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31、賢者様の記録は

 しばらくハルちゃんと話した後、私はコニーくんがいる図書室へと向かう。

 ハルちゃんは管理の仕事があるらしく、「またね〜」と軽快に去っていったように聞こえた。その後コニーくんの元へ向かうと、彼は既に一冊読み終えているようだ。彼は本に集中していて声をかけるのがためらわれたため、遠くで見守っていた司書さんに話しかける。


 すると、彼から一冊の本を手渡された。いくつかのページに付箋のようなものが貼り付けてある。


「コニー殿が『クリス様にもここを読んでほしい』と印をつけておられました。よろしければ、どうぞあちらのお席でご覧ください」


 案内された席で私も内容に目を通す。


 ふむふむ。

 前回の賢者様は魔境の森の中で暮らしていたようね。魔境の森の中に小屋があって、そこで研究に没頭していたと。あるきっかけで彼の存在を知った当時の辺境伯様は、彼の研究に興味を示して小屋まで同行させてもらい、発言を記録に残したようだけれど……。ただ記録係もそれを見た魔術師たちも賢者様の言っている意味が分からなかったらしい。

 そして亡くなる前に幾つかの研究結果を辺境伯に寄付したようね。司書さんが教えてくれたけど、以前私が読んだ書物の事みたい。確かあの本には魔法の基礎的な部分について書かれていたわね。

 けれども、それは一部でしかなく――未だに見つからない小屋に研究結果が眠っているとも言われている。


 これが前回の賢者様の話ね。未だに見つからない研究結果……ちょっと格好良いって思っちゃった。


 そう思ってペラペラと書物をめくると、挿絵が目に入る。どうやら後半は魔法について書かれているみたいね。賢者様も面白い魔法を考えるのね、と思いながら絵を見つつ、気になるものがあれば文章も読んでいたのだが……ふとあるページで手を止めた。


「あら、これって……?」


 描かれていたのは、火が矢のような形をとった魔法の挿絵だった。しかもひとつではなく、いくつもの火の矢が空を飛んでいる様子が描かれている。なんとなく見覚えのある光景に首を捻っていると、横に書かれていた文言が目に入る。


 「火の矢……?」


 その言葉で思い出す。そうだ、これは……魔法戦士スカイの技名じゃなかったかしら?

 書かれているのは、呪文と簡単な魔法の説明。いくつか読んでいくうちに、ふとある考えが浮かんだ。

 

「あの、すみません」


 司書さんに声をかけると、彼はにこやかに対応してくれる。


「この内容なんですけど、もっと詳細に書かれている記録ってあったりしますか?」

「ああ、これですね。残念ながら、これ以上詳細なものはないかと」

 

 詳細が分かれば、魔法のイメージももっとはっきりするし、発動の成功率も上がる――そう思っていたので、私は肩を落とした。そんな私を見たからだろうか……司書さんが「ですが……」と口ごもる。


「もしかしたら賢者様の小屋にたどり着く事ができれば……いえ、見つかるか分からないものですから……絶対とは言えませんが」


 そう言えば、この記録は賢者様の話をまとめたもの、と言っていたわ。つまり、小屋の中の研究結果を見たら、詳しい事が分かるかもしれないわね。


「ありがとうございます!」

「お役に立てず、申し訳ございません」


 司書さんは静かに目を伏せた。


「そんな事ありません! 教えてくださっただけで、十分です」


 もし時間があれば、前の賢者様の小屋も探してみましょう。私の魔法が強くなれば……これから私の力になるし。

 ――なんでそう思うかって? 勿論、勘よ!

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