奈落
もう、疲れた…。
拘束されて、何日経ったのだろう。
髪はグチャグチャになり、髭もかなり生えた。何度、殴られ、蹴られたのか、顔は見るに耐えない程腫れていた。
身体は無数に縛られ、身動きが取れない。
食事が取れない僕は、口に管を詰め込まれ、ダチョウのように餌を与えられていた。
僕はLIFE NETの改ざんを行っていない。
事実《融資》しただけだ。行員として、また、不足分を個人として。
個人融資がいけなかったのか…。いや、皆やっている。
一体なぜ、僕が横領したことになった。
横領したのなら、その金は何処にある。
…わからない
…わからない
…考えたくない…
…わからない
…もう、どうでもいい
…本当は…
…僕が…
……
…やりました……
……違う……
…………僕じゃ…ない
…………思考が定まらない……
「…惨めだな。」
その声は僕を此処へ追いやった雌だった。時間の感覚を失い、もはや、その声は懐かしく、尊いものだった。
「…口に管を突っ込まれ、栄養素を流し込まれ、床は汚物塗れ。」
「見るに耐えないよ。」
「…臭く、醜い。」
「まるで、お前の心のようだ。」
「……が…がぃ…」
「…喉に管があるとはいえ、声も出なくなったか。」
「…女性に汚物を見せるのは如何なものかと思うよ?」
怒りと憎しみが込み上げてくるが、もはやその感情は、奪われていた。
「そう、睨むな。…汚物が。」
「LIFE bankから、一つ君にチャンスをあげよう。」
「本来なら、君は既に寿命を失っているのに、何故、生きている?」
「考えた事があるか?」
「…期待しているのだよ、その、生に対する……ドブ臭い考えに。」