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魔法少女おばあちゃん 〜78歳のおばあちゃん、16歳の侯爵令嬢に転生?!〜  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第五章 魔境の森

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66、商人って大変なのねぇ

 ワトくんが私たちと行動を共にし始めてから一週間ほど。

 マチルダちゃんの提案通り、ラーネが本当にいい働きをしてくれている。まとまって歩いている時は、基本ラーネも探索魔法を常に展開していた。そのため奇襲を掛ける魔物に関しては、ラーネが全て対処してくれる。

 今では、奇襲に対処するのはラーネとマチルダちゃん。それ以外は私たちという分担ができていた。


 ワトくんも身体が細いので、体力はあるのかどうかという点が心配だった。けれど、私たちに遅れることなく付いてくる。そのため、目標である場所まで問題なく着くことができた。


 そんなある日。

 私がいつものように探索魔法を展開していると、何かを感知した。無意識にラーネを見ると、彼女も私をじっと見つめている。どうやら彼女の方にも引っかかったようだ。

 私は歩いていた皆に声を掛ける。


「私とラーネの探索魔法に何か引っ掛かったわ」


 そう告げると、全員が戦闘体勢へと移る。ワトくんも最初はこの空気感に狼狽えることが多かったが、何度も同じようなことが繰り返しあったからだろうか、最近では頭上にいるラーネを見つめていることが多い。

 段々近づいてくるモノが何かを感じ取るために、私は更に集中する。


 先頭にいるのは……人型……いや、多分人だ。先頭の者を魔物が追いかけているのだろう。


「一人の人を魔物の群れが追いかけてる! 魔物の推定は……二十! うち、空を飛ぶ魔物三!」

「OK。コニーは俺とマチルダに強化魔法を、クリスは空の魔物を頼む! ラーネはワトを守りつつ、もし俺らが取り逃した魔物が来たら倒してくれ」

「分かりました!」

「承知しました」

「分かったわ!」


 ユウくんの指示に私たちは返事をする。そしてラーネは敬礼を取る。

 コニーくんは指示があるとすぐに呪文を唱え始め、ユウくんとマチルダちゃんに強化魔法を掛ける。以前と比べて経験値が増えたからだろうか、コニーくんの安定感が増していた。心なしか詠唱の時間も短くなっている気がする。

 

 ――負けていられないわね!

 そう気合を入れた私は、再度探索魔法へと意識を向ける。そして皆に距離を教えつつ、戦闘準備へと入ったのだった。



 そこから五分ほど経っただろうか。

 何かの群れがこちらに向かっている音が聞こえてくるのと同時に、人の叫ぶ声が耳に入る。


「わぁ〜! もうどこまで追ってくるんですかぁ〜! なんで私、こんなに運に見放されてるんですかぁ〜!」


 鞄を胸に抱き、半泣きになりながら声を張り上げる男の後ろから、猪のような魔物が現れた。日本の猪よりも、三倍ほど大きな巨体、そしてナウマンゾウのような大きく立派な牙を持つ。

 なんて魔物なのだろうか、と首を傾げていると、コニーくんが声を上げた。


「あれは……リュマントという魔物です! 力が強く、突進して攻撃してきますので注意してください!」

「分かった!」


 ユウくんは頷くと、男と猪魔物の間に乱入する。猪の魔物はいきなりの乱入者に驚いたようだけれど、勢いがついたままの巨体を止めることはできなかったらしい。ユウくんへ突進する。

 そのまま猪の魔物がユウくんの間合いに入った時、彼は剣を振り下ろした。その刃先が猪の魔物のこめかみに当たったと思ったら、そのまま猪の身体へと食い込んでいく。

 どうやら猪の速さを利用しているようだ。血が吹き出たと思ったら、その猪は倒れていた。そしてユウくんは既に二体目の魔物へと向かっている。


 一方、マチルダちゃんはクナイで急所を狙っていた。目に見えない速さで急所を突かれた猪は、切られたことに気がつくことなく、しばらく走ってから横へと倒れていく。


 そして私は右手に魔力を溜める。

 丁度私たちがいる場所は木々が少なく空がよく見える場所だった。雲ひとつなき空に黒い何かが現れる。以前見たアルバードとは違い、この魔物は日本にいるカラスにそっくりだった。

 もちろん、大きさは桁違いだけれど。


「クリスさん、この魔物はケバインという名前です!」

 

 ケバ()ン……黒一色なのに面白い名前を付けたわね、なんて思いながらも私は右手を突き出す。そして今まで溜めていた魔力を解放した。


「クリスティナ・ブリザード!」


 ケバいンに手のひらを向けると、すぐに花吹雪が集まってくる。そして作られた花吹雪は一直線に三体のケバインへと向かって放たれた。

 一体は羽に、もう一体は足に花吹雪が当たる。ケバいンは花吹雪から逃げられたことに安堵しているのか、当たらなかったことを鼻で笑っているのか、カラスのような声を上げた。

 そして、こちらに滑空しようと身体を動かしたその時。


 二体の身体が少しずつ凍っていく。凍る速度が早く、対処する間もなかったようだ。既に一体は片翼が使えず、地面へと墜落する。二体目も身体が半分凍りついた時点で、勢いよく落下した。

 それを見た残りの一体が、目を赤くして降りてくる。我を忘れたその行動を見た私は、再度呪文を唱えて三体目も凍らせた。

 

 落ちたケバいンはラーネの糸によってぐるぐるに巻かれる。ラーネは私を見て「全部まとめたよ!」と言わんばかりに、胸を張って主張していた。

 可愛いラーネの頭を撫でた後、私はケバいンを自分の魔法袋へと入れる。それを見届けたラーネは、ワトくんのそばに付き添って周囲を警戒していた。

 

 ちなみにそしてユウくんたちを見れば、二人も既に猪の魔物を制圧し終えていたようだ。マチルダちゃんは猪の魔物を魔法袋の中に入れていた。

 今日も串焼きが食べられそう……と思いながら後始末をしていると、不意に後ろから声が聞こえた。


「わあぁぁぁ〜! 本当に助かりましたぁ〜! 皆さんは命の恩人です〜」


 この人は誰だろうか、と首を傾げていた私だったが、先頭にいた男性であることを思い出す。

 彼は目に涙を溜めて、両手を上げたかと思うと……膝を曲げながら両手を地面につけた。まるで土下座である。


「私、いつもの通りに魔物の少ない小道を通っていたのですが〜――」


 そう言って語り出したこの男性。話を聞くと、どうやら辺境伯様と取引をしている魔族の商人だという。魔族領での騒ぎがひと段落したために、辺境伯領へと商売に向かう途中だったという。

 元々、魔法袋を持っている彼は、すべての荷物を入れて一人で行商をしているのだとか。しかし今回慌てて辺境伯領へと向かったからか、持っていた魔除けの効果が切れてしまったのだ。しかも、群れに見つかってしまうという最悪な自体。死を覚悟したという。


 魔除けも見せてもらったが、キャンプで使うようなランタンにそっくりだった。唯一違うところは、中が光らないところか。光の部分に魔石が嵌め込まれており、ここに魔物避けの魔術が埋め込まれているのだとか。

 これに魔力を込める必要があるのだが、魔力が少ないと効果が小さくなってしまう。行商の男性は魔力量が少ないため、魔力を込めることができずに途方に暮れていたようだ。

 だから、無意識に声を掛けていた。

 

「あの……私が魔力を込めましょうか?」


 その言葉に驚いたのか、彼は目をぱちくりとさせる。最初に私を見て……そして手に持っていた杖を見る。そして言葉を呑み込めたのか、彼の顔には満面の笑みが浮かんだ。


「本当にいいのですかぁ〜! ありがとうございます〜」

 

 両手を握られた私は、いきなりのことに狼狽える。そんな心境を読み取ってくれたのか、ユウくんが彼と私の間に入ってくれた。


「魔力を込める、込めないは置いておいて……この場から離れなくてはならない。一旦色々おいておいてくれ」

「ありがとうございます〜!」

 

 男性はユウくんの話を聞いて、すぐに私の手を離す。そしてこう告げた。


「もしよろしければ、もう少し先に行くとひらけた場所がありますので、そちらにご案内しますねぇ〜」


 その男性の言葉に、私たちは頷いた。

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