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33、虎が……虎がぁ……?!

 コニーくんの助言を受けて、私も彼と一緒に二人の動きを見ることにしたの。

 すると、なんとなくだけど……使えたら良い魔法が見えてきたような気がするわ。コニーくんはどちらかと言えば「味方の強化」に特化しているの! 怪我を回復する魔法だったり、以前も使っていた他人を強化する魔法をかけたりするのが得意なんですって。


 じゃあ、私は何ができるのかしら? って思ったの。

 

 まず考えたのが、攻撃魔法。

 今は多くても十匹程度の魔物だけど……三十、四十――と出てきたら?


 複数体を一度に倒せる魔法があると良いわね、と思ったの。ユウくん曰く、それは範囲魔法というらしいわね。


 もうひとつは、敵を止める魔法。

 ユウくんやマチルダちゃん達の視覚外から現れた敵を縛り付けたり、動きを遅くできると良いわよね。

 そういう魔法って何ていうのかしら? と思ってユウくんに聞いたら、デバフ……? 魔法というらしいの。相手の能力やステータスを下げる魔法や効果のことを指すんだって。「敵の動きが鈍くなる魔法」や「魔力を奪う魔法」なんかがそうらしいわ。


 ここまで考えて、ハッと思ったの。

 正直言うと、攻撃魔法なら思い出せるんだけど……デバ……フ……? 魔法というものが頭の中に思い浮かばなくてね。


 そうこう考えていたうちに、陽が傾き始めて、辺りが少しずつ暗くなっていく。

 いつの間にか夕方になっていたのね。


「ここでテントを張ろう」


 ユウくんの指示で、木々が生えていない広場のような場所にテントを建てる事にしたわ。ユウくんとコニーくんはテントの設営、私とマチルダちゃんは食事を担当する事になったの。


 ユウくんがコニーくんにテントの張り方を指導している間、私はマチルダちゃんと一緒に周囲の石と枝を拾って焚き火を作ったわ。私は火を維持するための枝を中心に、マチルダちゃんは手首ほどのある枝を三本組み立てて、鍋掛けも作っていたの。

 マチルダちゃん、なんでもできて凄いわよね……!


 そこからは私の出番!


 私、思い出したの。

 賢者様の記録で、「火の矢」が描かれていたでしょう? あれは確か、赤がカラーの(あかり)ちゃんの魔法よね。


 青がカラーの澪ちゃんは、水を出せるのよ!


「水の牙!」


 私の手から、虎が牙を剥いている姿をかたどった水が現れ、それが鍋へと入っていく。

 うふふ、成功したわ! と満足げに胸を張っていた私。


「なんというか、すごい格好良い魔法のはずなのに……よりによって、入っていくところが鍋って……」


 ユウくんは頭を抱えていた。


 

「虎が……グツグツしてますね……!」

「コニー、言い方ぁ……」

 

 コニーくんとユウくんは鍋がグラグラと揺れているのをじっと眺めている。

 ユウくんは一人で「いや、虎って……食材じゃないし……。しかもあれ、攻撃魔法だろ……? その行き先が鍋って――」とブツブツ呟いていた。なんか、納得していないようだけど……便利なら良いじゃない!


 私は別の鍋にもう一度水を入れた後、その水で野菜を洗って一口大に切っていく。切った野菜は勿論、どんどん鍋に入れていくの。

 

 ここでもマチルダちゃんは完璧なメイド……と思いきや――。


「申し訳ございません、私、料理だけは……」


 試しに、にんじん――ここではキャロットというのだけれど、その皮を剥かせてみたのだけれど……食べるところが無くなったの。申し訳なさそうな表情でこちらを見ているマチルダちゃんを見て、「人は見かけによらないのね」と苦笑したわ。

 野菜を洗うのと、火加減はマチルダちゃんにお願いして、私は野菜を切る係を担当したの。


 クリスちゃんの体では初めて食事を作ったから、少し心配していたんだけど――。


「おおおお、お嬢様が料理を……!」


 涙ながらに食べるマチルダちゃんを見て全てが吹っ飛んだわ。

 

「マチルダちゃん、これでも六十年くらいは前世で料理してきたんだから」

「確かに美味い」

「美味しいです……!」


 ふふふ、私も役立って良かったわ……! と、満足した気持ちで顔を上げると、空はすっかり闇に染まっていた。

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