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前世からの使命  作者: ろっく
第2章「非日常の侵略」
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003

「うっ……うぅ……。」


夜。ベッドにうつ伏せになっている。さっきから涙が止まらない。理由は分からない。いや、本当は分かっている。今までに起きた非日常な出来事が、今更ながら怖いくなってきたのだ。


「小林君のバカ……。」


怖い思いをさせたのは小林君なのに、その怖さを癒してくれるのは、笑顔の小林君だった。


「星空さん、元気?」


「え!?あ、は、はいっ!」


頭の中でぐるぐる回ってた人物の声が突然聞こえてくる。当然驚いた。


「な、何?」


いないとは分かっていても、慌てて涙を拭う。


「いや、近くにいるからなんとなく。」


ベッドから降りて窓を開けても姿は見えない。


「どこ?」


「言えない。邪魔されたら困るから。」


今から何かするのだろうか。そんな気がする。でも私には止められない。小林君みたいな能力も持ってないし、なにより怖い。


「邪魔しないでね?……あ、切る。」


テレパシーは打ち切られてしまった。


……何かが始まる。そう確信したけれど、やはり窓からは何も見えない。


邪魔してほしくないなら言わなきゃいいのに。それをわざわざ伝えにくるなんて……。


「本当は嫌なんじゃないの……?」


テレパシーは返ってこない。


止めなきゃって思った。いや、そんな責任感よりもむしろ、止めたいという願望の方が近い気がする。


さっきよりも目を凝らして窓の外を覗く。すると、そう遠くない屋根の上に、人がいるのが見えた。


……小林君じゃない。


暗くてよく見えないけれど、小林君じゃない。勘がそう言っている。


そこに右から、もう一人の人物が姿を現した。


「小林君……。」


彼はその見知らぬ人に、昨日私にしたみたいに光線を放つ。攻撃が当たったのか、その人は右から左へと移動した。


見ていられなかった。学校では明るくムードメーカー的存在の小林君は、そこにはいない。


突然、辺りが明るくなった。さっきの光線をより明るく、大きい。


「……駄目っ!」


反射的に体が動いた。こんな時はろくなことがない。最近学習したが、私はピンチになると、無意識に体が動いてしまうらしい。


私の体は昨日のように窓から投げ出され……


飛んだ。


今度は落ちない。でも、止まれない。そのまま襲われてた人の方へ飛んでいく。


「わわわっ……助けてええええ。」


「星空さん!?」


そのままその人にぶつかる。ゴンッという鈍い音がした。


「いったぁ……。ご、ごめんなさ━━━。」


グラ……。


「え、ちょちょちょ……うひゃあああ。」


ぶつかった勢いで、二人同時に屋根を転がり落ちる。


「邪魔するなと言ったのに……。」


そんな声が聞こえた気がするけれど、それどころじゃない。襲われてた人になかば抱きつきながら転がっている。


ゴロゴロゴロゴロ……ガクッ…


体は屋根から完全に滑り落ち、地面に衝突した。


「助かったぁ……。」


屋根から転がり落ちたのに、先程より痛くない。気づいたら、襲われてた人の上に乗っかっていた。その人は男の人だった。多分、もう大人だろう。


「あの……?」


「あ、す、すいません!!痛かったですよね、大丈夫ですか……?」


「いえ、あ、はい、大丈夫です。それより……。」


「あなたは何者ですか?」


「え……。」


誰ですかではなく、何者ですかと聞いた。確かに、急に空からやってきて乗っかってきたのだ。ふつうの人ではあり得ない。


もちろん人間だ。でも、人間ですという答えは求めていないだろう。でも、テレパシーが使えることを言っても、あまり意味はない気がする。


「星空さんは、僕の敵だよ。」


小林君が近づいてきてそう言い放った。その言葉が胸に刺さる。


「敵ということは、僕と同じ……?」


男の人は困惑している様子。それは私も変わらない。同じって、何?


「そう、同じだよ。多分。とりあえず……。」


小林君の手が私にした伸びる。胸ぐらを捕まれ一瞬にして体が持ち上がる。そのまま、軽く投げ飛ばされてしまった。


「……!!」


背中を地面に打ち付ける。かなり痛い。体を動かすことが出来なかった。


「あ……あああ……。」


男の人の声が聞こえる。恐怖のせいか、声が震えていた。


いつの間か暗くなっていた辺りが、また明るくなった。小林君の手から放たれている光は、彼と男の人をはっきりと照らし出す。


その光は男の人へ吸い込まれるように移動する。


ズドーーン!!


寝ている人が起きてしまうんじゃないかと思うほど大きな音がした。辺りはまた暗くなる。


ふいに、先程とは違う明かりが差した。それは倒れている男の人からのようだ。その光は、段々と男の人から離れ、小林君の方へ向かっていく。


それは……何か水晶の様なものだった。それを小林君はポケットにしまう。彼の狙いはあれだったのかもしれない。


そして男の人を持ち上げ、どこかへ飛び去ってしまった。


私はこの出来事を、ただ呆然と眺めていることしか出来なかった。それが終わった後も動けない。痛みもあったが、精神的な疲れのようなものも大きいような気がする。


「よいしょっと。」


後ろで声がするのと同時に、私の体が宙に浮く。


「お持ち帰るするね。」


小林君の声が、耳元で聞こえた。





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