皐月ちゃんとみーちゃん
皐月ちゃんは、現在もう少しで行われる受験の追い込み勉強をしています。
それはそれは、とても長い間ずっと勉強しているため、皐月ちゃんは体も心も共に疲れてしまいました。
「はぁ〜」
皐月ちゃんは、先程まで2時間も続けて勉強をしていたため、思わず深いため息をついてしまいます。
そして、もう少しで来てしまう受験日に不安を覚えてしまうのです。
そんな中で、ドアを叩く音が聞きました。
――トントントン
その音に気づいた皐月ちゃんは、そおっとドアをゆっくりと開けて、ドアを叩いた主を部屋に招き入れました。
「みーちゃん。今日も来てくれてありがとう!!」
入ってきたのは、愛猫であるみーちゃん。
みーちゃんは、とてもゆっくりとした足取りで皐月ちゃんのところにやって来ました。
「みーちゃん、今日もふわふわで気持ち良い〜」
みーちゃんは、皐月ちゃんが生まれた時から一緒に過ごしています。
そんな皐月ちゃんは、みーちゃんのふわふわとした毛を撫でるのが、昔から大好きでした。
いつもみーちゃんの毛を撫でると、それが1番の癒しになるのです。
「みーちゃん。今日は寒いし、サッちゃんと一緒にコタツに入ろうか」
「にゃ〜」
皐月ちゃんは、傍にある小さなコタツに電源をすぐに入れて、暫くして温かくなるとみーちゃんを誘って入るように促します。
みーちゃんは、また「にゃ〜」と応えて、ゆっくりと歩き出すのです。
そして、みーちゃんは下半身だけ体に入れてゆっくりとぬくぬくと温まります。
皐月ちゃんも一緒にぬくぬくと温まりました。
皐月ちゃんは、疲れた体や心、そして不安をゆっくり和らいで行くような感じがしました。
皐月ちゃんがみんなからも自分でもサッちゃんと呼んでいた頃のみーちゃんは、コタツがあるとすぐに入り長い間ずっと中で丸まってしまうため、皐月ちゃんはみーちゃんをコタツの外に出すのはとても大変でした。
しかし、今はそんな手間をかけることもないため、安心はしますが、少し寂しい気もするのです。
みーちゃんは、皐月ちゃんにそっと寄り添い、優しく「にゃ〜」と声を上げます。
昔のみーちゃんは、近づこうとしてもすぐに走り回るため、毛糸やボールで引き寄せることが多かったのですが、今は年が取ったせいか、毛糸やボールで遊ぶこともなくなり、その代わりか近づかなくても自然と寄り添ってくれるようになりました。
しかし、今はそんな手間をかけることもないため、すぐに接することが出来て嬉しいのですが、少し寂しい気もするのでした。
こうして皐月ちゃんとみーちゃんは暫くの間、隣でゆっくりとコタツの中でぬくぬくと体を温めていると、今度はみーちゃんが先にゆっくりとコタツから出て行きます。
皐月ちゃんが時計を見ると、もうすでに20分ほど休憩していることに気づきました。
そろそろ勉強を再開しなければならない時間がやって来たのです。
いつもなら、皐月ちゃんが勉強机へ、そしてみーちゃんは皐月ちゃんの部屋から出て行くのですが、今回ばかりは少し違いました。
みーちゃんは、部屋から出ることなく、皐月ちゃんの勉強机の隣まで移動したのです。
「みーちゃん、応援してくれるの?」
「にゃ〜」
いつもに増して威勢の良いみーちゃんの鳴き声に、皐月ちゃんは自然と笑みを浮かべました。
「みーちゃん、いつもありがとう。サッちゃん、みーちゃんのこと大好き!!」
皐月ちゃんは、大きな体のみーちゃんを抱き上げて、優しくギュと抱きしめました。
そして、皐月ちゃんはみーちゃんをゆっくりと下ろし、勉強を再開したのでした。