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冒険しマス

「い、いやぁ、ワシも長年職員を務めておりやすが、水晶を割られたのは初めてでありやすよ、ハ、ハハ……」

「す、すいません……」


水晶って弁償したほうがいいのだろうか……。

でも俺たちお金無かったな。


「……これほど魔力をお持ちなら、掲示板の依頼より、迷宮に行かれた方がよろしいかもしれやせんね。」

「迷宮、ですか?」


ゲームで良くある、あの迷宮だろうか。

しかし、今は妹もいるしな……。

ん、そういえば、地図ではこの街の北に世界樹があったな。

アレのことか?


「もしかして、この街の北にある世界樹のことですか?」

「おお、ご存知でやしたか! この街から馬車で半日の場所に世界樹があるでやすが、そこは迷宮としても有名なんでやす。」

「……お兄ちゃん、チラッとしか地図見てないのに…」


この街に来るまでは、唯香に案内してもらっていた。

私が開けたんだから、私の地図だ~!!

とかうざいこと言ってたし。

……なんか、こっちに来てからやたらと記憶力が上がった気がするな。


「迷宮って、どんな場所なんですか?」

「ん、妹さん、迷宮っていうのは古代文明の遺産でさぁ。未だに仕組みはよく分かっていないが、迷宮では宝石や宝箱が残されていて、随分稼ぎはいいらしいですぜ。」


ああ、知ってますよ、職員さん。

ってことは、お決まりのあれもいるのかな。


「ただし、迷宮には番人たるモンスターが住んでいて、宝を守っているってわけですな。」

「うええ……モンスター……。」


やっぱりか。

しかしモンスターが宝を守る番人ということは、迷宮の挑戦者は盗賊みたいな扱いにならないか?


「いや、迷宮討伐は政府が推奨しているんでやす。政府も今はわけのわからん古代文明の施設を調査したいみたいでやすよ。」

「ふ~ん……そうなんだぁ……」


まぁ、政府のお墨付きなら大丈夫か。


「それでですね、ソウジ氏。ものは相談なんですが、わっしらガイヤード街役場に、お二人の迷宮討伐をレクチャーさせて下さいやせんか。」


ああ、さっき言っていたな。

優秀な魔術使いに唾をつけときたいってやつか。

さて、どうしよう。


「確認したいことがあるんですが、いいですか?」

「もちろんでやすよ。」

「……では、まず迷宮に挑むことで、命の危険はあるんでしょうか?」

「もちろん迷宮にはモンスターが出やすんで、危険はありやす。ただし、お二人は才能あるとはいえ、まだ迷宮の初チャレンジャーだ。街役場で派遣する教官を付けさせていただきやすよ。」


やはり、命の危険はあるか。

しかし、街役場で教官を付けさせてもらえるのは有難い。


「教官を付けさせていただく間は、お二人の命の安全はほぼ保証させていただきやす。」

「……」


〈ほぼ〉なんだな……。

まぁ、迷宮じゃ何が起こるか分からなそうだしな。


「……分かりました。次に、僕らはお金をまだ持っていないんですが、武器や防具については貸与いただけるんでしょうか?」

「ええ、それはご心配なく。街役場の武器・防具も古いですが貸与できやすし、それにこの街には互助組織がありやすので、当分の間は生活補助が出やすよ。」


おお、お金がもらえるのか!

……しかし、後で知ったことだが、記憶が戻ったら返さなければならないらしい。

当たり前か。


うーん、しばらくの間、教員が付いてもらえるし、命の安全もまぁ保証されている。

俺はぱっと聞く限り、良い条件だと思うが…。

唯香の意見も聞いてみるか。

……ていうか、あいつ、やけに静かだな。


「ふふふ……迷宮、お宝、魔法少女ユイカの華々しいデビュー……」


なんかブツブツと呟いていた。

ていゆか、魔力一般人並だったのに、まだ魔法少女目指してんのかよ!


「ふふふ……あイテッ! もう! 痛いなあ、お兄ちゃん!」

「いつまでも現実に戻ってこないからだ。」


一発頭にコチンとやったら、唯香は目を覚ましたようだ。


(んで、お前も迷宮に行っても大丈夫なのか?)

(あったりまえじゃん! バシバシモンスター倒して、お金持ちになっちゃうよ!)


はあ、なんか緊張感ないなあ。

兄である俺がしっかりしなくちゃ。


---


「こんにちは、ソウジさん、ユイカさん。

お二人の教官を務めさせていただきます、ブラーナと申します……ゴホ。」

「あ、はい。宜しくお願いします。」

「ヨロシクお願いしますー!」


職員の説明を聞いたあと、早速面談となった。

俺たちの教員になってくれるのは、比較的若い男性の人だった。

なんだか、病弱そうに見える。


「あの……お体の具合は大丈夫なんですか?」

「ああ、はい……ゴホ。これは持病みたいなものでして……大丈夫ですよ。」


うーん、本当にこの人が教官で大丈夫なんだろうか?

ちょっと心配になってきたぞ。


「それで……お二人は記憶喪失とのことですが、世界樹には記憶が戻ってから向かわれますか?」


……記憶喪失ってのはウソだからなぁ……。

だますようで申し訳ないけど、記憶が戻るわけがない。

お金も無いし、さっさと稼ぐ手段を見つけないとな。


「いえ……記憶が戻る保証もないですし、何分手持ちがないので、少しでも早く世界樹に行きたいと思います。」

(! お兄ちゃん……お兄ちゃんもそんなに早く冒険に行きたかったの?)


妹よ、俺はお前と違って好奇心で迷宮に行くわけではないぞ。

それに、教官の人が付いてくれるならそこまでの危険はないだろうしな。


「そうですか……それでは、本日はもう日が暮れますので、武器・防具の貸与くらいにして明日世界樹へ向かいましょうか。

もちろん、本日の宿も役場のほうで手配させていただきますよ。」


……なんだか、至れり尽せりだな。

ちょっと親切すぎて、逆に裏があるんじゃないかと疑ってしまう。


「いえいえ、こちらとしても、最近は迷宮に挑む方も少なくて困っていたのですよ。

……お二人は才能がお有りとお聞きしましたので、こちらからお願いしたいくらいなのです。」


そうなのか。

それならばお言葉に甘えることにしよう。


---


翌日、朝早くに俺と唯香、それにブラーナさんは馬車で迷宮へと出発した。


「うわぁ……馬車なんて初めて乗ったよ~。なんだか貴族みたい!」

「はしゃぐな、妹よ。……すみません、うるさくしてしまって。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。

それに、元気があるってことは体力があるってことですからね……羨ましいです……ゴホッ。」


おい、あんた、本当に大丈夫なのか……。

……出発前に、ちょっと気になって街役場の職員に聞いてみた。

ブラーナさんはあれで結構な魔術使いらしい。


「ああ、はい……もうすぐ世界樹に着きますね……ゴホ。」

「!! お兄ちゃん、あれ見てあれ見て!! すっごーーい!!」

「……! ああ、本当に凄いな……」


馬車から見えたのは、空に届くかという巨大な大樹だった。

なんでも、この地方でもこのサイズの世界樹はここだけらしい。


「はい、じゃあ着きましたら迷宮のレクチャーをさせていただきますね。」

「! ヨロシクお願いします!」

「宜しくお願いします。」


……なんだか、世界樹を見てたらちょっとテンションが上がってきたぞ。

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