思慮
薄暗い闇の中…
何日が立ったのだろう。
チャンスとは何だろう。
ただ、時を待つだけだが、僕の肉体は生命を繋ぎ止めた。
実験動物のような器具を外され、辛うじて人の尊厳を得た。
だが、未だに自由はない。
伸びた髭は素直に剃られ肌を露出し、垂らしていた汚物があった場所は清潔には保たれていたが、鉄の網に囚われていたままだった。
それでも人の正気は失わずにいられた。
「LIFE bankから、一つ君にチャンスをあげよう。」
「…期待しているのだよ、その、生に対する……ドブ臭い考えに。」
…ドブ臭いとはいったい、それ以前に僕は無実だ。
だけど、あの場では生への執着には勝てない。それが、僕の認めざる所でも。
拷問から解放され安堵したが、闇は無慈悲に襲ってくる。考えたくもないのに、思考が働く。
「あの、起業家は一体何者だ。」
「なぜ、僕が囚われた。」
「LIFE bankの管理職…一部の管理職は何か知っている。」
「間違いなく、上司とあの女は知っている。」
「それ以前に僕の寿命はどうなった。」
考えもまとまらず、何回、何十、何百、何千…ループを繰り返すが何も整理出来ない。
いや、何時解放されるか分からない中、纏める事を放棄していた。
「チャンスの時間だ。」
光と共に華奢な影が伸びてきた。
この時、僕は本質を見落としていた。
これは◯◯◯で、僕は決して◯◯◯ではない事に。
そして、また、彼女も同様である事に。