転移しマス
毎日更新予定です! 拙い文章ですが宜しくお願いいたします!
「……ここ、どう見ても地球じゃないよねぇ、お兄ちゃん。」
「……ああ、そうだな、妹よ。」
俺と妹は荒野にいた。
辺り一面には何もなく、見渡す限り荒野が広がっている。
「……どうしようっかぁ、お兄ちゃん。」
「……お兄ちゃんにもわからんぞ、妹よ。」
俺たち兄弟は家で某人生ゲームを楽しんでいたはずだ。
それが、いつの間にか見たこともない昆虫や草花のある荒野にいた。
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俺、漱二はどこにでもいる高校生だ。
そして、妹である唯香はとびきり可愛い中学生である。
俺たち兄妹は一時期仲の悪いこともあったが、今では大の仲良しだ。
そんな俺たちは、ある日親戚たちと人生ゲームをしていた。
俺は『知力』にほぼ全てのポイントを振り、妹は『運』にポイントを極振りしていた。
いわゆる遊びプレイをしていたのである。
そんな人生ゲームが終盤に差し掛かり、あと1ターンで終了する時だった。
たしかその時、テレビ画面が急に光りだしたのだ。
……その後のことは憶えていない。
そして、冒頭に戻る。
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「……あ、お兄ちゃん、私ポテチ持ってたよ!食べる?」
「ああ、いただくよ、唯香。」
妹はどこにしまっていたのか、上着からポテトチップスの袋を取り出した。
そして、袋を開けて俺に差し出す。
「はい、お兄ちゃん。あーん。」
「……あーん。」
……正直、俺たち兄妹は仲良くなりすぎた気がする。
まぁ、そんなこんなで腹も少し膨れ、状況判断ができるようになった。
「ん? お兄ちゃん、あれ見て。」
「ん、何だい妹よ。」
唯香が指差した先には、木の箱のようなものが岩陰に隠れていた。
「うーん、どっかで見たことあるな、この形状……。」
「あ! お兄ちゃんアレだよ! ゼ○ダの伝説に出てきてた宝箱!」
唯香は俺がゲームしてる場面をよく見ている。
見ていて何が楽しいんだか。
「ああ、そういえば似ているな。……せっかくだから、ちょっと開けてみろよ、唯香。」
妹は昔から運が強い。
正直、神様に愛されているとしか思えないレベルだ。
これが宝箱だとしても、俺が開けるよりいいものが出てくるだろう。
「え~、何か怖いなぁ……。まぁいっか。
……でゅるでゅるでゅるでゅるでゅる……ごま○れ~!」
「……お前、ホントあのゲーム好きだな。」
有名なニ○ニコ動画某実況の効果音を口ずさみながら、唯香が宝箱を開ける。
さて、何が入っているのやら。
危ないものが入っている可能性もあるから、確認するのは俺の役目だな。
「ん、これは……地図?」
「! やったね、お兄ちゃん! これで冒険の第一歩が踏み出せるよ!」
「……だから何でそんなにお前は陽気なんだ…。」
こいつ、ここがどこだとか、早く帰らないといけないとか思わないんだろうか。
「ん? 何にも心配してないよ。だってお兄ちゃんが一緒だもん!」
「……」
……まぁ、なんていうか兄である俺がしっかりと妹の面倒も見ないとな。
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「おお、デッカイ街だねぇ!! お兄ちゃん!!」
「……ああ、そうだな、妹よ。」
宝箱から手に入れた地図をもとに、俺たちは近くの街に来ていた。
なかなかに広い街のようで、東京の23区くらいはあるかもしれない。
「でも、お兄ちゃん、これは……。」
「……ああ、やっぱりそういう事なんだろうな。」
道行く人の顔を見れば、髪の色が赤、青、緑……。
肌の色も全く違う。
体格なんかは日本人とそう変わらないかもしれないが……。
「はわわ……お兄ちゃん! 一大事だよ! どうやら私達、異世界に来ちゃったみたいだよ!」
「落ち着け、妹よ! はあ、予想はしてたけど、やっぱりか……。」
さて、俺たちがどうしてこんなとこにいるかだ。
おそらくはあの人生ゲーム終盤で突然光り輝いたテレビ画面だろう。
あれが原因に違いない。
……だって、それ以外に思いつかないもの。
「お兄ちゃん、言葉通じるのかな……。私達、どうしよう……。」
「……」
いやいや、そうではない。
今は妹もいるのだ。
どうしてここにいるかではなく、これからどうするかを決めるべきだろう。
「……唯香、まずは俺が試しに話しかけてみる。
お前は少しだけ離れたところで見ててくれ。」
「うん……わかった。」
もし話しかけた人が危ない人だったら、唯香に危険が及ぶ。
まずないとは思うが、ここはおそらく地球ではないのだ。
慎重を期して悪いことはない。
……唯香も、少し不安に思ったのだろうか、素直に俺の言葉に従ってくれた。
どれ……うん、あの桃髪の優しそうな人にしよう。
「あの……すいません。」
「? はい、なんですか?」
よし、日本語が通じるぞ!
それに優しそうなお姉さんに話しかけて正解だったかな。
「ちょっとお尋ねしたいんですけど、ここってどこなんでしょうか?
あ、変な質問をしてすいません!」
回答を焦って直球で聞いてしまった。
変な人だと思われただろうか。
「はい?
……ここはガイアードの街ですけど……」
「あ、はい、そうですよね、アハハ…」
いかん! 完全にお姉さんが胡散臭い目で見出した!
これは誤解を解かねば!
「いやあの、実は、ちょっと記憶喪失になってしまったみたいで……自分がなにもので、どこにいるか分からないんです。」
「……ええ!?」
お姉さんがびっくりした様子を見せている。
「あの、そうだったの……治癒院に行く?
でも、この辺じゃみかけない髪の色ね……」
「あ、いえ、病院は大丈夫です。
それより、この辺のことを詳しく教えてくれるところはありませんか?
役所とか。」
病院に行くのは勘弁だ。
それに、お金がない。
「うーん、確かに体は大丈夫そうね……。
わかったわ、街役場に連れて行ってあげる!」
「あ、ありがとうございます!」
よし! 何とかこの世界を知る手掛かりを手に入れたぞ!
「じゃあ、行こうか。」
「はい! ……あ、待ってください、実は連れがいるんです。」
おっと、妹のことをすっかり忘れてたぜ。
ん、なんだか不機嫌そうな顔をしてるな。
そんなに待たせてしまったかな。
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「じゃあ、ここで。何かあれば、蜥蜴の宿を訪ねてくれれば、私はいるから。」
「はい! 重ね重ねありがとうございます!」
親切なお姉さんに付き従って、役所のようなところにたどり着いた。
役所というよりは観光施設だな。
「……」
「……なんだよ、唯香。まだ不機嫌なのか?」
唯香はここに来るまでもずっとむくれた顔をしていた。
「べっつにぃ~。なんかお兄ちゃんのデレっとした顔見たら、ムカついただけ。」
「……」
確かに綺麗なお姉さんとは思ったが、俺そんなに顔に出てたか?
「……ま、まぁ、おかげでこの場所がわかったんだから、いいじゃないか。」
「……ふん!」
はあ、変なところで唯香の機嫌を損ねてしまった。