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LIFE bank  作者: バナナ君
5/7

戸惑い

「彼が行方不明⁉︎」


上司からの急な報告に、僕は自席で声を荒げた。

先日、融資した起業家が突如姿を消したのだ。


「取引名簿の住所や連絡先を…」

「もう、遅いよ。すべて調べたが、彼の情報はLIFE NETに登録されていなかった。顔も性別も住所も家族も…世界番号すら。」

「ありえない‼︎世界番号は全ての人間が寿命を買う為に付与されているんですよ‼︎それが無いなんて…」

「事実無いんだよ。元々、彼は存在していなかった。」

「そんな馬鹿な事がありますか。LIFE NETの改ざんは誰も出来ないのはご存知でしょ。世界番号だって同じです。痕跡も残さず存在を消すのは不可能です。」

「…言いたい事はわかるが、受け入れるしかないのだよ。」

「おかしい!何故、LIFE NETから消えた人間に対してそんなに簡単に受け入れるのですか?」

「私も苛立ちを隠せないさ。」

「融資するまでは存在していた男なのは、知っていますよね。」

「もちろん。」

「融資後に存在しなくなるなんて、ありえないじゃないですか。」

「LIFE NETが全ての事実なのだよ。…受け入れるしかない。」

「…腐ってる。」


理由もなく一方的に奪われ、疑問を追跡せず、人を監理するシステムに従う、この世界に憤りが隠せない。


「これは、重大な犯罪行為です。警察や政府には?」

「報告済みだ。」

「その結果が、放置と…」

「上が君を呼んでいる。参考人として意見を聞きたいと。」

「…わかりました。」


上司を背に、呼び主ことLIFE bank取締役室兼政府長官室へ足を進めた。

遠くから上司の声が聞こえた気がした。小さく、「バカな奴」と。


「もう、事態は分かっているだろう?」

「はい。」


目の前には、この国の首相と同地位の女性がいる。

寿命を買うこの時代には、年や老化といった概念がない。少し幼さが残る感じだが、雌の魅力を充分に備えた女だ。


「この失態をどうするつもりだ?」

「失態と申しますが、融資するまでは確かに存在しておりました。これは、事実であり、周囲も認めております。」

「これは詐欺で、自分に非はないと?」

「融資したことは事実ですが、LIFE NETの改ざんは想定外です。誰も、回避はできません。」

「改ざんされた形跡はないが。」

「ですが、周囲が存在を認めており、必要な書類は、その者の自筆です。」

「確かに。だが、筆跡鑑定の結果、該当者が見つかった。」

「本当ですか⁉︎」

「あぁ。」

「では、その者がLIFE NETを何かしらの方法で改ざんをし、融資を受けたとしか考えられません‼︎」

「本当にそう思うか?」

「それ以外はありえません。直ぐに、拘束すべきです‼︎」



「……わかった。……そのように判断するしかないな。」


僕は安堵と同時に起業家に対して、怒りが収まらなかった。まず会ったら、思いっきり殴ってやろう。


「…では、その男を拘束しろ。」

「………は?」

「筆跡はお前のものだった。」


言葉の意味を理解出来ない。屈強な男達がその声と同時に僕を拘束した。


「ちっ、ちょっ、ちょっと待ってくれ‼︎…これはどういう事だ!」

「お前の言った、そのままの行動だ。」

「ふ、ふざけるな‼︎防犯カメラを見ろ!俺が二人いるか‼︎」

「お前が拘束しろと言っただろう?筆跡はお前だけしか残っていなかった。…横領、これが答えだよ。」

「そんなふざけたことがあるか‼︎」


急な拘束に僕は、頭が真っ白になり喚いた。


「これは冤罪だ‼︎」


「話は別の場所で聞くよ。まずは、場所を移そう。」


視点が定まらない。何故こうなった。力なく崩れた僕を、男達は引きずり、部屋を後にする。


ただ、這い上がりたかっただけなのに。


ただ、言えるのは



…僕は嵌められた。

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