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災厄

メアリは自分が忌み子である理由に世界の災厄が関係していると言った。


「セナくんはまだ小さいから災厄についてほとんど知らないよね。」

「前に爺ちゃんからずっと昔に大戦があったのは聞いたことがあるけどそれとは違うの?」

「うん。大戦は今の長老が生まれていないぐらい前の話で種族間での大規模な戦争があったんだって

災厄は今から1000年くらい前に起きたとてつもなく凶悪な魔物の大群の襲撃の事を指すの。」


(1000年前なら爺ちゃんは経験してるはずだ。俺は生まれてからそんなに経っていないが

里で災厄って単語すら聞いたことが無い。)


「魔物の大群って…。結局どうなったの?」

「この世界の全種族が協力してなんとか世界滅亡は回避できたの。魔王軍や賢者達、人族の他、エルフや獣人族すべてが一斉に迎撃して辛うじてって感じだったそうなの。」

「そこまでの戦力があって辛うじてなんだ…。S適性が3人もいて苦戦する魔物って強すぎない?」


セナがそう言うとメアリは首を横に振り


「確かに今のS適正持ちは3人だけど災厄の当時は15人いたの。」


「じゅ、15人!!?」


セナは驚愕した。


(1000年前はそんなに多かったのか…。でもそれなら次に災厄が来たらマジで世界滅ぶんじゃね?)


適性Sが1人いるかいないかで戦力が桁違いに変わるのは事実だ。

先の峠作りで分かる通り、A適正でもかなりの魔法が使える。

S適正は本気を出せば1人で王都を壊滅させることは容易いとまで言われている程だ。


「ま、まさか12人は災厄で…?」

「ううん。中には人族もいたから寿命が原因の方もいるけど半分以上はこの災厄で命を落としたの。適正関係なくたくさんの人が亡くなった。だからこの出来事は災厄って呼ばれるようになったの。」


「そうだったんだ…。でもその災厄とメアリに何の関係があるの?」

「うん、次はそれについて話すね…。」


そう言ってメアリはより神妙な面持ちで話し始めた。


「私の祖父母は当時の賢者で災厄の時に最前線で戦ってたの。お爺ちゃんはその戦いで亡くなって

お婆ちゃんは災厄の魔物の一撃を受けて瀕死の重傷を負ったみたい。そしてその時には既にお婆ちゃんのお腹には私のお母さんがいたの。」



メアリの祖父母が2人ともS適正の保持者で災厄の時戦っていたのを聞きセナは驚く。

彼女の母を身籠っていることがわかったのは災厄の後であったらしい。



セナはメアリの話を真剣な顔で聞き続ける。


「お婆ちゃんは賢者だったから王都で出産を行うことになった。そして生まれてきた子供は、エルフ族なのに髪が黒く、赤い瞳を持っていた。私の見た目はお母さんと同じなの。」


メアリの母はエルフ族で初めての黒髪に赤い瞳であった為、当時の王都やエルフの里だけでなく世界的に大騒ぎになったらしい。メアリの祖母が賢者であったのも大きな理由だろう。


「闇属性しか適性が無いことも生まれてすぐに調べてわかったそうなの。今までにない事だからこの件は慎重に扱われたんだけどしばらくは特に大きな問題は無かったそうよ。」


(ん?だとしたらメアリが忌み子と呼ばれているのはもっと違う理由なのか?)


セナが疑問に思っていると、メアリは続きを話してくれた。


「お母さんは王都でお父さんと出会って結婚したの。お父さんは宮廷魔術師だったから、もともとお婆ちゃんも知ってる人ですぐに意気投合したみたい。それからエルフの里で私を産んだんだけどこの見た目と適正魔法はお母さんと同じだった。でも前例があるからそこまで騒ぎにもならなかったんだけど、ある日お父さんが里の近くで宮廷魔術師としての仕事があってそれが終わった後、私たち家族3人で王都に行くことになったの。…そこであの事件が起こった。」


メアリは顔をしかめ、語った。


「その日の移動中何故か魔物が多くてその退治でお父さんの魔力が尽きそうだったから途中で野営する事になったの。そしてその夜、盗賊が幻覚の魔法を破って襲ってきた。恐らく盗賊の中にも闇属性使いがいたんだと思う。私はまだセナくんよりも小さかったから何も出来なくて、お母さんの腕の中でひたすら泣くことしか出来なかった。お父さんも必死に戦ったけどついには魔力が尽きて…殺されたの。」


セナはいたたまれない気持ちになった。セナが先ほど遭遇したトラブルでもそうだが

いくら宮廷魔術師でも魔力が尽きてしまえば戦力はほぼ皆無と言ってもいい。


「そして盗賊は私とお母さんに向かってきた。もう終わりだと思ったとき、お母さんから見たこともないオーラが出てきたの。魔力でもない凄まじい力を感じたわ。私はそれを見て気を失って、目が覚めたら盗賊たちがみんな死んでいてあたり一帯が消し飛んでたの…。」

「魔力でもない力…?」


メアリは頷いて


「私が目覚めた時はまだお母さんは気を失っていたんだけど、すぐに王都の騎士団がやってきて私とお母さんを拘束したの…。」

「こ、拘束!?」

「わけもわからずに王城まで連れていかれたんだけど、その途中で騎士の人が話しているのを聞いたの。」



『まさか、また災厄が来るのか…?嘘だよな?』

『でもあの爆発を見た先代宰相が、ゼローグの再来だって……。』



「ゼローグ…?」

「災厄で襲来した最も凶悪で凶大な魔物に名付けられた名前よ。」


そしてメアリはセナを見つめて言った。










「凶帝ゼローグ。お婆ちゃんに瀕死の一撃を与え、お母さんと私に呪いをかけた元凶。私が忌み子と呼ばれる理由よ。」



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