42、何もないところから……
カードキャプターウメちゃんの話だ。
確かウメちゃんたちが遊園地に行って、どこを歩いてもまた元に戻ってしまう話があったはず。
「もしかして、その認識阻害? 幻影? の魔法以外にも魔法が使われている可能性があると言う事かしら?」
「その可能性は高いかと」
「……こんな魔法を使えるのは……先代賢者様ではありませんか?!」
コニーくんの言葉に皆が頷く。
「その可能性は高いな。だが、ひとつ問題がある。幸い認識阻害系の魔法はマチルダが見抜いたが……もうひとつの魔法はどう破るんだ?」
ユウくんの言葉に、二人は我に返り悩み始めた。
そんな中、私はふと白い何かが根本に落ちていることに気がつく。私は木へと向かい、そこに落ちたモノを拾った。
そこには小さく何かのマークらしき物が描かれている。
「それは魔法陣か?」
「……魔法陣……」
私の持っている紙を見てユウくんが話す。魔法陣と言えば……。
私は周囲を見回す。そして先ほどの違和感が強くなっているような気がした。
「もしかして……!」
私は一歩前に出て、目を瞑る。
その方がなんとなく、感じ取る事ができるように思えたからだ。
私の予想通り、ある箇所に魔力が溜まっている。
私は杖を持ち直す。後ろでユウくん達が何か声を掛けているけれど、今はそれどころじゃないの。
この感覚が無くならないうちに……。
私は体を魔力が強い方へと向ける。すでにユウくん達は、私が何かをしようとしている事に気がついたようで、口を閉じているようだ。
そして魔力が溜まっている場所に杖の先を当てる。
「在るべき姿に戻れ! 封印」
目の前の魔力が離散していく感覚。後ろでは誰かがコクンと喉を鳴らしている音がする。
目を開けると、扉の前に魔法陣の描かれた紙が貼り付けてあった。
その紙は役目を果たしたと言わんばかりに、ハラハラと地面に落ちていく。
「まさか、こんなところに小屋があるとは思いませんでした……」
「先代賢者様は、素晴らしい魔法をお持ちだったのですね……」
マチルダちゃんとコニーくんもあんぐりと口を開けている。
それはそうよね。今まで無かった小屋が目の前に現れたんだもの。もちろん、私も驚いたわ。
私たちが呆然としている間、ユウくんは小屋の周りをぐるりと回る。意外と小さいのか、すぐにユウくんは戻ってきた。
「周囲には何も無さそうだ……入ってみるか?」
私たちはユウくんの言葉に頷く。
ドアに一番近かった私が、ノブに手を伸ばそうとした時。
「念の為にクリス、障壁……以前使っていた護りの嵐みたいなバリアを張った方がいいかもしれない。何が起こるか分からないからな」
「分かったわ」
そうか、私自身にバリアみたいなものを張れば、敵の攻撃から身を守れるのね!
ユウくんの話は勉強になるわ。本当にユウくんが勇者で良かったと思う。
魔法を掛けてから私はドアノブを握る。
丸いドアノブは握りやすく、冷たい。あまり力を入れる事なく、ドアノブを捻る事ができた。鍵も掛かっていないらしい。私はゆっくりと扉を押した。