表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

神様マス

「ん……」

「ソウジ? 気がついた?」


俺はまぶたを開く。

アカリに膝枕をされている体勢だった。


「ッツ! いてて!!」

「あ! 無理に起きようとしないで!

 そのままでいいから!」


体を起こそうとすると激痛が走る。

……おとなしく、この体制でいさせてもらうとしよう。


「……アカリ、タクヤは……?」

「……うん、大丈夫。

 生きているみたいだよ。」


辺りを見渡すと、タクヤが確かにそこに倒れていた。


「それにしても、ここ、どこだかわかる……?」

「いや……」


俺たちは、辺り一面真っ白な空間にいた。

アカリに聞くと、最後の攻撃のあと、虹色の光で埋め尽くされた。

そして、光が消えるとこの場所に立っていたらしい。


【全く、無茶なことをするねぇ……】


「!! 誰だ!!!」


白い空間で、突然誰かの声が響く。

少年とも少女ともつかない声だ。


【ぼく? ぼくはこの世界の神さ。】


神様を名乗るやつ。

しかし、相変わらず姿は見えない。


「おい、神様でもなんでもいいが、姿を見せるのが礼儀じゃないか?」

「ソウジ……」


神様でも物怖じしないアカリが少し呆れている様子だ。

しかし、俺は変わらず追求を続ける。


【仕方ないねぇ……よっと……】


俺たちの目の前の空間に光が集まりだした。

すると、それは人の形を作る。


「なんだか、作り物めいた姿だねぇ……」


アカリがそう呟く。

現れたのは10代くらいの少女の姿だった。

たしかに、無機質な表情を作り物めいている。


「失礼だねぇ……君たちの要望に応えたというのに。」


神様?がため息をつく。


「それで……もしかしなくても、俺たちをここに連れてきたのは、お前なのか?」

「うん、そうだよぉ。」

「……」


神様が軽い。

こんなのがが神様でいいのか?


「君たちの世界から、ぼくの世界に連れてきたのは、確かにぼくのちからだ。」

「何で、そんなことをしたの……?」


アカリが震えながら、神様に問いかける。


「そりゃあ、もちろん、魔王を倒してもらうために決まってるさ。」

「……魔王……?」


ていうとアレか、俺たちは勇者召喚でもされてたってわけか。


「うん、そうだよぉ……。

 もっとも、勇者候補はそこに倒れている彼で、他の人はそのおまけのつもりだったけど。」

「……タクヤが……?」


しかし、タクヤはこの世界に来て早々に……


「うん、そう。

 だから、君たちには申し訳なく思ってるよ。

 召喚の途中で魔王側に阻止されちゃったからね……」

「……」


魔王側の妨害。

それによって、俺たちは何の説明もなく、転移されたそうだ。


「……おい、まさか今更、タクヤに魔王を討伐させるとかじゃないよな……!」


……今のタイミングで出てきたというのは、どういうことだ。


「うううん……もう、彼は残念だけど……無理かなぁ。

 人を殺しすぎちゃったからねぇ。

 さすがに、もう勇者の資格はないよ。

 ……無限の力とスタミナを持つ勇者って、いいと思ったんだけどなぁ……」


神様がやたら残念そうな表情を見せる。


「このタイミングで出てきたのは、元勇者である彼の心の霧が晴れたから。

 君、凄いことしてたよねぇ……そのおかげだよ。」


……俺が何かしたのだろうか。


「……凄いなんてもんじゃないかもなぁ……。

 本来魔術にならないとまとまらない魔力を束ねて、魔術の元で攻撃したんだから。

 いわば、全魔術を行使したともいえる。」


全魔術を行使……


「そうさ。……肉体を強化し、傷を癒し、相手に痛みだけを与える。

 しかも、相手に届く頃には形を失っているから外傷はない。

 回避不可能のフラシーボ効果みないなもん?」


よくわからないが、まぁ、タクヤを殺さずに済んだなら良かったな。


「そうそう……ここで出てきた理由なんだけど……

 君、ソウジ君。

 君が勇者になってくれないかなぁ……と思ってさ。」


なに、勇者…………やりたくないな、それ。


「えええ……ひどいよぉ……!!

 ま、まぁ、具体的には君の子孫になるかもしれないけどね。

 魔王復活はまだ先だし。」


ふーん、そうか……。

でも、俺には関係ないな……。

ユイカを失ったら、俺には生きている理由はない。


「そう、悲観しなくてもいいと思うよぉ……

 彼女の『豪運』を信じてあげなよぉ……」


なに、それじゃあ……


「あ、時間かな。

 ここまでだねぇ……じゃあ、またいつか……」


神様が消え、唐突に白い空間が消える。

いつの間にか、俺たちは廃都に戻っていた。


「な、なんだったんだろ……今の……」

「さぁ……それより、ユイカっ!!」


俺は我に返るとユイカの元に駆け出す。

ユイカの服を脱がすと、あれだけ血が出ていたのに、傷ひとつなかった。


【どれも致命傷からは外れていたからねぇ……これはサービスだよ……】


神様の声がどこからか聞こえた気がした。


---


「ホントに行くのか、ユイカ、タクヤ。」

「うん、お兄ちゃん行ってくるよ。」


あれから数ヵ月。

俺たち4人の傷はすっかり癒えた。

心配していたタクヤについても、精神状態は安定していた。


【彼の記憶を客観的なものに置き換えておいたよぉ……何があったかは覚えているけど、主体的な記憶を客観的に捉えることができる……これなら、日常生活くらいは大丈夫さぁ……】


後日、神様がまた唐突に現れてお告げをくれた。

どうやら、本格的にタクヤではなくオレに乗り移ったらしい。


【大丈夫、大丈夫……これはお詫び……というか、アフターサービスだよぉ……】


なら、なぜ、タクヤが苦しんでいるときに助けなかったんだ、と思った。


【彼は幼く、まだ未熟だったからねぇ……かと思えば、その心はすぐに闇に閉ざされてしまった……ある程度、強い精神と、正義の心がないとぼくは力を使えないのさ。】


……俺にも正義の心とか、ないと思うんだけど……

それについては、神様は答えてくれなかった。


「ソウジ兄さん、本当にすみませんでした……!」


タクヤが頭を下げる。

精神が安定したが、自分のやったことはしっかりと分かっているのだろう。


「それに、アカリ姉さんも……たくさん傷つけてしまって……

 ごめんなさい……。」


今度はアカリの方に向き直って、頭を下げる。


「ううん……いいよ、許す。

 私の方こそ、ごめん。」

「アカリ姉さん……」


二人のわだかまりも溶けたようでよかった。


「じゃあ、アカリお姉ちゃん! お兄ちゃんのことよろしくねっ!!」

「はい、任されましたっ!」


女性陣が固く握手を交わす。

……これから、タクヤが向かう贖罪の旅は長い時間がかかるだろう……。

ユイカはそれに付いていきたいと言い出したときはびっくりした。

アカリも何か言いたそうではあったが、俺の方を見てなぜか考えを変えたようだ。


……なにやら、女子2人の方で妙な約束が交わされているようだ。


「じゃあ、お兄ちゃん、アカリお姉ちゃん!

 元気でね!! たまには遊びにくるよ!!」

「ええ、元気でね、タクヤ君、ユイカちゃん!!」

「……妹よ、達者でな。」


タクヤはこちらに頭をもう一度下げ、出発する。

ユイカはぴょこぴょことそれに付き従う。


「ねぇ……これからどうするの、ソウジ?」

「そうだなぁ……この世界に来た目的もはっきりしたけど……

 でも、魔王復活までまだまだ時間はあるようだし、せっかくだから、この世界を楽しもうかな。」

「そうね……ねぇ、私も一緒に付いて行っていい?」

「…………」


俺は何も言わず、幼なじみの手を取り、家に帰る。

願わくば、旅立った二人が、そして隣にいる幼なじみがいつも笑顔でいることを願って。

以上で第1部終了です。

お読みいただきありがとうございます。

次話以降の参考にさせていただきたいので、感想や評価、ブックマークをいただけると大変助かりますし、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ