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伝えたい想い  作者: Santa
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青天の霹靂



それは、高校生になって間もなく1ヶ月という、とある日のことだった。まだ初夏と言うには早く、しかし春の代名詞である桜は既に花を落とし、新緑が芽生える季節に差し掛かっていた。



午前中は晴天だったのが嘘のように、お昼の時間には激しい雷雨となった。普段より人が多い、少し湿度の高い教室でお昼を食べようとし、廊下にあるロッカーへお弁当を取りに行ったときだった。話しながら歩いてきた2人の女の子が私の後ろを通り過ぎた。




『ねぇねぇ聞いてよー。2組の羽瑠くん、彼女できたってー‥』

『えー、ショックー。なにそれ、本当?』

『本当、本当。ほら、2組の綺香ちゃん?背が高くてきれいな子。お似合いにもほどがあるよねー。』

『あー、密かに羽瑠くんファンだったのになぁ。』

『私はそれより3組の‥』



パタパタという足音と共に声が遠ざかっていく。



「のんー!お昼食べよ!」

「え、あ‥‥うん。」


声をかけられてハッとする。どうしたの、ぼーっとして?と言って私に近付いてきたのは、同じ中学校を卒業した佐々木巴香ささきともか。数少ない親友だと呼べる友人だ。私より15cmほど高い彼女の顔を見上げると、心配そうにこちらを見つめる瞳と出会った。


「もかちゃん‥ねぇ、羽瑠ちゃん彼女できたって。」

「え、うそ!誰!」

「‥たぶん綺香ちゃん。中3のときから仲良かったし‥」

「うん、まぁ確かに仲良かったけど‥‥誰に聞いたの?」

「え、今歩いてた女の子たちが話してた。」

「ふーん‥羽瑠はバレー部入ったし、綺香ちゃんは男バレのマネージャーやるって聞いたよ。」

「そっか‥‥」

「とりあえずさ、お昼食べよ?2人も待ってるし。」



小さく頷いて教室に戻ると、お人形みたいに可愛らしい女の子とモデルのように美人な女の子が私たちに気付き、声をあげる。



「のんちゃん、もかちゃん、早く食べようよー。」

「もうお腹ぺこぺこー。」



先に声を発したのは、1年5組のお人形さんこと鈴木紗侑里すずきさゆり。もう一人は、巴香と同じくらい背の高い春山沙樹はるやまさき。2人とも隣の中学校を卒業しているので思っていたよりも家が近く、まだ知り合って1ヶ月もたたないのに、週末にも遊ぶほど仲良くなった。



人見知りの私が他中出身の子と仲良くなれたのはもちろん、巴香のおかげだ。巴香と紗侑里は、5組でバレー部入部希望者が2人だったことがきっかけで意気投合し、紗侑里と仲が良い沙樹と巴香と仲が良い私とで、そのまま自然にグループができた。



「あれ、のんちゃん元気ないー?」


正面に座った紗侑里が、くりくりっとした大きな瞳でこちらを見つめる。


「ううん、なんでもな「のんはね、大好きなお兄ちゃんに彼女ができたって知って、へこんでるの。」


私の言葉を遮った巴香に視線を送ると、ね?と言われて、私はコクンと小さく頷くことしかできなかった。私が羽瑠を好きだと言うことは、巴香しか知らない。



「あはは!のん、ブラコンすぎる。しかも本当の兄弟じゃないのに。」

「こら、沙樹ちゃん。あんまり笑ったらダメだよ。のんちゃん本当に元気なさそうじゃない。」



4人でお弁当を食べていると、突然教室の前の扉から担任である丸山隆まるやまたかしが顔を出した。



「おー。美里と希美ちゃんなー、今日の放課後、多目的教室で会議やるから出席するように。よろしく。」


「「えー‥」」


同じ言葉を発したことに驚き彼の方を見ると、彼も私の方を見てふっと微笑んだ。心臓がとくん、と脈打ち、微かに染まった頬を隠すようにうつむく。

美里翔也みさとしょうや、じゃんけんで負けた私とは違い、推薦で選ばれた1年5組の学級委員。ぱっちり二重の丸みを帯びた目元、嫌みじゃないくらいの高い鼻にほんのり色付いた唇。密かに5組の王子さまと呼ばれているのを果たして本人は知っているのかどうなのか。そんなことよりもなによりも、彼は身長やら髪型、髪質‥とにかく後ろ姿が羽瑠にそっくりなのだ。



「えー。じゃない、美里。学級委員なんだから、しっかり仕事しろ。

それから‥いいか、子どもたち。俺以外の先生が来たら、一応携帯は隠すように。じゃ、よろしく。」



そう言い残して、教室を出て行く。



「あはは!丸ちゃんてきとー。美里はダメなのに、のんは良いんだ。」



沙樹がそう言うと、ほとんどのクラスメートが頷いて、どこからかクスクスという笑い声も聞こえた。





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