7:00
…あれ?
なんか、味噌汁の匂いがする。
俺はいつもより甘い匂いがするベッドから体を起こし、匂いの元を辿るとマサキさんが新品の小さい鍋とフライパンでご飯を作っていた。
夏「おはよう。フライパン買ったんだ?」
俺は料理の幅が広がったマサキさんの今日の朝ご飯を見ると、小さい鍋には白米が炊かれていてフライパンには目玉焼き2つとウインナー4本を焼いてる途中だった。
マサキ「おはよう。そうそう。もう少しで20代後半になるし、独り身の1人暮らしがまともに料理が作れないなんて生活力なさすぎだからね。」
と、この間までのマサキさんが嘘みたいな発言をする。
夏「でもすごいね。鍋でご飯炊いちゃうんだ。」
マサキ「ご飯の炊き方だけ、ばばに教えてもらってたから。」
マサキさんはお婆さんのことを思い出したのか優しげに微笑み、ケトルが湧くと緑茶を作り出した。
マサキ「外は暑いけど、いいよね?」
夏「うん。あったかいお茶好きだよ。」
俺はマサキさんの朝ご飯の手伝いをしてありがたく朝ご飯を頂き、初めてマサキさんがコンロを使った手料理を食べる。
夏「マサキさん、料理上手いね!」
俺は綺麗な生半熟の卵黄をウインナーにつけながら、塩胡椒の加減が最高な朝ご飯に驚く。
マサキ「ありがとう。」
夏「でも、レトルトの味噌汁はちょっと濃いめなの好きなんだね。」
俺はご飯が3杯いけそうな味噌汁の味にも驚く。
マサキ「うん。この人工の味好きなの。」
マサキさんは自分で作った朝ご飯よりもその味噌汁が好きらしく、味噌汁を愛でながら朝ご飯を食べていた。
マサキ「…私、ちゃんと秘密言ってくるね。」
と、マサキさんはご飯を食べ終えた直後、ご飯をおかわりさせてもらった俺に意気込みを伝えてくれた。
夏「うん!…一くんはちゃんとマサキさんのこと好きだから大丈夫。」
マサキ「…そうかな。」
夏「そうだよ。そうじゃなかったらなんでマサキさんに会いにくるの?」
マサキ「友達だから…?」
夏「友達でもいろんな好きがあるけどね。」
俺はマサキさんが今日から始まる2日間の旅行で後悔をなるべく作らないように、背中を押すことにした。
マサキさんがしっかり一くんと顔を合わせて話せる場はこの旅行の後にあるか分からないから、会えなくなって俺みたいに気持ちを引きずらせないためにも頑張ってもらおう。
夏「マサキさんと一くん2人で3つの秘密交換してみたら?その方が一くんのことも知れていいと思う。」
マサキ「一、あんまり秘密なさそうだけどな…。」
俺にとって色々ありすぎて秘密いっぱいに感じるけど、マサキさんには違うんだろう。
夏「意外にあるかも。1回交換してみればいいよ。」
マサキ「うん。1回してみる。」
そう言ってくれたマサキさんはやっぱり好きな人のことを考えてるからか、どこか楽しげで愛おしそうに笑顔を見せてくれる。
マサキさんが思う関係と、一くんが思う関係を伝え合って、お互いどんな形でも一緒に入れる未来を作ってきてほしいなと願いながら俺は瑠愛くんの家に行き、夏休みが終わる前に浴衣を作ってくれた天ちゃんにお礼をするため、昼ご飯を一緒に食べに行くことにした。
→ 好きが溢れていたの