プロローグ
「うーむ、ここはどこだ?」
回りには何もなく、ただ白い空間が広がっている。私が座っているのかどうかは分からない、上も下も同じだ。
「ようこそ、若者よ」
目の前にじいさんが現れた。
「初めまして、おじいさん。つかぬことをお聞き致しますがここはどこですか?」
「礼儀正しいのは評価出来るのう、ここはお主達が言うところの神界じゃ。世界の狭間とでも言えばいいかのう。」
「ということは貴方は神様ですか?」
「お主達が言うところの神話の神は大概ワシじゃな。」
えっへんと胸を反らす。
「ではその神様が私になんのご用なのでしょうか?」
「うむ、落ち着いて聞いてほしいんじゃ。」
神妙な顔で聞いてくるのでこちらも真剣に聞く。
「はい。」
「お主がここにいるのは手違いなのじゃ。」
ドーン
「はい?」
「だからのう、手違いでここにいるんじゃ。その手違いというのは・・・」
「手違いというのは?」
「なんとお主の生体紙で鼻をかんでしまった為使い物にならなくなってしまったからじゃ」
「はあ。」
「何じゃ、反応が薄いのう。」
「そもそもその生体紙というのが分からないんですが・・・。」
「そういえばそうじゃな、生体紙というのはお主達の寿命を記したものじゃ。」
「それが使えなくなって手違いが起きた・・・と。」
「そういうことじゃ。」
「自分の寿命ですから何とも言いがたいのですが乾かして使うことは出来なかったのですか?」
「生体紙は特別製での、一度異物がついてしまった場合使い物にならなくなるのじゃ。」
「神様のものでもですか?」
「例外は無いのじゃ、その為にお主は元の世界から弾き出されたんじゃ。世界の自衛本能とでも言おうかのう。」
「なるほど、家族や友人の記憶はどうなりますか?」
「この場合お主は居なかった事になるから記憶が消えてなくなるのう、ただ無くなるだけでは記憶に矛盾が生じるからどこかで補完が入るのう。」
「そうですか。」
「お主はあんまり驚かんのじゃな、こうリアクションが薄いのう。」
「今さらガタガタ言っても始まりませんので、ではご用事をお聞きしたいのですが。」
「うむ、用事というのはよその世界に行ってくれんか?」
「理由をお聞きしても?」
「そこは説明するわい、理由は単純でのう。お主の生体紙が残っとるのが原因なんじゃ、あれは当人が死なん限り残るものでのう。神でもあれに干渉することは出来んのじゃ、使えなくなった場合は複製が出来るのじゃが、今あるのが複製の方じゃな。鼻をかんだのはもう消滅してしまったわい、そして複製は同じ世界には送ることが出来んのじゃ。」
「なるほど」
「かといって生体紙が自然消滅しとらん限り勝手に消滅させるのは厳禁なんじゃ、それをするとワシが消滅させられるんじゃ。」
「ややこしそうですね。」
「まあのう、神とは言うものの絶対ではないんじゃ、そこでよその世界に行って欲しいんじゃ。頼む。」
「良いですよ。」
「良いのか?」
「条件を聞いて下さるのでしたらですけどね。」
「おお、不老不死とかは駄目じゃが他のことはある程度出来るぞ。言ってみなさい。」
「どんな世界に行く事になりますか?」
「水だけの世界や原始時代みたいな世界もあるのう。」
「島が浮いている世界とかありますか?」
「あるぞい、これじゃな。」
目の前にミニチュアサイズの世界地図が出る。
「地図の見方は分かりやすいように地球のにしてみたがよかったかのう?」
「これなら分かりやすいですね、海はないんですか?」
「この世界に海はない、お主のいた世界の海が空になったと思えばいいのう。」
「この世界で良いです。」
「魔物とか出てくるが良いのか?」
「大丈夫です、魔法とかはあるんですか?」
「あるぞ。次は欲しい能力を聞こうかのう。」
「飛行機を呼び出すことは出来ますか?」
「可能じゃな、ただし自分以外に使うことは出来んぞ?」
「私は自由に飛び回ってみたかったのです、他には安全な基地と魔物を解体するのが嫌なので自動的に解体できるのと荷物入れを下さい。」
「それだけで良いのか?」
「後は健康でいられるようにしてください。」
「うむ、それで良いんじゃな。では送るぞ」
「お世話になりました。」
「次は死んだ後にでも会おうの。」
光りに包まれた。