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伝えたい想い  作者: Santa
9/11

試験の勉強‥‥other side




ふとテキストから顔を上げ時計に目をやると、21時になろうとしていた。そろそろかなー‥とテキストを片付けようとしたとき。



「羽瑠ちゃんいるー?」


小さなノック音のあと、窓から現れたのは隣の住人で。


「ねぇねぇ、数学教えて?」


ほら、きた。と心の中で呟けば、思わず頬まで緩んでしまう俺。

つくづく彼女には甘いなぁ、と苦笑する。


「羽瑠ちゃん?なに一人で笑ってるの?」

「いや、俺はまだいいよなんて言ってないのに、誰かさんは人の机の上にテキストを広げてるからさ。イヤだって言ったらどうするのかなーと、ね。」

「羽瑠ちゃんイヤなの?それなら帰るよ‥」

途端にシュンとして、彼女はそう呟いた。

「いやいや、冗談だから。」と慌てて答え、隣に座りテキストを開く。


「羽瑠ちゃん‥本当に迷惑だったら言ってね?」

と下からのぞき込まれた瞬間、胸の辺りがキュウとなり、少し苦しくなる。

「気にすんなって。」と答えて彼女の頭に優しく触れると、彼女はそのままテキストに取りかかってしまう。


少しずつヒントを与えると、つまづきながらも最後まで自力で解いていく。

「あれ‥みいこれだけ?」

「うん、あとは学校で美里くんに教えてもらったの。」

いいでしょー。と笑う彼女。


何がいいんだ?教えてもらった?他の男に?


「みさと‥」

「そうそう、一緒に学級委員やっててね、今日もその仕事のついでに。」

「そいつと仲良いんだ?」

「なんで怒ってるの?」

「怒ってないよ。」

「だって今日の羽瑠ちゃん怖いよ?」

「いや‥ごめん。」


”みいはそいつのこと好きなのか?”と言いそうになって、慌てて口を閉じた。ふう、と小さく息を吐いて彼女の頭に触れる。‥相変わらず心地よい手触りだった。


「なんで怒るかなぁ。羽瑠ちゃんだって彼女居るくせに。それに美里くん好きな子いるみたいだし。」


「‥は?」


今なんて?


「え?だって美里くん気になる子居るって言ってたもん。だから、好きになっちゃダメなの。」

「ふーん‥」


それってまさかみいのことじゃないだろうな‥いや、でも勉強したんだろ、ふたりで。あれ?ふたりでって言ったか‥いや、でも一緒に学級委員やっ「じゃ、羽瑠ちゃんありがとう。」


彼女の言葉で現実に引き戻される。「いや、これくらい構わないよ。」と何事もなかったかのように笑ってみせる俺‥心中は穏やかではないのに。


「みい?そんなにじっと見つめるなよ。」


ばれてるのか?ばれてるのか?俺が動揺しているのがばれてるのか?!


「えっ‥あ、ごめんごめん。それじゃ、私は帰ります。 」

「おう、またいつでも来いよ。」

「う、わっ!「みいっ!」」


ベランダへ出ようとしたところで躓いた彼女を、咄嗟に後ろから抱きかかえる。彼女も驚いたのか心拍数がとても高まっていた。


「あ、羽瑠ちゃん‥ごめんなさい。」

「気を付けろよ?怪我したら心配するだろ。」

「うん、ありがとう。じゃあ、おやすみなさい。」

「ん、おやすみなー。」


彼女の部屋の明かりが付いたのを確認してから窓を閉め、ベッドに横たわる。

はー‥美里ってあいつだよな。あいつ絶対みぃのこと好きだろ、みぃも好きになっちゃいけないの、とか訳わかんないこと言うし‥相変わらずふわふわしてるし‥小さいし‥可愛いし‥俺の片腕ですっぽり収まるし、それに柔らかくて‥‥‥‥‥って!俺のばかっ!いかん、冷静になるんだ、俺。さっきのは事故、事故なんだから、この右手に残る感触は‥‥無視、無視だ。


”羽瑠ちゃんだって彼女いるくせに”か‥。綺香、いいやつだけど‥でも、いまさらだけど、俺はやっぱりみぃのことが好きだ。これはきっとこの先も変わらない‥と思う。




とりあえず、はっきりさせないといけない。







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