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魔法少女おばあちゃん 〜78歳のおばあちゃん、16歳の侯爵令嬢に転生?!〜  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第五章 魔境の森

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65、あ、それじゃあ……え、その名前は却下ですって?

 食事を終えたあと、全員でかまどを囲みながら話をする。最初は今日の戦闘の話をしていたけれど、途中から男の子の話へと移っていった。

 私は思い切って男の子に訊ねてみる。


「ねえ、あなたは名前を覚えていなさそうだったけど……なんで洞窟に倒れていたか覚えてる?」


 彼は少しだけ考える仕草を見せたあと、首を左右に振った。その様子を見ていたユウくんがポツリと呟く。


「なるほど、記憶喪失というやつか」

「記憶喪失……何かの原因で以前の記憶がなくなってしまうという……?」

 

 コニーくんが眉尻を下げてユウくんへと聞き直す。ユウくんは彼の言葉に首を縦に振る。そんな二人の会話を聞いていたマチルダちゃんが、真剣な表情で言葉を紡いでいく。


「ですが、困りましたね……名前がなければ、彼を呼ぶのも不便ですし……この際どうでしょう? 私たちが彼の呼び名を決めてしまうのは。もちろん、許可を取ってからですが」


 私はマチルダちゃんの提案に同意した。

 確かにずっと「あなた」って呼ぶわけにもいかないわよね。そう思っていたのは、私だけではなかったらしい。ユウくんとコニーくんも手を上げて同意をしていた。


「ということで、仮の名前をつけたいと思うのだけれど……いいかしら?」


 男の子は小首をかしげながら空を見上げていたけれど、しばらくして同意の仕草をとった。それを見た三人は、どんな名前にするかを話し合う。

 だから私は真っ先に、考えていた名前を皆に告げた。


「はい! シロは――」

「却下」


 間髪入れずにユウくんから否定されてしまう。え、シロちゃん可愛いと思うのに。

 そう思った私はまずマチルダちゃんを見る。


「お嬢様、自分で名乗るならまだしも、流石にいかがなものかと思います……」


 気まずそうな表情を浮かべるマチルダちゃん。そしてコニーくんにも意見を聞こうと思った私は、彼の方へ顔を向けたのだが……。

 コニーくんは既に顔を逸らしていた。あれぇ、と思いながらユウくんを見ると、彼は盛大に息を吐いていた。


「どうせクリスのことだ。彼が全身白いから、シロなんだろう?」

「そう! 分かりやすいかなと思って!」

「安直すぎるだろ……」


 最後のユウくんの言葉に二人とも頷いている。これでは私の案は採用されないだろう。私は口を尖らせて、ユウくんに言った。

 

「じゃあ、ユウくんは候補があるの?」


 少しの間があったけれど、どうやらユウくんも考えていた案があったらしい。


「白は前世の言葉でwhite(ホワイト)というだろう? それを取って、ワトが良いんじゃないかと思うんだが」


 ワトくんかぁ、確かに呼びやすくていい名前だと思う。

 

「ちなみにワイトくんでも可愛いと思うけど……」

「ワイトは前世でアンデットって意味があるからな。流石に人にそれを付けるのはどうかと思ったんだよ」


 その言葉に私は納得する。

 確かに……彼は肌も白く髪も白いけど、れっきとした人だものね。不死者の名前を付けるのは縁起が悪そう。

 

「それでしたらワトくんが一番良いかもしれませんね」

「僕もワトくんでいいと思います!」


 二人の言葉もあり、満場一致で彼のことをワトくんと呼ぶことになったのだった。

 

「あなたのことを、私たちは『ワト』と呼ぶね?」


 皆で考えた名前を男の子に告げると、最初は当惑していた彼だったが、すぐに頷いた。「ワト、ワト……」と呟いていたので、きっと受け入れてくれたに違いない。

 個人的には私が考えた名前も好きだったのだけれど、あれだけ反対されてしまったから仕方ないわね。そういえば、娘息子の名前を付ける時もこんなだった気がするような……気のせいね。


 そんな昔のことを思い出していた私に声を掛けてきたのは、ユウくんだった。


「名前の件は一旦ここで置いておく。それよりもこのあと、どうするかだ」


 普段よりも低いユウくんの声に、空気が引き締まった気がする。


「俺らはこのまま魔族領に向かう。ワトをどうするかだ」

「見た目はどちらかと言えば魔族の方とそっくりですねぇ」


 全員が一斉にワトくんを見たからか、彼はみんなの顔を不思議そうに覗き込んでいた。肌の色は白いけれど、耳は魔族特有の尖りがある。

 もしかしたらワトくんはラーネと同じなのかもしれない。


「魔族領の方の可能性が高いので、一緒に連れていくのが一番だと思います」

「コニーくんの案が一番かと。万が一の時は、彼の護衛をラーネにお願いしたらいかがでしょう?」


 それはいいかもしれない、と思う。

 ラーネは毎日マチルダちゃんと訓練しているためか、今や初めて会った頃とは全くと言っていいほど違っていた。逞しくなっているのだ。

 そして蜘蛛の魔物だからか、気配を消すのが特にうまい。マチルダちゃんがラーネの隠密の凄さに歯軋りしていたくらいに成長していた。

 

 普段からワトくんの近くにいてもらえば問題なさそうだ。

 ユウくんも、元々その案で行く予定だったのだろう。


「まあ、それが一番だろうな。ラーネ、魔境の森の間はワトの周囲の見張りの強化を頼む」

 

 ラーネは今回も敬礼のポーズを取る。

 そして一瞬のうちに目の前から消えていく。音もなく、まばたきの間にいなくなったので、本当に消えたように見えた。


「はぁ、いつ見ても惚れ惚れしますねぇ……私もあれくらいになりたいものです」

「お前はどこを目指しているんだ……」


 呆れた声のユウくん。一方で私は、マチルダちゃんがラーネのような隠密になったところを想像して、格好いいなぁと思った。


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