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白球狐の夏  作者: 春雨 蛙
第四章 灼熱の夏
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混浴みたいなもの

「ふむ。なかなかの広さじゃの」


 着替えを用意して、脱衣所へと移動した儂は安心した。


 脱衣所も風呂場も一般的な銭湯の広さくらいあるではないか。

 これならば大人数でも目立つことはなかろう。


 儂が遠慮がちに服を脱いでおると、さっさと脱衣を終えた部員たちは特にタオルで前を隠すこともなく、堂々たる姿で風呂場に向かいおった。


「森宮。何で胸を隠してんだ? 女じゃねぇんだからよ」


 胸と局部を押さえてモジモジしておる儂に他の部員が声をかけてきた。


「やかましい!」 


 ええい、ここで儂だけ前を隠せば悪目立ちするじゃろうな……。

 意を決した儂は、顔を真っ赤にしながら風呂場へと向かった。


 さっさと身体を洗って湯船に浸かり、とっとと上がるとしようではないか。


 さすがに今時「先輩の背中を流せ」などと時代錯誤なことを命令してくる者はおらなんだ。おれば湯船に沈めてやったところじゃがの。


 儂は手早く身体を洗い終えると、一番乗りで湯船に浸かった。これでひとまずは安心じゃろう。じゃが……。


「ひっ!?」


 儂は前から歩いてきた大牙を見て思わず声を出してしもうた。


 なんじゃ、あの凶器は。


「何だ?」


 大牙が訝しげな目を向けてきた。


「な、なな、何でもないわい!」


 儂は慌ててふい、と顔を逸らした。 


 デカすぎじゃろ……。

 逞しすぎじゃろ……。

 これ、見栄で大きくしとるのではあるまいな?


 やはりこやつはオレ様系じゃ。

 やはりこやつはオラオラ野郎じゃ。

 やはりこやつは脳味噌マラボウのドスケベ男じゃ。


 いずれアレをソレして女をヒイヒイいわせる気に違いない。


 かつてフォークボールの神様と称えられた往年の大投手は、入浴する際に立派なモノが着水音を立てることから『ドボン』と呼ばれておったそうじゃが、どうやら大牙にもその素養があるらしい。


 儂はその資格を確かめるべく、大牙が浴槽に入る様子を見守った。


「ドボン」まずは右足。

「ドボン」続いて左足。

 そして……「ドボン!」


 儂はその派手な着水音を聞き届けると、顔面が紅潮するのを感じた。


「のぼせたのか? 耳まで真っ赤だぞ」


「やかましい! 何でもないと申しておるじゃろうが!」


 湯舟に近づいてきた大牙を躱し、儂は風呂場から出ようと走り出したのじゃが、勢い余ってタイルの上で転んでしもうた。


「おい大丈夫か!?」


 慌てた様子で大牙が近づいてくる。


 よせ……来るでない。

 今その姿で近づいてこられたら儂は……。


 大牙が儂を抱き起こして必死に呼びかけておる。


 大牙の立派な二の腕に包まれながら、その端正な顔立ちと鍛え上げられた胸筋を間近で見た途端に儂は意識を失ったのじゃった。


「こ、ここは……」


 気がつくと儂は脱衣所の長椅子に寝かされておった。


 一応身体にはバスタオルが巻かれておる。

 男の姿のまま変化が解けておらんかったのは不幸中の幸いといえるじゃろう。


「目が覚めたか。お前はさっき風呂でのぼせて倒れたんだぞ。これに懲りたらもう浴槽から上がってすぐに走り出すなんて危険な真似はやめるんだな」


 既に着替えを済ませておる大牙が諭すように言った。

 倒れたのは別の理由で刺激が強すぎたからじゃが、それは話す必要なかろう。


「わ、わーっとるわい。して、儂はどのくらい気を失っておったのじゃ?」


「ほんの数分だ」


「ふむ。ならばまだ他の部員は入浴しとるのか?」


 儂は身体を起こそうとした。


「ああ。そのまま横になってろ。先輩方が上がるまでマッサージで身体をほぐしてやる」


「按摩じゃとぉ!? いらぬいらぬ! 不要じゃ!」


 儂は飛び起きようとしたが、大牙が強引に押さえ付けおった。


「いいから横になってろ。今日の疲れを明日に残さないようにほぐしてやる」


「ならばせめて服を着せぬか服を! こ、これ……やめ……オッ!?」


 大牙の指圧が始まり、儂は思わず声を上げた。


「おい、変な声を出すな」


「へ、変な声を出させておるのはぬしじゃろうが! もうよいからやめ……んひぃ!?」


 大牙の責めに儂の身体がビクビクと反応する。

 バスタオル1枚しか隔てておらぬせいか、大牙の指先の感触が生々しく伝わってくるではないか。


 ええい、癪ではあるがこやつ相当上手い。

 儂の凝っておるところを的確に探り当てて刺激しておる。


 家でも誰かにやっておるのか、そうでなければ女を誑かすために腕を磨いたといったところじゃろう。


「だから変な声を出すなって」


 大牙に好き放題に身体を弄ばれ、いつも儂にセクハラされておる瞳はこんな気分なのじゃろうかと反省した。


「ひ……ひぁ……あぎぃ!?」


 今や儂の顔はだらしなく蕩けきっており、されるがままじゃ。


 いやはや男の姿で本当に良かったわい。

 女のままじゃったら大変なことになっていたやもしれん。


「……やっぱり服を着てくれないか? 妙な気分になってきた」

 

「妙な気分になってきたじゃとぉ? 何を抜かしとるんじゃこの阿呆は! やはりぬしはドスケベじゃ! 脳味噌マラボウのドスケベ男じゃ! 相手が男じゃろうと女じゃろうと穴があれば何でもよいのじゃろ!?」


「人聞きの悪いことを言うな!」


 その後、着替えて大牙の按摩を受け直した儂は、軽くなった身体で食堂へと向かったのじゃった。

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