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「よいしょっと。」
地面でへこたれている星空さんを抱っこして持ち上げる。
奇声の1つ上げるかと思っていけれど驚いて声が出ないみたいだ。ならばと一言付け加える。
「お持ち帰りするね。」
耳元でつぶやくように言うと、返事を待たずに空へ飛び立った。
「……え!?ちょっと放してよ!」
しばらく固まっていた体が激しく動き出した。大人しい子だという印象だったんだけれど。まあ、この状況じゃ抵抗しない方が不自然か。
「星空さんには何もしないからさ。」
これは本音だ。今は彼女に危害を加えようという気はない。まあ、信じてくれないだろうけど。
「い、家に帰るーー!!」
反抗の仕方が意外と可愛かったのでしばらく放置していたが、そろそろ相手が面倒になった。行く先を見られても困るし。
時々欠伸をしているところを見ると眠いのだろう。ならばと星空さんの体をゆっくり揺すってあげる。
Zzz……
やはり効果があったようだ。気絶させるよりこっちの方が気分が良い。
「……。」
少し星空さんの顔を見ていた。見とれていたわけではない。少し考え事をしていただけだ。
今なら、星空さんを襲って楽に奪うことが出来るなぁ、と。
でも何もしないと決めたから、やらない。本当はやった方がいいのかも知れないが……。
「まだ……大丈夫。」
決意固めて、飛ぶスピードを速めた。