30、魔法少女おばあちゃん、爆誕?
なんかどっと疲れた気がする。それは勿論、この杖の価値を聞いたからね……。
ユウくんはその事を察してくれたらしく、「少し休憩する」と辺境伯様に伝えてくれたらしい。私は応接間へと案内された後、ソファーに座って休ませてもらっていた。
そんな時、頭の中に聞きなれた声が響く。
『時間が空いたから来てみたら……ミヤちゃん、まさかの魔法少女に変身してた件。これは……「魔法少女おばあちゃん」爆誕?』
魔法少女おばあちゃん!
ハルちゃん、なんて、なんて素敵な響きなの……!それ、究極の存在って感じじゃない?
「ハルちゃん、素晴らしいネーミングありがとう!」
『えっ、気に入ったの……?』
ハルちゃんの声が、若干引いてる。
『ミヤちゃんのセンス、時々どころじゃなくて予測不能だねぇ……そう言えば、昔からセンスが壊滅的だったなぁ……あ、思い出した。捕まえた蝶に「ぴょん二号」って名付けてた……』
ああ、公園で捕まえたモンシロチョウの話ね……そう言えば、ユウくんに「せめて、ふわふわじゃね? しかも一号どこだよ」って突っ込まれた気がするわ。
可愛い名前だと思うんだけどなぁ……。
『……ま、それよりもさ。ミヤちゃんすごいねぇ。変身って、簡単じゃないんだよ?』
「え、そうなの?」
魔法少女=変身じゃないの?
首を傾げていると、ハルちゃんが苦笑しながら続けた。
『魔法で服を作る場合ね、服のデザインを想像する事も大事なんだけど、質感のイメージも大事なんだよね』
「質感……?」
『素材の感覚、縫い目、重さ、動き方……全部を具体的にイメージできないと、うまくいかないの』
成程、単にデザインだけを妄想するだけじゃダメって事なのね! じゃあ、なんで私は成功したのかしら?
『ミヤちゃんは最近までお孫さんの服とか、身の回りの物を裁縫で手作りしていたでしょ? あれが多分効いてるっぽい。布の感触とか裁縫の構造が頭に入っているんだろうね。なんとなくどう作れば良いか、分かるでしょ?』
「確かにそうね……」
昔、娘にねだられて作ったこともあったっけ。そこから魔法少女の服を見る時は、どうやって作れば良いか、考えちゃうのよね。
『後はその杖のお陰だね』
「これ?」
私は持っていた杖を掲げる。
『実はね、魔法には一度に使える魔力量に限界があるの。でもその魔石を使うことで、限界を超えて魔法を使えるようになるんだよ。その杖を使えば、その分の魔力も補えるみたいだね!』
「そうなんだ! 流石、アビゲイルさんの杖ね!」
アビゲイルさんが最高傑作、と言うわけね。
まあ……値段が……値段が……ね。
ただ一度魔法を使ったからだろうか、先程よりも手に馴染んでいるような気がする。
前世では魔法少女アニメをいっぱい見てきたから、まだまだ使いたい魔法は山ほどあるわ! この杖を使えば、どんな魔法でも使えそうだし、どんなピンチも乗り越えられそうね!