プロローグ
命は金より高い。
誰かが言っていた。
世界の人口は世歴2060年の100億人超えを機に、2100年より緩やかに降下した。降下する理由は明白であり、単純に生産人口の減少、つまりは超少子高齢化社会に突入したからである。
そして、時は西暦2300年。
人類の人口は二世紀前のピークから半分以上減り、そこに寿命の概念は消えていた。
人は、純粋なる肉体を捨て、半アンドロイドと化して生存していた。
誤解をしないで頂きたい。まだ、一部は純粋な人間もいる。
だが全体割合の僅か数パーセントしか真の肉体を持っておらず、彼等は迫害の対象として、半アンドロイド達にとって狩りのステータスとなっていた。
半アンドロイド達は生殖を行わない。ただし、人類が得た性への快楽行為は娯楽として存在する。
繁殖をするのは僅か数パーセントの人だけで、その数は年々減少している。
後半世紀もすれば、人類は確実に半アンドロイド化するだろう。
半アンドロイドは病気、飢餓ではなく、皆、寿命又は事故でしかで死なない。
人の心は繰り返しデジタル化され、何度も器に復元された。そこに生命の神秘はなく、ただ、再生されるだけの事務的な手続きを残しただけ。
復元された命は、少しずつ人の尊厳を失った。
その魂はいつのものなのか、誰も知らない。
人々は偽りの身体にあるプログラムを導入した。
人々は定期的にそのプログラムを買わなくてはならない。
そして、それは最も安全な所に預けられ、売買、投資されるようになった。
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生物は繁殖無くして、増えることはない。増える事を失った種は、絶滅しかない。
人は愚かにも、種の生存本能を放棄していた。