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27、おばあちゃん、変身する!

 私は決めポーズを取った後、手と足を確認する。

 思い浮かべた通り、肘上まである手袋と太ももまである黒いブーツ。ヒールで歩くのは無理なので、靴底はぺったんこにしておいたけど……なんとなく想像していた怪盗ポニー・テールにそっくりじゃない?


「うふふ、成功よ!」


 魔法少女、って言ったら『変身』よね!

 くるりとその場で回ると、ひるがえる桃色のスカート。触れてみると見た目はきらびやかなのに、手触りは日本で着ていた普段着に近い。肌になじむこの感じ……思ったより実用的かも?


 実は変身できるか一度試してみていたのだけれど、あの時はうんともすんとも言わなかったの。どういう仕組みかは知らないけれど、きっとこの杖のお陰ね!

 私は杖を大切に胸に抱き、スキップしながらアビゲイルさんの元へ行く。そして彼女の手をぎゅっと握りしめ、感謝の気持ちを伝えた。


「アビゲイルさん! 本当に素敵な杖を作っていただき、ありがとうございます! 杖のお陰で変身できました!」


 声が自然と弾む。

 子どもの頃、一度は誰でも魔法少女になりたいって夢を見るでしょう? まさか、その夢がこんな形で叶うなんて――!

 満面の笑みでお礼を伝えたけれど、一向にアビゲイルさんからの返事がない。どうしたのだろうか、と首を傾げると、隣からため息が聞こえた。


「……いや、まさか、本当に……変身するとは……」


 彼は頭を抱えている。

 

「あら、ユウくん? どうしたの?」


 私が尋ねれば、ユウくんはもう一度深く、深くため息をついた。あら、失礼しちゃう。ため息を吐かれるような事は何もしていないわよ?


「……いや、もう、なんていうか……クリスが、規格外すぎて脳がついていかねぇんだよ……」

「え、そんな事ないでしょう?」


 ね、コニーくん? と声をかけようとして、ふと目に入ったのは――頬をほんのり赤らめて、視線のやり場に困っている様子のコニーくん。そしてその隣では、鼻息荒く何かをメモしているマチルダちゃんの姿。

 「ん?」と目を瞬かせる私に、ユウくんが肩をすくめて苦笑した。


「この世界はそんな短いスカートを履かないんだって。だからコニーはどこを見て良いか分からないんだろうな」

「それにお嬢様、平民でもそのような短いスカートを履きませんよ?」

「えー、魔法少女って言ったらこんなイメージだったんだけどな……仕方ないわねぇ」


 そう言って私は右手をあげ、指を鳴らした。いい音が響いた、その瞬間——私の変身が解けて、元の姿へと戻ってしまった。元の姿に戻った私を見て、顔を背けていた辺境伯様も、呆然と私を見つめていたアビゲイルさんも正気を取り戻したみたい。


「……いやぁ、あたしゃ夢でも見ていたのかねぇ、辺境伯様」

「アビゲイル、私も同じものを見ていた。ならば夢ではあるまい」


 辺境伯様の言葉に、アビゲイルさん苦笑しながらうなずき、こちらへ顔を向けた。

 

「お前さん、一体どこであんな……けったいな服装を知ったんだい?」

 

 もしかしなくても、私、ちょっとやりすぎたかもしれない。んーっと……どうしましょう?

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