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魔法少女おばあちゃん 〜78歳のおばあちゃん、16歳の侯爵令嬢に転生?!〜  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第四章 スタンピート

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48、辺境伯様との面会

 全ての事を終えた私たちは、街へと戻る道を歩き始めた。

 道中も魔物に遭遇する事はなく、私たちの歩く音以外聞こえない森が異様なほど不気味に見える。何事もなく街にたどり着く頃には、既に陽が落ち始めていた。私たちは慌てて、辺境伯様の元に向かう。


 辺境伯様も私たちのために時間を空けていてくれたらしく、ユウくんが執事さんに声をかけるとすぐに面会が整った。応接間で向かい合わせに座り、魔物がほぼいなかった事を話す。


「やはり……スタンピート、なのか……」


 辺境伯様が考え込む。最悪の事態について考えているのかもしれない。しばらくして考え事を終えたのか、辺境伯様は扉の側で佇んでいた執事さんに指示を出す。執事さんが頭を下げて部屋を出ていった後、私はユウくんに目配せをされた。


 事前の打ち合わせ通りである。私は魔法袋(マジック・バック)から、日本の占い師が使うような水晶玉を取り出し、魔力を込めた。

 薄い魔力の膜が私たちの周囲に現れる。辺境伯様はその魔力の揺らぎに気がついたのか、周辺をキョロキョロと見回した。


「これは……?」

「断りもなく使用して申し訳ございません。こちら、音を遮断する魔道具です」


 ユウくんが私の膝の上に置いてある水晶玉を指差して告げる。私は魔道具を壊さないよう、目の前のテーブルの上にゆっくりと置いた。

 辺境伯様は私が置いた遮音の魔道具をじっと見つめている。そして何かに思い至ったのか、ユウくんへと視線を向けた。

 

「もしかして、この魔道具は……」


 ユウくんは無言で頷く。


「小屋を見つけました。そこで入手した魔道具です」


 この言葉だけである程度理解したのだろう。辺境伯様は額に手を置いて少し唸る。


「眉唾だろう、と思っていたが……まさか本当に小屋があったとは……」

「辺境伯様にはお伝えした方が良いかと思いまして、このような形をとらせていただきました」

「いや、正解だ。これは、警戒するのも分かる。詳しく教えてもらえるだろうか?」


 ユウくんは首を縦に振った後、話し始めた。小屋の周辺は先代賢者様により魔法が幾重にもかけられていた事、それを私が解除して小屋を見つけた事。そしてその中で魔道具を大量に見つけた事……。


「最後にクリスティナが、先代賢者様の魔法を利用して小屋自体を隠しております。いかにせん、これが山のように置かれていたので……」


 魔法袋(マジック・バック)を見せながらユウくんが伝えると、辺境伯様は私たちが彼と似たような袋を持っている事に気がつき「成程」と言葉を漏らした。


「君たちが持っている魔法袋(マジック・バック)は小屋の中にあったものか」

「はい。本当は持って来れれば良かったのですが……魔法袋(マジック・バック)の中に魔法袋(マジック・バック)は入れられない仕様になっているようでして」


 ついでに袋ひとつで魔境の森が入るほどの容量だと伝えると、辺境伯様は額に手を当てたまま、ガクッと肩を落として頭を垂れている。


「……容量もそうだが……作りすぎだろう……」


 辺境伯様もユウくんと同じ感想のようだ。そして魔法袋(マジック・バック)とは別の袋を持っていたユウくんが、小屋から拝借した魔法袋(マジック・バック)を何個か辺境伯様に手渡した。


「こちら、辺境伯様に預けます。必要となる時が来るかもしれないので」

「……ああ、受け取ろう」


 先程コニーくんが言っていたけれど、この魔法袋(マジック・バック)で私の杖と同じ……いや、それ以上の値段が付くんですって。正直ただの袋にしか見えないけれど、IP曰く魔法袋(マジック・バック)の中には「時間停止能力」も付いていて、それが価値を跳ね上げているんですって。

 最初は意味が分からなかったけれど、ユウくんが例えで教えてくれたの。


「鍋で作ったシチューが出来立てのまま、腐らずに何年も保存できる。しかも大量に保存が可能って聞いたらどうだ?」

「便利ね」


 そう考えたら本当に魔法袋(マジック・バック)というのは凄い物なんだなと思えてきた。そんな事を思い出していると、ユウくんと辺境伯様の話し合いはまだまだ続いていた。


「設置型魔道具を――」

「いいのか?」


 どうやら先代賢者様の魔道具の幾つかを辺境伯様にお渡しする、という話になっていた。街への帰路の途中、皆で話し合ったのだ。その際に魔力を込めると使用できる設置型魔道具で、防御壁……バリアを張ってもらおうと話が出ていた。ユウくんはその事について話をしているらしい。

 ユウくんに目配せをされ、私は魔法袋(マジック・バック)から魔道具を取り出そうとした。その時――。


 ぞくりと、背筋をなぞる何かがよぎる。思わず私は魔境の森の方向へと視線を送っていた。


「クリスさん、どうしましたか?」


 首を傾げるコニーくん。


「えっと、なんと言えば良いのかしら……いい知れぬ何かを感じ取ったような気がして……気のせいかしら……」


 一瞬の事で先程の不穏さが嘘のようだ。困惑しながらそう答えると、ユウくんと辺境伯様は眉間に皺を寄せた。

 

「クリスティナ嬢、済まないがその設置型魔道具を今から設置し、発動する事はできるだろうか?」

「あ、はい。魔力を込めるだけですから、問題なく発動するかと……」


 急な話だなぁ、と首を傾げると、分かっていない私にユウくんが言う。


「クリス、もしかしたらスタンピートが発生しているかもしれない」

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