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魔法少女おばあちゃん 〜78歳のおばあちゃん、16歳の侯爵令嬢に転生?!〜  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第五章 魔境の森

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60、白蜘蛛は仲間になりたそうに、こちらを見ている

 翌日。

 片付けを終えた私達は、引き続き魔族領に向けて進んでいく。道なき道を進んでいくと、私の探知に複数の動体を検知した。

 この動きは人ではなく、魔物だろう。けれども、どうも動きがおかしい。

 私の動きが不審だったのか、ユウくんがこちらを向いた。


「どうした? 何かあったか?」

「えっと、魔物が探知に引っかかったのだけれど……動きが変なの。何か小さいものを追い回しているみたいで……」


 私の言葉にユウくんは首をひねる。一方で、その言葉を聞いたコニーくんは、「もしかして」と呟いた。


「魔物が魔物を追い回しているのかもしれません。魔物の中には、他の魔物の幼体を食べて成長するモノもいるそうなので」


 ああ、肉食動物と草食動物がいるように、魔物も肉食のモノがいるのね、と納得した。それじゃあ、これは狩りをしているのかもしれないわ。

 動きが読めないので、遭遇しないよう静かにやり過ごす予定だったのだが、幼体の魔物は完全にこちらへと向かっていた。どうやら戦闘は間逃れないようだ、と他の仲間にも伝える。

 草をかき分ける音が段々と近づいており、私達は魔物の姿を確認するために立ち上がった。すると遠くから、何かニョロニョロとしたものが生えている魔物がやってくる。


「あれは……クロムカディアですね!」


 コニーくんが皆に告げる。


「幾つもあるヒモみたいなものは、足です! クロムカディアは頭の角と尻尾の先に毒があると言われていますが、胴体が柔らかいので、そこを狙うと良いです!」


 近づいてきたのでよく見れば、日本にいるムカデが人よりも大きくなったって感じかしら。毒があるのであれば、遠距離を得意とする私が倒した方が良さそうね。


「私が倒すわ!」

「任せた!」

「お嬢様、お願いします」


 さて、今回は周囲に木が沢山あるもの。葉っぱを使用して倒しましょう! この呪文も使ってみたかったのよね!

 私は杖を前に掲げ、魔力を貯める。そして――

 

「シェルブ=ラズール(草刃の奔流)」


 周囲の葉が自動で動き、私の杖の宝石の周りを囲む。そして先程まで揺ら揺らと動いていた葉達は、私の魔力に触れるとまるで金属板になったかのように鋭くなる。

 それを見届け、私は杖先にある宝石を大きいムカデへと向けた。後ろで「クロムカディアだ」とユウくんが言っているけれど、大きいムカデが分かりやすいし、いいじゃない。


 葉は弓から放たれた矢の如く、真っ直ぐムカデに飛んでいく。そしてムカデの動体を切り裂いていった。ムカデは青い血を吹き出しながら暴れ、最終的には最後の一枚の葉が脳天を貫通したことで、ゆっくりと倒れていく。

 バタン、と大きな音を立てて倒れた大きいムカデ。探知魔法をかけても倒れたムカデの生体反応はなかったので、討伐に成功したのだろう。


 私達はムカデに近づく。すると、ムカデの横でブルブル震えているらしい白い蜘蛛がいることに気がついた。どうやら、大きいムカデはこの白蜘蛛を餌にしようと追いかけていたようだ。

 白蜘蛛に気づいたユウくんとマチルダちゃん。二人は剣とクナイを構えたけれど……私が止めた。


「ユウくん、マチルダちゃん。武器を仕舞って」

「クリス、幼体とはいえこいつは魔物だ。倒した方が良いと思うが……」

「この子は大丈夫だと思う」


 探知魔法の時にも気がついていた。この子の魔力は恐怖で彩られていたことに。

 最近よく使用しているからだろうか。なんとなくではあるけれど、魔力から感情を読み取ることができるようになった気がする。


 ブルブルと震える白蜘蛛ちゃん。私が座って彼女の様子を見ていると、ユウくんは私を信じてくれたのか剣を納めてくれる。マチルダちゃんは念の為に構えているようだけれど、先程のような殺気はない。

 私は白蜘蛛ちゃんが聞き取れるか分からないけれど、優しく声をかけた。

 

「こんにちは。大丈夫だった?」


 優しくにこりと微笑めば、縮こまって顔を隠していた白蜘蛛ちゃんが恐る恐る顔を上げる。そしてゆっくりと私の元へと近づいてきた。


「君一人?」


 そう訊ねると、白蜘蛛ちゃんは左右に身体を震わせる。なんとなくではあるが、これは肯定の合図のように見えた。


「そう、はぐれちゃったの?」


 白蜘蛛ちゃんは先程動いていたとは思わないくらい、微動だにせず固まっていた。どうやら逸れたわけではないらしい。

 すると、後ろで私達を見守ってくれていたコニーくんがおずおずと言葉を紡いだ。


「もしかしたら……この白蜘蛛はダークウィーバーという種の突然変異かもしれません。ダークウィーバーは強い子どもだけを育てると言われています。もしかしたら突然変異したこの子を親が子どもだと認識しておらず、追い出された可能性もありますね……」

「ダークウィーバーには毒はあるのか?」

「いえ、ないと思います」


 この大きさだと、卵が羽化したばかりの幼体だと言われた。コニーくんの話によれば、白蜘蛛ちゃんは追い出されたという事実を理解していないのかもしれない。

 手にオズオズと乗ってきた白蜘蛛ちゃんと、私の目が合った。すると、彼女は嬉しそうに私の手に顔をすりすりと擦りつける。あまりの可愛さに私は、白蜘蛛ちゃんを手放したくないと思った。

 だから私は彼女を手に乗せたまま、みんなに問う。


「ねぇ、白蜘蛛ちゃんも連れていっていい?」


 一瞬静寂がその場を包んだけれど、すぐにユウくんが頭を掻きむしる。


「まあ、いいんじゃないか?」

「え、いいんですか?!」


 コニーくんが驚いたようにユウくんを見る。マチルダちゃんも同じく口をあんぐりと開けていた。どうやら二人はユウくんが「ダメだ」と言うと思っていたようだ。

 彼は肩をすくめる。

 

「いや、この目をしたミヤ……クリスを説得するのは無理だって知ってるからな。毒があるなら考え直すように言うけど……クリスが世話をするなら問題ないだろ。ただし、俺らを襲ったら倒すけどな」


 呆然としていた二人も、ユウくんの言葉に一理あると思ったらしい。それならば、と了承してくれた。私は皆にお礼を告げた後、白蜘蛛ちゃんに話しかけた。


「白蜘蛛ちゃん、皆も良いって言ってくれているから、一緒に行きましょう!」

「ただ、人間を襲ったら倒すからな?」


 私の言葉に飛び跳ねた後、ユウくんの言葉で左右に小刻みに震える。どうやら、こちらの言葉もきちんと理解できているようだ。


「まあ、これなら大丈夫そうですね」

「言葉を理解するダークウィーバーなんているんですね……」


 マチルダちゃんは手にしていたクナイをしまう。コニーくんは賢い白蜘蛛ちゃんに目を丸くする。私達は白蜘蛛という新たな仲間と共に、先へ進んでいった。

 


 

 しばらくして。

 

「さて、白蜘蛛ちゃんだと長いから、名前をつけましょう? どんな名前がいいかしら?」


 私は新たな仲間である白蜘蛛ちゃんに名前をつけることにした。


「そうだなぁ、白いからシロ太?」

「ちょっと待て! 犬の名前にしか聞こえないんだが……しかもそんな会社や苗字もあるだろ?」


 ユウくんに止められる。えー、シロ太も可愛いと思うのに。


「そもそもお嬢様。この白蜘蛛はメスですよね? 響き的に名前がオスのように聞こえるのですが……」

「……それもそうね……」


 マチルダちゃんの言う通りだった。困り果てた私は、結局ユウくんに頼り……日本のファンタジーでよく出る、蜘蛛の魔物であるアラクネ。その魔物から取ってラーネと名付けたのだった。


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