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24、秘密の地下室、なんて素敵な響き!

「私はクリスティナ、こちらはコニーくんです」

「ああ、よろしく。私はアビゲイルと言うよ。この店で杖を作っている。それでどんな杖がお望み?」


 アビゲイルさんは私に話しかける。まあ、コニーくんは杖を持っているし、どう見てもお客は私よね。うーん、見に来てみただけ、と言うのはアビゲイルさんに悪いかしら。少々言葉に詰まっていると、コニーくんが「えっ」と声を上げていた。


「……お名前、教えていただけるのですか?」

「え、どういう事?」


 ただ単にアビゲイルさんが名乗っただけよね? でもコニーくんの表情から察するに、それが重大な事のようなのだけれど……首を傾げている私にコニーくんは告げた。


「このお店、国内でとても有名な杖専門店なのですが、同時にこんな話も伝わっているのです。店主様が名前を名乗ったら、気に入られた証拠だ、と。それが本当かどうかは分からないのですが……」


 コニーくんがアビゲイルさんへと顔を向けると、彼女は頷いた。


「ああ、それは事実さ。ここにある杖は誰でも買えるんだよ。ただねぇ、私が気に入った者たちにしか見せない杖というものがあって……それはここには置いていないんだよ」


 つまり名前を教えてもらえた私たちは、秘蔵の杖を見せてもらえるという事らしい。けれど一つ疑問がある。


「コニーくんは分かるけれど、私は名前を教えてもらうのに値する人物だったのかしら?」


 彼みたいに杖の材料を見抜けないし、杖にも詳しくないのに。そう訊ねると、アビゲイルさんは目を丸くして笑い始めた。


「お嬢ちゃんは、この杖を見てどう思った?」

「そうねぇ、一本一本が丁寧に、大切に作られているわよね。まるで芸術作品みたいに綺麗」


 アビゲイルさんには言えないけれど、杖にしておくのが勿体無いと思うくらい美しいのよね。そう心の中で付け加えておく。彼女は私の言葉を聞いて、少し照れたように告げた。


「芸術作品なんて……嬉しい事を言ってくれるね。やっぱりお嬢ちゃんは私の見込んだ通りだ。二人とも、こっちについておいで」


 コニーくんと私はアビゲイルさんの後ろへとついていく。後からユウくんたちが来る事を伝えれば、彼女は弟子のパールちゃんに店番をお願いする事にしてくれたらしい。安心した私たちは店の奥へ続く廊下を歩いていった。

 

 

「ここさ」


 案内されたのは地下の一室。そこは上の店舗よりも少し広い部屋だった。手前には杖が整然と置かれている。奥に扉があり、そこから短刀などが置かれているのが見えるので、奥側はきっと工房なのだろう。

 杖は飾りのないシンプルなものから、持ち手の部分に装飾のある杖まで様々なものが置いてある。上に置かれていた杖よりも、装飾部分は繊細で大きい物が多かった。

 コニーくんは目を輝かせ、自分の杖と比較しながらお店の中を見て回っている。私はそんなコニーくんに付き添いながら、ひとつひとつ杖を見ていった。


 どれくらい時間がかかっただろうか。アビゲイルさんの厚意で私は杖に触れさせてもらったり、説明を受けたりする。けれども全てを見終わった時点で、しっくりくる物がなかったのだ。

 見ている最中に、コニーくんから杖の重要性を聞いたからというのもあるけれど、魔法と言ったらやっぱり杖じゃない? だから購入したいと思っていたのだが……それをアビゲイルさんに伝えると「そうかい、それは残念だね」と悲しそうな表情。

 もう一度見て回ろうと私が踵を返した時、ふと入り口付近に置かれている木箱が目に入った。大きい木箱の上に、小な木箱が置かれている。大きな木箱は上の売り場に飾るための杖だという。


「アビゲイルさん、あの小さい木箱にも杖が入っているのかしら?」

「ああ、あれも杖だよ。けどねぇ、あれは……」

 

 言葉を濁すアビゲイルだったが……見てもいいかという問いには、肯定してくれた。私は小さな木箱の蓋をそっと開ける。するとそこには……。


「まあ!」


 私は中に入っていた杖を見て、思わず声を上げた。

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