初乗りだ!
セナは両親と3人で祖父の家に行き、スーパーカーを山の倉庫に置かせて欲しいというお願いをした。
祖父の家は貴族の屋敷のようにバカでかいのである。祖父は長老なので同じ場所に臣下も複数住むため家が大きいのは当然なのだそうだ。
一通りの事情を話し、お願いをすると祖父は
「山に置くのは構わんよ。あそこも大戦が終わってからは全く使っていなかったからの。」
快く承諾してくれた。ちなみに祖父は長老とは言うが見た目はメッチャ若く見える。エルフは年をとっても外見はあまり変わらないのだ。
「ありがとうお爺ちゃん。」
「助かります、お義父さん。」
「なに、久しぶりにセナと会えて嬉しかったからの。婆さんもセナに会いたがっておったぞ、また遊びにおいで。」
「うん!」
祖母はどうしても外せない用事があり、今日はいないのだそうだ。
「じゃあねお父さん。悪いけど早速あの魔道具置かせてもらうわね。」
「うむ、またのセリーヌ。アーロン君、また今度お茶でもしよう。」
「はい、是非。」
「お爺ちゃんバイバーイ!」
子供らしく挨拶をした後、3人で山にスーパーカーを置きに行った。
かなり広い山なので試運転にはもってこいだ。
それからしばらくして
「今日は両親が長時間家を空けている。今こそスーパーカーに乗るには絶好の機会だ。」
そういってセナはスーパーカーのドアを開け、席に座る。何日ぶりだろうか、やはり座っているだけで幸せな気分になる。
「しかし、今日は座るだけじゃない。走らせるぞ!」
そういってブレーキに足…は届かないので違う方法でブレーキを踏む。
「これぞ風魔法の応用技よ!足が届かなくてもこれなら問題ないわ!!!!」
セナの足の動きに連動して見えない力がブレーキペダルを踏む。風魔法を用いて疑似的に運転を可能にしたのだ。風を身体のように動かし、遠くのものを掴んだり踏んだり蹴ったりも出来る。これも適正Aだからこそ成せる技である。
そしてブレーキを踏んだ(?)あとエンジンをかける。するとあの重厚で素敵なメロディが耳を幸せにする。
「ここは人がほぼいないけど一応あれも試そう。」
そう言うとエンジンをかけたままスーパーカーを降りる。外から聞くエンジンの音も最高だ。
だがセナが手をかざし、スーパーカーに魔法をかけるとその音がピタリと止んだ。
壊れたわけではない。このスーパーカーは無敵である。風魔法を使ってスーパーカーのエンジンの音を外に漏れないようにしたのだ。これもA適正のおかげである。
そして再びドアを開け中に入ると
「よし、成功だ!」
中に入った瞬間にまたエンジンの音が聞こえだした。
自分は音を楽しめて周りに迷惑をかけない、スーパーを超えたスーパーカーである。
「じゃあ走らせますか!!」
そしてアクセルを踏み(?)スーパーカーがけたたましい音(室内限定)と共に走り出す。
セナが願いに願った、スーパーカーの初乗りはようやく成功したのである。