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忌み子

セナはメアリに抱きかかえられながら彼女の家へと向かっていた。歩き始めてからそれなりに時間も経っている。それにセナが事故った場所からメアリは里の方とは真逆の方向へ向かっていた。彼女の家は一体どこにあるのだろうか。


セナが考えているとメアリは急に歩みを止めた。


「さあ、着いたよ。」

「はぇ?」


メアリがそう言った。え?着いたって、何もないのですが…。まさかメアリはその辺の野生動物のような生活をしているのか!?いやしかし、彼女の服装はとても上品なものだ。里の市場でも売っている前世の世界で言えば百貨店の服屋にありそうな服だ。野生に生きるアマゾネスのような雰囲気は全く感じない。


するとメアリは片手を前に出した。すると目の前の景色、いや空間がぐわんと歪んでいき、

気が付くとさっきまで何も無かった場所に木製の建築物が現れた。


「ど、どんな仕掛け??」

「幻覚の魔法を使ってこの家の周りの空間を見えなくしてたの。これにちょっとひと手間加えたから魔物や野生動物も寄ってこないんだよ。」

「す、すごい…。」


セナは驚愕した。このレベルの魔法が使えるってもしかしてメアリはかなりの高適正なのだろうか。


「じゃあ入ろうか。」

「お、お邪魔しま~す…。」


玄関から家に入る。中はそれなりに広く、とても綺麗だった。メアリがこまめに掃除をしているのだろう。


「今何か食べるもの準備するからちょっと座って待っててね。」

「うん、ありがとう。」


メアリはセナをソファに座らせると台所へ向かっていった。とても助かる、魔力切れの所為もあるだろうが、空腹でめまいが起きそうだった。それに食事をとることでも魔力は回復するのでありがたいことこの上ない。


台所からメアリが戻ってきた。おや?この香りは。


「カレーで大丈夫だったかな?今朝作ったの。」

「とんでもない、大好物です!」

「そう、よかった。」


出してくれた食事はカレーだった。カレーは前世でも大好物だったので大歓喜だ!

セナがとびきりの笑顔でカレーを食していると――


「喜んでもらえて嬉しい。私なんかの料理を食べてくれる人なんて今までいなかったから。」

「え?」


メアリは少し暗いトーンで言った。


(まただ。何故か彼女は自分の事を卑下するところがある。抱っこの時もそうだったし、今もそうだ。)


セナは思い切って聞いてみる事にした。



「ねぇ、メアリさんは何で自分の事をそんな風に悪く言うの?」

「え?だって…。」


メアリはさも当然とばかりに言った。





「私は忌み子だから。」





!?


忌み子って、よくフィクション作品で聞く望まれずに産まれた子とか呪われた背景の下に

産まれたとかそういうのなのか?



「セナくんも気づいてるでしょ?私はエルフ族なのに黒髪で目も血のように赤いのを。」

「確かに今までエルフの里で見たことないけど、それで何でそこまで酷いこと言われなきゃいけないの?」


(俺の前世の世界でもアルビノと呼ばれる病気で日本人でも真っ白な髪で目が赤い人はいる。それが原因でいじめなどもあるそうだが、まさかメアリは里で迫害を受けていたとかそういうことなのか?

忌み子の存在も俺は何も知らなかった。まだ子供ということもあるだろうがエルフの里には何か秘密がありそうだな。)


「違うのは見た目だけじゃないの。エルフ族はみんな闇以外の魔法を使えるでしょ?でも私はその反対で闇属性の魔法しか使えないの。」

「あ、じゃあさっきの魔法も闇属性だったんだ。」

「うん…。」


なるほど。メアリが今まで見たこともないような魔法を使ってたのは闇属性だったからか。


「でもそれでも忌み子と言われる理由は全然わからないよ。…そういえば身体は大丈夫なの?病気になりやすいとか何か呪いみたいなのにかかったりとかしてない?」

「セナくんは優しいんだね、ありがとう。それは大丈夫だよ、むしろ普通のエルフ族よりは身体能力

も高いみたいだから。」

「それなら安心だけど、尚更そんな扱いを受ける理由がわからないよ。忌み子なんて言い方酷すぎる…。」


そんなセナの言葉を聞いてメアリは少し微笑み、


「少し暗い話になっちゃうけど聞いてくれる…?」

「もちろん!」


どうやらメアリは話してくれるようだ。

(もしも里に問題があるなら長老の孫である俺にも何か出来る事があるかもしれないし、何よりケガした子供を放っておけないような優しい優しい心を持つ彼女が苦しむのを放っておけない。)



メアリは一度深呼吸をしてから語り始めた。




「それじゃあ話すね。私が忌み子と呼ばれる理由とそれに深く関わる世界の災厄について」


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