23、コニーくんの輝く瞳
私とコニーくんはそこから頑張った。
と言っても、読み込むのはコニーくんで、私は司書さんと本を運んだりしまったりしただけだ。手が空いていた時は、司書さんにお薦めしてもらって魔法の本、魔物の本を借りて読んだりもしていたが、横文字が多くて正直頭に入らなかったのよ……。
資料を夕方遅くまで読み込んでいた事もあり、私たちは辺境伯様のご厚意で食事と部屋までお借りしてしまったの。「申し訳ないです」と告げると、辺境伯様は最初目を点にしていたが、大笑いして言う。
「世界に厄災が降りかかるのを防いでくれる君たちに、協力できて光栄さ」
翌日も「今日で読み終える」とコニーくんが話していた事もあり、ユウくんとマチルダさんも含めた四人で資料を読んでいた。コニーくんが全ての資料を読み終えたのは、夕方に差し掛かる頃。ご厚意で食事をいただいていた時、辺境伯様が声をかけてきた。
「クリスティナ嬢は杖を持たないのかな?」
うーん、持たなくても魔法は使えるけれど……憧れではあるわよね。どう答えようか悩んでいると、困惑している雰囲気を察したのか、彼は一枚の紙を目の前に出してきた。
「良ければ、この杖専門店に行くと良い。欲しいのがあれば、私が支払っておく」
豪快に笑う辺境伯様に懐の大きさを感じた。余裕のある男性って素敵よね!
街にたどり着いて三日目。
ユウくんとマチルダちゃんは調整してもらっていた武器を取りに行くとの事で、最初は別行動。受け取ったら私たちが今から向かう杖専門店で合流してくれるようだ。
私とコニーくんは二人で地図を見ながら杖専門店を目指す。少々入り組んだ道の先にそれはあった。辺境伯様曰くこの国一の杖職人がいるらしく、王都からわざわざ買い付けにくる者もいるのだとか。
職人さんは魔物が落とす素材を使うらしく、この地に留まっているのだそう。
「こ……ここです」とコニーくんが告げた先には、古ぼけた家。看板がなければ、普通の一軒家と間違えてしまいそう。少し怖がっているコニーくんの代わりに、私は扉を優しく開ける。淡い光で照らされる杖たち。雰囲気としては大釜とローブを着た長鼻の魔女が薬を作っていそうな感じかしら。私は味があって好きだけど。
それよりも杖だ。
「……素晴らしい杖が多いですね……!」
コニーくんは目を輝かせて杖を見ている。コニーくん曰く、杖の材料は木だけでなく、魔物の骨を利用して作られるものもあるらしい。彼は「これは木で、これは……骨ですね!」と楽しそうに材料を当てていくが、正直私には見分けがつかなかった。
杖の形状は、そうね……以前遊園地だったところに新しくできたあの……何ちゃらっターって小説に出てくる杖みたい。持ち手の部分に模様が彫られているのだけれど、それがまた綺麗で、素敵。
コニーくんの話を聞きながら杖を見ていると、店の奥から「おや、お客さんかねぇ?」とローブを着た中年の女性が現れた。コニーくんはその女性を視界に入れるや否や、彼女の元へ走り寄っていく。
「こんな美しい杖、初めて見ました!」
そう告げて彼は、私に話していた事をローブの女性に伝えている。最初は驚いた表情をしていた彼女だったが、次第に孫を見るような目でコニーくんを見始める。分かるわ……その気持ち。私たちのコニーくん、可愛いわよねぇ。
ニッコニコで私も二人の様子を見ていたら、ふとローブの女性の視線が私へと向く。彼女は私に見られていた事を今気がついたらしく、少々照れたようだ。あらあら、あの方も可愛らしいわ。
私たち二人の視線を感じた女性は、「杖を探しにきたのかい?」と訊ねる。
「ええ! 辺境伯様にこちらのお店を教えていただきまして!」
「おや、辺境伯様の……もしや、噂の勇者一行かい? あらまぁ、こんな若い子達なのね」
……達? と首を傾げて「あ、そっか」と思い直した。私も身体は十六歳なのよねぇ……。気持ちは八十歳くらいなんだけど。