


夜は昔から、闇の世界の住人が動き始める時間として恐れられてきた。


今日も夜は来る。




「何もしないからさ、先に寝ててよ。」


小林君が私を促す。何もしないというのは、私には手を出さないという意味だろう。外には出る気がする。


「また人を襲うの……?」


「さあどうだろう。毎日収穫があるわけでもないからね。」


獲物を探しには行くみたいだ。止めなきゃ…。


「じゃあ、お休み。」


首筋に衝撃が走り、ベッドに倒れこむように気を失った。



ヒュー……ヒュー……


「ん……?」


少し冷たい風が吹き抜ける。その風に起こされるように、私は目を覚ました。


「窓が空いてる?こんな夜中に……?」


重いまぶたのせいで半目になっている目が、窓をとらえる。カーテンが風になびいていた。


視線を部屋に移すと、ある違和感を覚えた。


「あれ、小林君は……。」


ここでようやく、小林君が夜中に部屋を抜け出していたことに気付いた。慌てて窓を覗くが、姿は見えない。


気落ちしてぼーっと窓の外を見つめる。暗闇に目が慣れてきたけれど、人の姿は相変わらず見えない。


視線を部屋に戻し、窓を背にして座る。


「はぁ……。」


自然とため息も出る。


ザク……ザク……


耳に、誰かの足音が聞こえた。「よいしょ。」という声も聞こえてくる。


再び窓の外を覗く。誰かが左の方へ歩いて行くのが見えた。声からすると、小林君かもしれない。


ドアには結界が張ってある。脱出出来る場所は窓しかない。


「飛ばなきゃ……!」


意を決して窓から飛ぶ。ぴょんと飛び降りる感じだ。


バチンッ!


地面に着地と同時に足に衝撃が走り、その場に崩れる。怪我はしていない。成功。


いつから私の体は丈夫になってしまったのだろう。


そんな疑問を持ちつつ、足音を立てないように後を追う。


少しずつ近づくにつれ、人影がハッキリしてきた。やっぱり小林君だ。胸に誰かを抱えている。


あの時もそうだった。綺麗な何かを奪った後、人を抱えて飛んでいった。今夜、その行き先が分かるのかもしれない。


家が沢山あるところから外れ、田舎の方にきた。街灯もかなり少ない。


ふと彼の姿が消えた。慌てて彼が居たところへ駆け寄ると、大きな岩の向こうに洞穴みたいな場所があった。きっとそこだろう。


洞穴は音が響きやすい。慎重に中へ入る。中は松明で明るくなっていて、中が一望出来た。


それは異様な光景だった。人が、沢山並べられている。座った状態のままで、ただ日田すら壁際に並べられていた。その中の一人に、この前襲われていた人もいた。


左端の方に小林君がいる。抱えていた人を抱えている。下ろし、同じように座らせる。


「ひゃっ……!」


急に冷たい風が吹き抜け、思わず声が出てしまった。当然、


「星空さん!?何でいるの?」


小林君にばれる。


「いや、あのぉ……。」


「取り合えず入って。」


促されるままに入る。目に入るのはやはり人。でもそれ以外にも。


「写真……? 」


写真の様な絵画の様なものが1枚、壁に飾られていた。男の人と女の人が写っている。


「驚いたよね。人がいっぱいいるし。」


「うん……。」


それ以外にも驚いたことがある。写真の男の人が、小林君に似ているのだ。顔のパーツとか少し違うところもあるが、確かに似てる。女の人は擦れてて見えない。


「あと、この写真……。」


「あぁ、これね。」


小林君は、写真を見つめたきり黙ってしまった。


「僕に似てるとか、思ったでしょ?」


図星だ。


「教えてほしい?」


「え……?」


「星空さんにならいいかな。」


「この写真に写っているのは、僕だよ。」


「え、でも何か雰囲気とか違うし……。」


よく見ると、小林君が着るとは思えない様な服を着ている。背景も、この辺では見ない景色だ。


「まあ、細かく言うと僕じゃないんだけどね。」


何それ、分からないよ。もっと教えて…!


「これは僕の前世の写真だ。」


「ゼンセ……?」


「そう、前世。」


「星空さんも、そろそろ思い出すと思うよ。」


「思い出すって、前世のこと?」


あれ、人間って前世の記憶を無くして生まれ変わるんじゃなかったっけ。ていうか、死んだら幽霊になるとかじゃないの?


「そう、思い出す。僕も数年前に記憶が甦ったよ。」


「結構前なんだね。」


前世のことを思い出すってどんな感じなんだろう……。想像もつかない。少し怖い。


「僕は前世の記憶が戻り、ある使命を思い出した。」


「僕は、星を復活させる。」


星を…復活?私の頭はもうすでに彼の言葉に追い付いていない。


「まだ分かってなさそうな顔だね。まあ、記憶が戻ってから理解してくれたらいいよ。まだ君を襲わないから。」


「まだって……。」


「僕は星を復活させるために、クリスタルハートを奪ってる。君を襲ったのも、これを奪うためだよ。」


思わず後退りをした。襲わないと聞いたけれど、あの男の人の様になるのは怖かった。


それにしても、あの謎の光を放つあれは、クリスタルハートってやつだったのか。


「で、そのクリスタルハートを私達が今独り占めしようとしている。」


「「!?」」


どこからか男の声がした。小林君じゃないし、もちろん私でもない。















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