17、メイド? くの一? 私はメイド忍者マチルダです!
彼女はマチルダ。このメンバーの中では最年長の二十三歳だった。戦闘スタイルはスピードを生かして敵を翻弄したり、気配を消す事で敵を倒すのが得意だという。
マチルダと呼んでほしい、と言われたので、マチルダちゃんと呼ぶことにした。
ユウくんは「暗殺か……?」と呟いていたが、私は完全に「くの一」だわ! と喜んでいたのものだ。
「武器はこちらを使用しています」
そう言って見せてもらったのは、先程クリスちゃんのお兄さんに突きつけていたクナイらしきものだった。
取り出す時にマチルダちゃんはメイド服のスカートに手を入れたため、ユウくんはすぐに顔を逸らし、コニーくんはあわあわと狼狽える。この世界は足を見せるなんてハシタナイらしい……!
魔法少女のコスチューム、もしかして着られないかもしれない? まあ、それは置いておきましょう。
太ももあたりにベルトのような物がついており、そこに武器を設置してあるみたいだ。なんか、仕事ができるメイドさん、みたいな感じで素敵ね!
それよりも気になるのが、後もうひとつ……。
「これはクナイとメリケンサック、か……?」
ユウくんも私と同じ事を思っていたようだ。黒いものは完全にクナイにそっくりだし、メリケンサックは握りしめて殴るやつよね。
マチルダちゃんは不思議そうな顔でユウくんを見ている。
「クナイ……メリケン……? それは存じ上げませんが、こちらは下の部分を握りしめて、相手を殴り飛ばして使う武器……ナックルダスターと呼ばれています。こちらはダガー、という武器です」
「これは……ダガーなのか? 俺の知っているダガーは、ナイフに似たような形をしていた気がするのだが」
「ああ、これは私に合わせて作っていただいたものなので、便宜上ダガーと呼んではいますが、ダガーではありませんね」
許可を得て近くで見せてもらった。どう見てもクナイ。忍者のアニメで女の子が着ていたピンクの忍び装束も可愛らしいけれど、メイド服にクナイも格好いいわねぇ。
「かっこいいわぁ……戦うメイドさん、素敵ねぇ……!」
思わず心の声が出てしまった私。その言葉を聞いて、マチルダちゃんは目をぱちくりとさせた後、大笑いした。先程の言動と違って豪快な笑い方に少しびっくりしたけれど、きっとこっちが素なのだろうな、と私は微笑ましく思う。
マチルダちゃんは笑いすぎて目に涙を溜めている。溜まった涙を拭うと彼女は言葉を紡いだ。
「お嬢様、本当に変わられましたね。いや、中身は完全に違う人なんですものね」
「ええ。見た目は美少女、中身はおばあちゃんよ!」
「それ、どこの名探偵……! それに自分で美少女って言うか? 普通!」
胸を張って堂々と言い放った私にユウくんが突っ込んできたけれど……クリスちゃんの外見が美しいのは事実なのだから仕方ない。私は事実しか言っていないのよ!
後ろから、控えめに笑う声が聞こえた。見たらコニーくんが口を手で押さえて笑っているではないか!
「可愛いわねぇ」
「……本当ですね……」
思わず衝いて出た言葉に反応したのは、マチルダちゃんだった。私たちは顔を見合わせて笑い出す。
――きっとこのメンバーなら大丈夫ね!