50、ハルちゃん……?
設置型魔道具に防衛のための守りの壁を張る。
ユウくんが強度の確認のため、一度斬りつけてみたけれど、全くヒビが入らなかったので結構な強度のようだ。すごいのねぇ……と呟いていたら
「この設置型魔道具は 魔力量によって強度が変わるようです。ですから、クリスさんの魔力量が素晴らしかったという事だと思います」
満面の笑みで言われ、私は目元に涙を滲ませながら感謝を告げたわ。自分の力が役に立ったと実感できたからかしら、少し心も軽くなったの。
あの魔道具、てっきり充電池みたいなモノだと思っていたから、満杯になるまで魔力を入れ込んだのよね。まさか入れる量に対して強度が変わるとは思わなかったわ。
……ひとつだけ気になるのは、そんな魔道具を作る先代賢者様って何者だったのかしら? って事だけれど、今はそれどころじゃないわね。
私たちが魔道具を設置し終えて屋敷に向かうと、辺境伯様は騎士団長と話をしていた。そして自身も自分の体の長さほどもある武器を持っている。
「さすが、『斬山の辺境伯様』でございますね。ご自身も戦闘に出られるのでしょう」
マチルダちゃんが花開くような笑みで言っている。こんな笑みは初めてじゃないかな? あれ、意外とマチルダちゃんって戦闘きょ――。
「お嬢様、いかがいたしました?」
圧のある笑みで顔を覗かれて、私は思わず「なんでもないわ」と答えた。
……危ない。“戦闘狂”なんて口が裂けても言ってはいけないタイプの人だわ、きっと。
そんな事を考えていると、向こうから辺境伯様がやってくる。
そして私たちにもスタンピート制圧の協力の依頼が来たため二つ返事で頷き、見張り塔の近くで辺境伯様と戦略を練ることにした。
話し合いが終わり、私たちは魔境の森と接している城壁の上で様子を見ていた。
私の任務は、『魔物の数を減らす』『空を飛ぶ魔物の殲滅』の二点である。味方に被弾しないよう、どのような魔法を使おうか……ユウくんと話していると、久々にハルちゃんと繋がったような気がした。
「どうした?」
『やっほー! ミヤちゃん! 今見たらスタンピートが起きてたね! 大丈夫そう?』
ユウくんにハルちゃんと繋がったと告げれば、ユウくん無言で頷いた。どうやら気を遣ってくれるているらしい。
「今のところ、準備はしているから大丈夫よ。先代賢者様の魔道具も利用させてもらっているし」
そう話して、魔道具へと視線を送れば、ハルちゃんが『あー! 懐かしいー!』と声を上げた。……ちょっと待って、懐かしい?
「懐かしいってどういう事?」
『あ……えーと、うん! 先代賢者の様子も私は見ていたから、懐かしいなーと思って』
ああ、そっか。この世界を管理していたのはハルちゃんだものね。世界の様子を見ていてもおかしくないわ。
『やっばい、バレなくて良かった……』
「? ハルちゃんどうしたの?」
『ううん、なんでもないよ! それより、大規模なスタンピートが発生してるね。規模は数千、空を飛ぶ魔物も相当いるよ……今までに無い規模のスタンピーとかもしれない……』
ハルちゃんの言葉に私はユウくんを見る。何かを察知してくれたのか、紙を手元に出してくれた。私はその紙に、『規模は数千、飛行魔物も相当数』と記入する。
ユウくんも目をまたたかせたが、次の紙を用意してくれた。
『そうだねぇ、到達時間はあと五時間くらいってところかな? でも私が分かるのはここまで……ごめんね』
「ううん、教えてくれてありがとう!」
そう言った後、ハルちゃんとの接触が途切れる。私は紙に五時間、という言葉を付け加えてから、ユウくんと顔を見合わせた。
『やばいやばい。あの賢者が私だって事、バレるかと思った』




