第1話(改)
目を覚ますとそこは草原だった、見渡す限りの緑だ。
「美しい草原だ、しかし見る限り人の居そうな痕跡は無いな。」
これだけ見通しが良いところで村などが見えないということは村などはかなり離れたところにあるのだろう。
『聞こえるかのう?』
いきなり声が聞こえる、周りを見回しても誰もいない。
『お主の心に直接話しかけとるから見えんよ、無事にそちらに着いたようじゃな。』
「はい、五体もしゃんとあります。」
『そうかそうか、本当ならば他の世界に行ってまで神が手助けするのはあまり無いんじゃが、お前さんは特別に手助けをしようと思っての。と言っても能力の説明くらいしかできんのじゃが。』
何も分からないよりかはマシだ。
「この世界の説明とかは無理ですか?」
『そこら辺は大丈夫みたいじゃな、その世界の名はイスタリアという。ほとんどお主の住んどった地球とは変わらんのう。住んでおる種族は皆が魔法で飛んだり箒で飛んだりしておるの。』
「正にファンタジーですね。」
特に箒で飛んでいるのが婆さんだったら違和感ゼロだ。
『そうじゃのう、じゃが安全面では恐ろしく危険じゃな、魔物が飛び回ったりしておるからの。大概の生き物が大型化しておってな体長2メートルくらいのカエルなんかもおるぞ。』
「カエルですか?」
カエルが跳ぶ・・・いや泳ぐ、だろうか。体長2メートルのカエルが平泳ぎをしながら空を飛ぶ。うわー、無いわー。
「シュール過ぎますね。」
『まあのう、その代わり動きはあまり早くないから巨大化したのだと思えば良かろう。心配せんでも、お主の選んだ武器ならば敵にはならんぞ。』
「それは有難い。」
『後、お主に与えた能力は基地、装備ツリー、解体、言語理解、アイテムボックス、武器の使い手じゃ。』
あれ?
「言語理解と武器の使い手とかが増えてますが?」
『言葉が分からないのは不便じゃろうと思っての文字の方は自力で頑張って欲しいんじゃが、どうする?』
「どうするとは?」
『知識で与えるのは駄目じゃが辞典とかの形なら大丈夫なんじゃ、これから話すポイントを使えばお主に渡すことが出来るんじゃが・・・。』
「ではお願いします、武器の使い手はどの様なものですか?」
『これは武器の使い方が分かるというものじゃな、じゃがわかるだけで使えるのとは違うぞ。』
「自分で練習しろということですね。」
『その通りじゃ、次は装備ツリーじゃな。』
「ふむふむ、これは変わっている方ですね。」
『うむ、同じものが連続で当たるのも嫌じゃろう?初めは初心者キットからの発展になるがの。』
「初心者キット?」
『それは向こうに着いてからのお楽しみじゃ。』
「分かりました、次は解体ですね。」
『グロいのが苦手と言っておったからな、この世界で売れる特徴的な部位に変わるようになっておる、じゃが欠点もあってな。』
「何ですか?」
『採れるものが良くなるのは何回もしてからなんじゃ、だから最初は肉や毛皮ばかりになるじゃろうな。』
別に構いはしないな、自分でしても上手く行える自信がない。
「それぐらい問題にはなりませんので良いです。」
『そうか、次はアイテムボックスじゃ。5×5の25種類、数は99個まで入れる事ができる、ただし時間はゆっくりとだが経過していく、ポイントを使うことにより容量も増やすことが可能じゃ。』
「どれくらいですか?」
『ざっと見て現実の1日がアイテムボックス内の1分じゃな。』
それは旅行等で重宝しそうだ。
『これで全部じゃな、選別に1万ポイントと状態異常無効、それに自己治癒をやろう、では頑張ってな。あとお主の名前は自分で付けておくれ。』
「お世話になりました。名前ですか?私の名前はーーーです?どういうことですか?」
自分の名前が言えない、いや思い出すことができない?
『世界がお主の名前を消してしまったからじゃ、まあ好きな名前を名乗ったので構わんぞ。』
釈然としないがそういうものなんだろう。見えないとは思うが礼をする。
『構わんよ、それに礼など言わんでおくれ、せめてもの罪滅ぼしなんじゃ。それとお主の体は死んだ人間の者を利用しておる、多分知っているものもほとんど居らんとは思うが気を付けてな。』
そのあとは声も聞こえなくなった、最後はほとんど聞き取れないほど小さな声だった。