002
相手は樹を上手くかわして走る。ってかこの公園、以外と広い……。
さっきから胸騒ぎが収まらない。何故か分からないけれど、視線の主が誰なのか、気になる。
しばらくはしっていると、ただ追いかけるだけじゃ追い付けないことに気づいた。相手はかなり走るのが速い。
諦めきれない。色々近道をしてみたりと追い付くように頑張ってみたけれど、逆に距離はどんどん離れていく。私は元々運動が得意な方ではない。
そしてとうとう見失ってしまった。しかも自分が何処にいるのか分からない。完全に迷子だ。
「うそ……。どうしよう。」
取り合えず出口を探すためにまた走り出す。既にかなり疲れていたが、休憩時間が終わってしまう。
少し走った後、やはり疲れてしまったので歩きに変える。しばらく樹と樹の間を縫うように歩いていく。
ある大きな樹の横を通った時、その樹にもたれている男の人を発見した。
「あっ!!」
思わず叫んでしまった。自分が追いかけていた人かもしれないという理由もあったがもう1つ。彼に見覚えがあるのだ。
「……小林君?」
この言葉で、ぎょっとして彼が振り向く。さっきの私の叫びには何の反応もしなかったのに。
ダッ……。
彼はまた逃げてしまった。今度は追いかけない。そんなことをして、集合時間に遅れてしまっては困ると思った。
小林かなた。それが彼の名前だった。私の隣のクラスで、噂はよく耳に入ってきた。
実は、私の好きな人でもある。話したことは一度もない。挨拶程度ならあるけれど……。
小林君のことを考えながら走り続ける。出口はまだ見つからない。
時間を確認すると、あと5分で集合時間。遅れるのは確実だ。
時計をから目を離して前を見たその時、誰かが目の前に立ちはだかった。
ドンッ……。
「……!?」
その誰かが寄りかかる様に迫ってきて、自然と、樹を背にして立たされている状態になった。顔の右に、人の腕が見える。え、壁ドン……!?
パッと顔を上げると、私の好きな顔があった。小林君だ。
その顔と重なる様に黒い物体が見える。それは、テレビではよく見ても、現実味のないもの。
━━銃。
「……!」
驚きと恐怖で目を見開く。銃口は私を向いていた。
「星空さん……。」
話しかけられたのは今日が初めてだ。でも、ちっとも嬉しくない。
「僕の前で、君は無力だ。」
「え……?」
「君は僕のこんな姿を見た。これから君が僕に対してどんな行動をするか分からない。けれど、君は僕を止められない。」
言っていることが頭に入ってこない。緊張と恐怖で内心パニック状態だからだろう。
「……あれ?」
気づいたら彼は消えていた。集合場所に戻ったのかな?と、至って普通の解答が思い浮かぶ。
現実離れした今日の出来事。変な胸騒ぎは収まらない。
彼は消えて何故銃を持っているのか、何をしようとしていたのか。
……分からない。