真夏の誘惑
真夏の照りつける太陽に勝てるはずもなく、私たち4人は学校を出てすぐに涼しい店内へ避難した。
無事に期末試験を乗り切り、待ちに待った夏休みを明日に控えた私たちは、女子高生には少しお高い●ターバックスで夏休みの計画をたてることにした。
「聞いてよ、もかちゃん。」
『うん、聞いてるよ。』
「最近、羽瑠ちゃん男らしくなってると思わない?色気っていうの?なんか‥あーもう!ぎゅう!ってしたい!みたいな感じ。」
『え?いや‥うーん。絢香ちゃんと色々やってんじゃない?それで色気むんむんなんじゃない?』
「なっ‥×#▼※◎っ!!!?」
『自分で言っといて何驚いてんの。』
「だって‥だってぇ‥そういうことじゃなくて‥」
『でも、羽瑠はのんのこと好きだと思ってたんだけどなー、私。』
「もかちゃんそれいつも言うけどさ‥本当に無いからね。」
『うーん‥私、恋愛ってしたことないからよく分からないけど、羽瑠に告白してみたらよかったのに。』
「羽瑠ちゃんは私のこと妹としてしか見てないし、いつだって会いに行くのは私からだし、彼女まで作っちゃったし‥あー‥私も髪の毛黒く染めてストレートでもかけようかな‥」
『はいはい、やめておきなって。愛しの美里くんが泣くよ?あ、沙樹!こっちー!』
〈居た居た。いつも思うけどここのお店、広すぎるよね。〉
《見つかってよかったね、沙樹ちゃん。今日は高校生がいっぱいだぁ‥ 》
沙樹が両手で支えるトレーの上には4人分の飲み物が乗っていて、その後ろから現れたお人形さん‥はもちろん何も持っていない。
なんだかんだ沙樹ちゃんももかちゃんも、さゆと私のことを甘やかしてくれる。
〈今日部活休みなのってうちの学校だけじゃないんだね。で、なになに?2人でこそこそ話しちゃってー。〉
《あれでしょ?翔也くんの話でしょ?》
『あ、そっか。2人は美里くんと同じ中学だもんね。下の名前で呼ぶのかー‥』
〈私は美里って言ったり翔也って言ったり色々だけどさ。〉
「ね‥ねえ、もかちゃん。この前、沙樹ちゃんとさゆに言われたんだけど‥美里くんって私のこと好きだと思う?」
『うん。』
「っ!!?ゲホっ‥ケホっ‥」
予想外の返事に、飲みかけたものが気管支に入りそうになった。
〈ちょっ、のん大丈夫?〉
「ん、だって‥もかちゃんまで変なこと言うんだもん‥ケホッ‥」
《変なことじゃないよぅ。だからこの前から言ってるじゃん。はやく翔也くんと付き合っちゃいなってー。》
くすくすと楽しそうに笑いながら正面から見つめてくるこの可愛い子はなんですか、天使の顔をした悪魔ですか。
『明日の花火大会、美里くんも来るんでしょ?』
〈クラスのメンバーで集まって行こうって言い出したの翔也だし、来るんじゃない?〉
《私は彼氏と約束してるから行けないけど、楽しそうだなー。みんなとも行きたいなぁ。》
『で、のんは美里くんのことどう思ってんの?』
《あ、私も 聞きたいっ聞きたいっ!》
「え‥別に嫌いじゃないよ‥それに、あんな風にちゃんとしゃべれる男の子なんて他に居ないし。」
〈で?好きではないの?〉
「それは‥まだよく分からないけど‥」
《きゃー!一番楽しい時だね、それって、ふふふ。》
『明日が楽しみだなー。夏の夜の勢いってやつね。』
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
夕食後、自室で学校の夏期講座や遊ぶ予定を手帳に書き込んでいると下の階から母に呼ばれ、お遣いを頼まれた。
「こんばんはー、お邪魔しまーす。」
「あら、みいちゃんいらっしゃい。羽瑠なら部屋に居るわよ?」
「綾ちゃんこんばんは。今日はね、お遣いなの。はい、これお母さんが焼いたから食べてくださいって。」
リビングに入ると、ちょうどお隣さんも夕食後の片づけをしていた。
ここに置くね、と言ってきれいに焼きあがっているカップケーキを机に置いた。
「あらー。さすがみちるちゃんだわ。こんなに綺麗に焼きあがって。明日の朝いただくわね。」
「はい。」
「そうそう、みいちゃんに聞きたいことがあったのよ。」
「え?私に?」
「羽瑠に聞くと怒られちゃうからね‥羽瑠の彼女さんって‥「あ、やっぱりみいだ。」
ガチャという扉を開ける音と共に、話題の人物がリビングに現れた。
「あ、羽瑠ちゃん‥タイミング悪‥」
「なに?俺が居ちゃいけないわけ?」
「いや、そんなこともないけど‥ねぇ、綾ちゃん?」
「母さん、みいに余計なこと言ってないだろうな?」
「あ!羽瑠ちゃん!綾ちゃんにそんな言い方しちゃダメでしょ?」
「はいはい。そうだ、みいの好きな小説、新しいの出たけど持っていく?」
「え?わーい、じゃあ借りていく。綾ちゃんまた来るねー。」
そう言って、出て行ってしまった彼を追いかけるようにリビングを後にした。
彼の部屋を訪れるのはあれ以来だ‥なんて考えると緊張してしまう。
はっ!今さらだけど。
私、部屋着のワンピースだ‥変じゃないよね?大丈夫だよね?
って本当に今さらなんだけど!
先に行ってしまった彼の部屋の前で1つ深呼吸をして、部屋に入る。
コンコンッ‥
「お邪魔しまーす。」
「あ、みい、ほらこれ。」
「わーい、ありがとー。」
机に置かれた本を開き、そのまま気になってパラパラと序章を読み始めたのがいけなかった‥と、後になって思っても遅いのだ。
「みい、知ってる?作業中に口が半開きになる人は、作業に熱中してる人なんだって。」
序章‥といっても軽く十数ページある章を読み終えると、すぐ隣には彼が居て。
あろうことか私は、彼の右手の人差し指で軽く上を向かせられ、親指で優しく下唇をなぞられていた。
「‥‥っ?!!!羽瑠ちゃんっ?!」
本は机の上に開いたままで慌てて立ち上がり、少し距離をとる。
今のはキスをする前みたいなやつじゃないの?!と頭の中で考える。
「みい、そんな格好で来ちゃダメでしょ。」
すると彼も立ち上がり、トンっと肩を押された私はバランスを崩しベッドに座り込む。
「え、羽瑠ちゃ‥」
なに?怒ってるの‥?
「俺が男だって分かってる?」
ふ、と目を細めた彼はいつもと違う空気をまとっていて。
「やだ‥‥‥。なに?」
そんな彼を見るのは初めてのことで、ただただ恐怖でしかなく。
「前にも言っただろ?」
ポスっと軽い音がして、私は彼のベッドに押し倒されていた。
「っ‥!?」
そのまま彼は私の身体をまたいで、上から両手で両手首を押さえる。
「なに‥羽瑠ちゃ‥」
なんでこんなことになってるの?
私、なにかした?
私、なにかされるの?
「‥‥」
1人でフリーズしている私を余所に、彼は落ち着いた様子で上から私を見下ろしていた。ただでさえわけが分からないのに何も言ってくれない彼に、私の頭の中はさらにぐちゃぐちゃになった。
気付くと私の目からは涙が溢れ、彼の枕を濡らしていた。
「羽瑠ちゃ‥ど、して‥私‥なにか‥した?怒らせちゃったなら謝るから‥。」
そう言って目を閉じると押さえられていた手が離され、代わりに優しい手つきで涙をぬぐわれた。目を開き見上げると、困ったように眉根を寄せた彼の顔があった。
「みい‥ごめん。‥‥‥‥好きだよ、ごめん。」
彼はそっと私を起こしてくれたけれど、まだフリーズしたままの私は、ほとんど彼にされるがままの状態。
「ごめん、泣かせるつもりなんかなかったのに‥」
そのまま彼に優しく抱きしめられ、気付くと涙がスーッと引いていた。
「羽瑠ちゃん‥もう、大丈夫だから。」
軽く彼の胸を押して離れる。
「みい‥」
え、ちょ‥羽瑠ちゃんの顔が近付いてくるけど‥
え?ちょっとこれは‥%&$◎▽*?!!
「だ、だめっ!!」
慌てて彼を押しのけると、彼は驚いて私を見つめてきた。
「だってさ‥羽瑠ちゃんが私を好き?彼女いるくせに?なにがどうなってその言葉に至ったの?どうせ妹として好きっていうようなものなんでしょ?」
言葉にしたら、涙が溢れてきた。
「ヒック‥なんで、こんなことするの!グスッ‥羽瑠ちゃんのバカっ!‥人の気持ちも知らないでっ!羽瑠ちゃんなんか‥きらいっ!」
その言葉の勢いで立ち上がり、溢れる涙をぬぐうこともせず部屋を飛び出した。
窓から自室へと戻りベッドに倒れ込んだ瞬間、携帯の着信音が鳴り、画面を確認せずにスライドし、耳に当てた。
「グスっ‥はい、もしもし‥」
4人の会話って区別つけるの大変ですね...orz
理解していただけると良いのですが‥文章下手ですみませんっ!(汗)
精進していきます。