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伝えたい想い  作者: Santa
11/11

真夏の誘惑‥‥other side


すべてはあいつらのせいだ、wプリンス‥





夕食後、部屋に戻ってカーテンを閉めようとすると隣の部屋の明かりが付いていないことに気付いた。

彼女も夕食を食べているのだろうか、と思ったちょうどそのとき「こんばんはー、お邪魔しまーす。」と聞こえた。‥‥ような気がした。


「やっぱりみいだ。」

「あ、羽瑠ちゃん‥タイミング悪‥」


リビングの扉を開けば、何やら母親と楽しそうに会話をしている彼女が居た。


「なに?俺が居ちゃいけないわけ?」

「いや、そんなこともないけど‥ねぇ、綾ちゃん?」

「もう、母さんもみいに余計なこと言ってないだろうな?」

「あ!羽瑠ちゃん!綾ちゃんにそんな言い方しちゃダメでしょ?」

「はいはい。そうだ、みいの好きな小説、新しいの出たけど持っていく?」

「え?わーい、じゃあ借りていく。綾ちゃんまた来るねー。」


勝手知ったる他人の家‥俺と彼女の家はお互いにそんな感じだ。

彼女がリビングから出てくるのを待たずに自室へと戻り、学習デスクの代わりである大きめの机の横に位置している本棚から彼女が好きな作家の新作を取り出した。

フローリングの床には大きめの円形ラグが敷いてあり、そこに出してある小さめの机の上にその本を置いた。


コンコンッ‥


「お邪魔しまーす。」

「あ、みい、ほらこれ。」

「わーい、ありがとー。」


机に置かれた本を開き、そのままパラパラと本を読み始めた彼女。

彼女が家に持って帰らずにここで読み始めることは良くあることだ。


しかし、今日の彼女の服装を見て、俺はいささか狼狽える。


‥‥そんなに短いワンピースで床に座るなよ。



見ちゃダメだ、見ちゃダメだ‥と心の中で呪文のように繰り返す。

しかし健全な男子高校生にそんな呪文はまるで効果がない。

頭で分かっていても心がついていかない‥ある意味で。


短い丈からのぞく、眩しすぎるほどの色白の肌。

触り心地のよさそうな程よい細さの足‥からの脚。

甘い蜜に引き寄せられる夏の虫のごとく、彼女に近付き横に座る。

彼女は本の世界に入ったままで、俺が隣に居ることさえ気付いていない様子だった。



彼女は考え事をするときや、勉強で難しい問題を解いているときなどに、ほんの少しだけ開いた唇を指でなぞる癖がある。

この仕草は他の男に見せたくない‥というのが俺の本音。

だから学校でも意識的にしないでほしい、なんて思うだけで言えないのだけれど。


だって誰がいつどこで彼女に欲情するか分からないだろ?

そんな汚らわしい目で彼女を見ないでほしい。

あぁ、ダメだ、もう彼女を誰かに取られるなんて考えられない。

彼女が他の男のものになるなんて考えただけで吐き気がする。

そんなことになるなら、もういっそこの気持ちを伝えてしまおうか。

誰かのものになる前に俺のものにしてしまえばいい。



「みい、知ってる?作業中に口が半開きになる人は、作業に熱中してる人なんだって。」


序章‥といっても軽く十数ページある章を読み終えたのを確認した俺は、右手の人差し指でこちらを向かせ、親指で優しく下唇をなぞる。


「‥‥‥っ?!羽瑠ちゃんっ?!」


彼女は慌てて立ち上がり少し距離をとる。

しかしそんなことは想定内だ。


「みい、そんな格好で来ちゃダメでしょ。」


彼女の正面に立ちトンっと肩を押すと、彼女はバランスを崩して後ろのベッドに座る。

不安そうな表情で下から見上げる彼女を見て、可愛いと思う俺はもうどうかしているのだろうか。


「え、羽瑠ちゃ‥」

「俺が男だって分かってる?」

「やだ‥‥‥。なに?」

「前にも言っただろ?」

「っ‥!?」


俺から逃げるように自らベッドの奥へ進んだ彼女の身体をまたいで、上から両手で両手首を押さえるようにして押し倒す。


「なに‥羽瑠ちゃ‥」




かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい‥

ダメだ、キスしたい、ダメだ、キスしたい、ダメだ‥




「‥‥っ。」


彼女が何か言ったような気がして、ハッとする。

気付くと彼女の目から涙が溢れていた。


心底慌てて彼女の涙をぬぐってやると、下から見上げる彼女と目が合った。

彼女の濡れた瞳を見た瞬間、心臓を掴まれたかのように苦しくなった俺は、たまらず彼女を抱きしめる。

抱きしめているのは俺の方なのに、ふわっとした彼女の優しい香りに包まれた。



「みい‥ごめん。‥‥‥‥好きだよ、ごめん。ごめん、泣かせるつもりじゃなかったんだ‥。」


何を言ったら正解なのか、分からなかった。


どのくらいの間、彼女を抱きしめていたのだろうか。

ふいに彼女の声がした。


「羽瑠ちゃん‥もう、大丈夫だから。」


彼女が俺の胸を押して離れる。

俺は彼女の顔を覗き込み、少し赤くなってしまった目尻に優しく触れた。




「だ、だめっ!!」


彼女に押し返され、俺は驚いて彼女を見つめた。

あろうことか俺は、無意識のうちにキスをしようとしていた‥みたいだ。

そんな俺を睨むようにして彼女が口を開く。


「だってさ‥羽瑠ちゃんが私を好き?彼女いるくせに?なにがどうなってその言葉に至ったの?どうせ妹として好きっていうようなものなんでしょ?」


先ほど止まったばかりの涙が、再び彼女の瞳から溢れる。


「ック‥なんで、こんなことするの!グスッ‥羽瑠ちゃんのバカっ!‥人の気持ちも知らないでっ!羽瑠ちゃんなんか‥きらいっ!」




‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



少しさかのぼり時は正午過ぎ、1年2組の教室。

終業式の後の担任の話も終わり、各々が明日から始まる(今まさに始まった)夏休みに思いを馳せていた。


「羽瑠、龍也!今日は部活休みだけど、明日の部活のあとみんなで花火大会行こうって他の子が言ってて‥2人はどうする?」

「「おー、分かった。」」


じゃあ、よろしく。と言って去って行った彼女を見て、隣のプリンスが口を開く。


「なぁなぁ、羽瑠と綺香ちゃんって本当に別れたんだよな?」

「え?あぁ、またその話?別れたよ、3日前。」

「だってさ、綺香ちゃん態度変わらなさすぎじゃね?普通、別れた後って多少なりともぎくしゃくするもんだろ?」

「あー‥それは‥なんというか。向こうから言ってきたんだよ。」

「あ?」

「俺が別れようって言ったら、じゃあ今まで通り、友達で居てねって。」

「はーっ!つくづくいい女だな!そりゃあ、羽瑠にはもったいないわ。てかお前、別れようって無いわ。お前なんて振る資格ないわ、振ってくださいだわ。」

「はぁ?お前、なにが言いたいんだよ。」

「でもなー、やっぱりお前、本命は別にいたのか。」


っ‥!!

俺、何も言ってないのに!!



「で、その子には言ったのか?」

「ちょ、待てよ、俺はまだ他に好きな子が居るなんて言ってないだろ。」

「いやいや、それ以外に綺香ちゃんと別れる理由ないだろ。」

「はぁ‥」


いつか思い出にできたら話そうなんて思っていた俺!!ちょー恥ずかしい!!


「なんだ、まだ言ってないのか。」

「だからなんで分かるんだよ。」


俺は苦笑し、ここまできたら開き直るしかない、と腹をくくる。


「で、誰?俺の知ってる子?ここまできて内緒って答えたらしばく。」

「あー‥あの、あれだ。たぶんお前は知らない。」


お前に惚れたら困るからお前と居るときは学校でみいを避けてた。

って言ったらこいつは驚くだろうか。


「ふふふふふ、羽瑠くん。プリンスの情報網をなめてもらっちゃあ困るね。俺、ほとんどかわいい子チェックしてるから言ってみ?」

「なんでこの学校限定なんだよ。」

「はっ!それは 盲点だった!」


プリンスもここまでじゃ‥と言って椅子に座る。

お前はいったいいつ殿様になったんだ。


なぁ、言わなきゃダメか‥?と尋ねれば、ダメー♪と語尾に音符でもつきそうな返事が来る。

俺は教室からほとんどの生徒が居なくなったのを確認すると、携帯の電話帳をひらき彼女のページを探した。


ほら、と言って目の前のプリンスに見せれば彼は「ははーん」とにやついた。


「のんちゃんだろ?羽瑠くんの幼なじみ。」

「おまっ‥そこまで知ってるとかきキモい。」

「キモいとか言うな!そんな羽瑠くんに、悲しいお知らせがあります。」

「は?」

「その子、バスケ部の美里ってやつといい感じらしいよ。」

「美里‥ってあいつか。」

「なになに、知ってたの?つまんねー。」

「いい感じってどうゆうことだよ。」

「羽瑠くん、教えてほしいときはそれ相応の‥」

「教えてください、龍也さま。これでいい?」

「コンビニのアイスでいいよ。」

「はぁ?分かった、帰りに買ってやるから教えろ。」





「俺さ、バスケ部に友達居るんだけど、どうもそろそろ美里がのんちゃんに告白するらしいんだ。」





★追記★

羽瑠のクラスは1年2組です。

訂正しました!すみません。

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